プロ野球は「天国みたいなところ」 工場のライン勤務も…澤柳亮太郎が明かす社会人時代

ソフトバンク・澤柳亮太郎【写真:竹村岳】
ソフトバンク・澤柳亮太郎【写真:竹村岳】

フルタイム勤務と野球を両立…変わらない思い「野球が好き」

 ソフトバンクの2軍は16日、ウエスタン・リーグの中日戦(タマスタ筑後)に1-3で敗れた。この試合で公式戦初登板を果たしたのが、ドラフト5位ルーキーの澤柳亮太郎投手。8回からマウンドに上がり、2イニングを無失点に抑える好投を見せた。打者7人と対戦し、許したのは内野安打1本のみ。3日の初実戦から5試合連続で無失点となり、17日の西武とのオープン戦から1軍に合流している。

 ファーム首脳陣からの評価はうなぎのぼり。松山秀明2軍監督は「彼の場合はそんなに集中して見ていなくても抑えてくれるんじゃないかっていうところがあって」と絶大な信頼を寄せる。澤柳本人も「こうやって信頼をどんどん積み重ねて1軍に上がれるのかなと思うので、もうやることをやるだけなので」と、1軍昇格に向けて意気込んでいた。

「夢は大きい方がいいと思っている。目標に掲げているのは千賀投手。下から這い上がり、最終的にはメジャーを狙える選手になりたい」。ホークスとの仮契約を結んだ際には、このように話していた澤柳。プロの世界に飛び込んだことで感じるこれまでの野球人生との違いや変化とは? そして、その変化がどのようにして自身の投球に好影響をもたらしているのかを語ってくれた。

 明治学院東村山高、明治学院大、社会人野球のロキテクノ富山を経てホークスに入団。社会人時代は「工場のライン作業に入ったり、それをフルタイムで働いたりとかもありました。パソコンで作業したりとかもありますし、しっかり働いていた2年間だった」という。業務終了後の夕方から野球の練習を行う生活。午前で仕事を終えて、午後は野球の練習に励む企業もある中、フルタイムで勤務する時もあった。

「次の日の昼ご飯とかもその日のうちに作ってってやっていたら、寝るのは(午前)1時過ぎたりしました。そういう環境だったので、今はすごい楽ですし、自分は野球が好きっていうのは変わらないので、さらに打ち込めている状況なので、今はいいですね。もう天国みたいなところにいるような」

 社会人時代は午後10時頃まで練習して帰宅。それから洗濯と夕食、翌日の昼食の準備も自分で行う日々だった。野球だけに集中したい思いがあった澤柳にとって、今のホークスでの環境は、これまでに感じたことがないほどの充実を実感できる場所になっている。「若鷹寮」に入寮してまだ2か月半ほどしか経っていないが、その環境が早くも好影響をもたらしているという。

「みんな『大きくなった』って言ってくれるので、パワーアップしたかな、と思います。あとはピッチングスタイルを崩さずにやっていきたいなと思います」。プロのトレーニングと食事によって体重は5キロほど増えて93キロに。「社会人時代だったら147キロぐらいの感じで投げても、今は150キロ、151キロぐらい出ているので、パワー的には上がっているかなと思います」。周囲も感じる変化は、投球にも明らかな違いを見せるようになった。

「社会人時代は仕事とかあって、もうすごい疲れていたので……。野球に専念できているっていうのも一番大きいかなって。そういうところが、力が出ているところなのかなという感じです。間違いないです」。野球だけに没頭できる生活で球速もアップ。これまでのMAXだった151キロを、3キロも更新する154キロを記録した。

「元々そんなに目立つような……、六大学だったりとか、そういうところで投げていたわけではないですし、社会人野球も北信越っていう、社会人野球の中でもあまり見られないところで投げていたので、今、やっと見られる場面になってきて、メディアに出てきて、みんなが認めてくれているので、それは良かったなと思います」

 これまでの野球人生ではあまり注目されることはなかった。プロ野球選手になり、注目を集め始めたことに嬉しそうな表情を見せる。「あとはもう信じてやるだけです」。好投を続けて掴んだ1軍昇格の切符。ここから先の澤柳からも目が離せない。

(飯田航平 / Kohei Iida)