ドラ4村田賢一が2軍“開幕投手”に 新人に託した大役…寺原隼人コーチが語る抜擢のワケ

ソフトバンク・村田賢一【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・村田賢一【写真:藤浦一都】

開幕戦にも平常心「あまり気負うことなくいけるのかなとは思います」

 気づいてハッとした。ソフトバンクの村田賢一投手が、15日にタマスタ筑後で行われる中日とのウエスタン・リーグ開幕戦で“開幕投手”を務めることになった。昨秋ドラフトで4位指名を受けて明大から入団した制球力が持ち味の即戦力右腕がホークスとして今年最初の公式戦で先発のマウンドに上がることになった。

“開幕投手”は不意に知ることとなった。村田は寺原隼人2軍投手コーチから「次は15日だから。5イニングぐらい投げてもらうから」と次回の登板予定を告げられた。「最初は『そうか、15日か』って思ったんですけど、よくよく考えたら『開幕じゃね?』と思いました」。15日の中日戦はウエスタン・リーグの開幕戦。村田はハッとした。

 寺原2軍投手コーチは「キャンプから頑張って投げていたし、怪我なく投げていたので。大卒1年目で安定したピッチングを続けてきたからこういうふうに抜てきされたと思う。早く1軍のチャンスを掴めるように、まずは2軍で結果残して、しっかりローテーションを守ってというのが大事になってくると思います」と右腕を評価した。首脳陣から“開幕投手”といった伝え方はされなかったが、開幕戦であることは当然、村田も気付いた。

 毎年、1軍に先立って公式戦が開幕する2軍だが、特にこの時期は1軍選手の調整が最優先。そのため2軍の開幕戦とはいえ、1軍選手が出場することも少なくない。それでも2022年と昨年は当時2軍監督だった小久保裕紀監督が期待を込めて田上奏大投手を開幕投手に指名。今年はコーディネーターを中心とした話し合いの末に、ルーキーの村田に大役を任されることになったという。

「やっぱ期待もされていると思う。そこは本人がどう思っているか、わからないですけど、いい緊張感の中で投げられたらいいんじゃないですか」と、寺原2軍投手コーチは語る。松山秀明2軍監督はそこまで強くこだわりはないと言うが、チームとして彼に託す期待が大きいのは間違いないだろう。

 NPB球団を相手に投げるようになり、プロのレベルを肌で感じた。2日に行われたオリックス戦。7回に巡ってきたタマスタ筑後での初登板。「一発目の打者が元(謙太)選手だったんですけど、(相手にとって自身が)初見のピッチャーじゃないですか。なのに初球から普通にタイミングを取られたので(プロの打者は)『やっぱすげえな』って思いました。僕の真っ直ぐは結構、独特な球筋というか、横から見てもわかるくらいなので、多分1球くらい見てくるだろうなと思っていたら、普通に初球からいかれたんで、ちょっと違うなって思いました」。21歳という若い選手であってもこの対応。プロのレベルを実感した。

 一方で、手応えもある。「球速はどうしても速い選手はいっぱいいるので、やっぱその中でコントロール。特に低めに投げ続けるっていうことに関してちゃんとやっていけば、持ち味は出せるんじゃないかなと思っています」。生命線でもある精密なコントロールには自信を深めている。寺原隼人2軍投手コーチも「スピードが速くて、三振取るようなピッチャーではないけど、やっぱり彼の持ち味はコントロール。低めに丁寧に投げる、コースを丁寧に投げるっていうスタイルだと思うので、そこは徹底して継続してもらいたい。性格も素直だし、真面目に練習もしているし、それを周りも見ていると思いますよ」と評価している。

 プロ生活がスタートして2か月ほどが経った。「正直ここまで長かったなって。いつかここで投げなきゃと思ってやってきたので、まずは2軍のマウンドですけど、ようやくここまで来られたんだなっていうのはあります」としみじみと語る。プロ野球選手という夢を目指して奮闘してきたアマチュア時代を思い返し、今ここでプロのユニホームに袖を通して野球が出来ることに感謝の思いが募る。

「いつも通り調整というか、あまり気負うことなくいけるのかなとは思います。いつもと同じような感じでいきたいと思います。いずれ上に行くということを考えると、やっぱり1発目からちゃんと自分のパフォーマンスを出せるようにしなきゃっていうのはあるんで、そこに向けた準備をちゃんとやっていきたいです」と決意を込める。村田にとって初めてのシーズンが幕を開ける。即戦力ルーキーはプロ生活に弾みをつける開幕戦にしてみせる。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)