川村友斗のアピールに「悔しい気持ち」 親友・山本恵大が抱く“敬意と負けん気”

ソフトバンク・山本恵大【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・山本恵大【写真:上杉あずさ】

又吉にも認められたひたむきさ…野球に対して「スレてない

 親友の奮闘が大きな励みになっている。春季キャンプが終わり、オープン戦に臨んでいるホークス。開幕1軍を争うA組の野手メンバーには育成から仲田慶介外野手、川村友斗外野手、緒方理貢内野手が加わっている。悲願の支配下昇格をかけて、連日のアピール合戦を続けている。

 そんな育成選手たちを「すごくいい刺激になるというか、もちろん応援する気持ちもありますし、でも悔しいって気持ちもあるので、早く復帰してそこに肩並べてできるようにやっていきたいなと思ってます」と見ているのが、育成3年目の山本恵大外野手。仲田と川村と同じ2021年の育成ドラフトで指名され、大卒でプロ入りした同期で、特に川村とは公私とも仲が良い。

 山本は昨年9月に左膝を手術し、以降はリハビリを続け、ようやく実戦にも復帰した。ただ、自身がリハビリに励む中、川村と仲田はA組に抜擢。彼らの奮闘する姿を励みに、前向きに自らのトレーニングに取り組んできた。

 川村との関係について「1番、仲良いと自分は思ってるんですけど、あっちがどう思ってるか……(笑)まぁ、お互いにそんなこと言ってるみたいですね」と照れ笑いを浮かべる。キャンプ中も何度か連絡をとった。「あっちも朝、早出練習とかやっていたんで、迷惑にならない程度にちょっと連絡して『頑張ってる?』とか『元気?』とか連絡していましたね。基本、自分からなので、すごい一方通行感がありますけど(笑)」と、気にかけていた。

 もちろん、ただの“馴れ合い”ではない。山本は「仲の良い友達でもありますし、ポジションとかタイプとか似てる部分もあるんで、比べられることも多い良いライバル」と、刺激し合える存在だという。現状では、川村の方が支配下登録へ先を行くが、互いのことをよく知る関係だからこそ、山本も「バッティングはあんまり負けてないかなって思いますね。飛距離も、たぶん自分の方が飛ぶと思います」と負けん気を覗かせる。

 打撃だけであれば自負もあるが、それだけでは通用しないのもプロの世界。それが分かっているからこそ、山本は川村へのリスペクトも持つ。「怪我をしないこともそうですし、去年の春のオープン戦や、今も物怖じせずに1軍に溶け込んで野球をやっているんですごいなって思いますね。自分だったら、たぶんアガっちゃう。アイツも緊張していたと思うんですけど、でも結果を出すじゃないですか。その辺はすごいなって思います」と語る。

 長いリハビリ生活でも山本は常に前向きだった。

「あまり気持ちを落とさずやろうって思って、ずっとやってきました。あんまり考え込まず、このリハビリの中でいろいろパワーアップできるようにって心がけてやってきたので、下向くことはなかったですね。気持ち的にも強くなって、落ち込まなくなったし、イライラしなくなったし、余裕を持てるというか。そういうのもできるようになってきたし、身体も2回りくらいデカくなりました」

 そんな姿は先輩にも届いていた。又吉克樹投手が「本当に真面目ですし、丁寧でした。野球に対して“スレてない”というか“もういいや”って感じでは過ごしていなかった」と目を細めていた。山本も又吉の様々な姿に刺激を受けた。「又吉さん、サインをめちゃくちゃ丁寧に書くって話題になっていたじゃないですか。普段から人をすごく大事にしているので、そういうところは自分も見習いたいです」と気遣いに感銘を受けた。

 12月には食事にも連れて行ってもらった。「又吉さんと(中村)晃さんに、早(真之介、昨オフで戦力外に)と自分をご飯に連れていってもらったんです。早がまだ福岡にいた時に。先輩方とご飯に行く機会はなかなかないですけど、先輩の姿を見て学ぶことは本当に多かったです」。先輩たちが早の送別会を開いてくれることになり「早の1番仲良いやつ連れてきて」と言われて、山本が誘われたという。

 山本は今季の目標に「まずは1日でも早く復帰することと、1日でも早く2軍に行ってレギュラーを取ること。今年は2軍で規定打席に乗ることが目標です。そうすれば、勝手に結果もついてくるかなって思うので、これを意識してホームランもヒットも、守備も去年できなかった分、しっかりやっていこうと思っています」と掲げる。親友たちの奮闘を励みに、そしてその背中を追い掛けて飛躍の1年にしてみせる。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)