首脳陣が「ドライブライン」で学んだこと 明石健志コーチが触れた考えの“違い”

ソフトバンク・明石健志【写真:竹村岳】
ソフトバンク・明石健志【写真:竹村岳】

「本当に入口に入ったぐらいで終わっちゃったなって」

 アメリカでの学びを指導に還元しようとしている。ソフトバンクは今オフ、選手だけでなくコーチ陣やスタッフも米シアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」に派遣した。動作解析やフィードバックなどを秋のキャンプで行った最先端をいくドライブラインのメソッドを、球団全体で取り入れようとしている。

 派遣されたコーチの1人が明石健志2軍打撃コーチだ。村松有人1軍打撃コーチや星野順治コーディネーター(投手)、佐久本昌広3軍投手コーチ(チーフ)らと海を渡り、1週間足らずの時間だったが、その指導に触れた。「いろいろなことを聞きましたけど、時間が短すぎましたね。年単位でいきたいなと思いました。本当に入口に入ったぐらいで終わっちゃったなって」。物足りなさすら残る充実の時間だったという。

 コーチとして触れた「ドライブライン」の指導について、明石コーチは「引き出しですよね」という。選手個々の動きを動作解析と数値で分析。それぞれの身体的、フォーム的な特徴に応じた、課題を克服するための練習法(ドリル)を与える。それに取り組むことによって、選手たちは分析で浮かび出た課題を克服していく。

 打撃フォームひとつとっても、これまで聞いてきた指導方法とは異なるアプローチがあった。「日本だと体を残してとか、体を開くなっていう表現を使うんですけど、それがそうではないんですよね。体の原理とかも勉強になったんですけど、日本人は手が出てくるのが早い。体を開くなって言っても、胸が一緒に開くのと、骨盤だけが開いているのは違うんですよ。アメリカに行って、その表現の仕方が難しかったですね」。そこでの“開くな”は胸部までもが一緒に開いてしまうこと。骨盤が先行して回転することは正しい動きなのだという。

「一流の選手は、例えばギータとか近藤とかもそういう使い方をしているんです。ただ、1軍の選手のバッティングを見ると手が早く見えるんですけど、それは連動がちゃんとしていて最終的に手が引っ張られてバーンって出てくるから」。1軍でトップレベルの打撃成績を残す柳田悠岐外野手や近藤健介外野手といった一流打者たちは、その動きが自然とできているのだと明石コーチは言う。

 使うバットにも学びがあった。「こういう選手はこういうバットを使った方がいいとか、スイングと体の特徴に応じて使うべきバットがある。バットは無意識というか、自然に振ったらそういうふうになるものを使うっていうのも勉強になった」。理にかなった体の使い方ができるバットを使う、という考えも新鮮だった。

「数値を見て、数字を全部理解して、選手の映像で擦り合わせて、動作解析をして、こうなっているからこのドリルを処方しましょう、そのときに使うバットはこれとこれだよっていうのができるようになるのは、まだ全然難しいなと思います。1人では無理です。みんなで共有して、こうなっているから、このドリルを処方しますかっていう話し合いをしない限りは、難しいと思います」

 実り多き期間であった一方で、その難解さも痛感した。一朝一夕で理解できるシロモノではなく、今後も継続して知識として入れ続けていく必要性があるという。ファームで若手の指導にあたる明石コーチ。より幅広い知識を身に付ける意欲に溢れていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)