「ライバルがいる中でアタマ1つ抜けられるようにしないと」
師匠がチームを去っても、争いは熾烈なままだった。今季が4年目になる育成左腕の大城真乃投手は危機感を募らせている。昨年12月に行われた現役ドラフトでホークスは日本ハムから変則左腕の長谷川威展(たけひろ)投手を獲得。同じタイプの左腕が加わることで、競争が激化するのは確実。大城は「いや、ちょっとキツイなぁって……」と、率直な心境を明かす。
大城は沖縄県出身の21歳。宜野座高校から2020年育成ドラフト7巡目指名で入団した公称170cmの小柄な左投手だ。手首や肘の柔らかさを生かした直球を投げ込む。球団の動作解析の結果、より身体に合っているサイドスローに2022年秋に転向。出力が上がり、真っ直ぐの最速は、オーバースローの時の143キロから145キロにまで上がった。
サイドスローになって2年目のシーズンとなる今季。キャンプは筑後で過ごしているが、「結構いい感じです」と前向きな言葉が口を突く。「日々新しいことを、探り探りいろんなことをやってきました。今は軸足を意識していて、それがばっちりハマって、いい感じです」。昨年の春のキャンプの時より、腕の位置が少しばかり上がったが、自分に合うポジションが見つかったと手応えを感じている。
とはいえ、50人を超える育成選手を抱えるホークスで支配下登録を勝ち取る難しさ、壁の高さを痛感している。長谷川が加入し、同じ育成の左サイドスローである渡邊佑樹投手が昨季後半は2軍に定着。キャンプもB組ながら、A組のシート打撃に登板しており「ナベさん、A組のシートで良かったですよね」と、大城にとっても気になる存在だ。
互いに3軍で過ごしていた時期は、会話もキャッチボールもしてきた。「投げ方というかナベさんのボールはストレートなんですけど、回転がなんか違うんですよ。カットみたいな、ジャイロ成分があるみたいな。僕にはできないなと思って。あとなべさんのスライダーはめっちゃ曲がります」。ライバルとなる先輩の凄みを感じるからこそ、焦りもある
ただ、大城には大城の魅力がある。サイドから回転効率の良い真っ直ぐを投げ込む。「いろいろ握りを変えたりとかして、それでハマった。ちょっとフォークみたいな感じ」というチェンジアップも武器になっている。プロ入りしてから、一度も怪我をしていないところも持ち味。決して体格に恵まれているわけではないが、怪我をしたのは中学時代にまで遡るというタフな投手でもある。
昨オフは嘉弥真新也投手のもとで自主トレに励んだものの、今オフは大先輩のヤクルト移籍もあって参加を控えた。ただ、偶然にも沖縄に帰省する飛行機が同じで、空港で再会。話をすることができた。優しい師匠からエールを送られ「左のサイドはいっぱいいるし、レベルも高い。僕も4年目なので、勝負の年になってくるんですけど、いろんなライバルがいる中でアタマ1つ抜けられるようにしないと」と決意を新たにした。師匠に良い知らせを届けるためにも、勝負の年になる。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)