徹する自分の役割「あんなホームランは打てない」 山川穂高との一塁競争…中村晃の“本音”

ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・中村晃【写真:竹村岳】

韓国・斗山ベアーズとの練習試合…2安打2打点の活躍で「いいアピールを」

 どれだけ中軸がしっかりしようと、自分の役割を見失うことはない。数字はもちろん、目に見えない部分にこそ自分の“真髄”がある。ソフトバンクは25日、韓国・斗山ベアーズと練習試合を行い6-1で勝利した。2安打2打点と貢献したのが「5番・一塁」に入った中村晃外野手だ。激しい一塁の競争において、中村晃自身が「なんでもやらないといけない」と立ち位置を語る。その真意に迫った。

 まずは初回2死二塁、右投手の内角への変化球を左前に落とした。5回2死二塁でも左腕から中前に運び、タイムリー2本と持ち前の渋さを見せつける。「(1本目は)追い込まれたんですけど、その中で対応はできたのかなと思います」と振り返った。自主トレ中には腰を痛め、今キャンプ中でも一時は体調不良での離脱はあったものの「だいぶというか、普通にできていると思います」と、状態を強調する。

 24日の台湾・楽天モンキーズとの練習試合では、山川穂高内野手が2ランを放った。小久保裕紀監督は「サインがほぼない選手は決まっている。そういう選手になりたければ3割30本打てばいい。そうじゃなければ、勝つためにやるだけという話はもうちゃんとしている」と選手それぞれに、役割の自覚を求めていた。プロ入り後、全ての打順を経験している中村晃は、打線における自分の役割をどのように考えているのか。

「なんでもやらないといけないと思います。繋ぐことも返すことも、チャンスを作ることもしないといけない。そうやってやってきたので、自分で考えて、場面場面で対応できるのが持ち味かなと思います」

 24日には3番から柳田悠岐外野手、山川、近藤健介外野手が並び、指揮官も「返す選手と繋ぐ選手がハッキリ分かれている」と語っていた。その中で中村晃は勝負強い打撃に加え、通算出塁率.364。昨季も1番、2番、4番、5番、6番、7番を打つなど、まさに“なんでもできる”ことが最大の武器だ。「数字を残すことが一番ですけど、そういう(持ち味を)ところをみなさんが評価してくれたら」と、自分だけの持ち味を失うことはない。

「(今日も)ああいうところでタイムリーが1本出ることは大事だと思いますし、しっかりと意識して、練習試合だからという感じではなく、その場面というのを意識して打てたのはよかったと思います。内容とかもありますけど、試合をしているので。とにかく試合に勝つためにというのを考えて結果を残していけたら」

 一塁手として4年連続でゴールデン・グラブ賞に輝く守備力も持ち味の1つ。山川もリスペクトを込めつつ「守備ではどうあがいても……というところもありますし、バットコントロールの技術も。試合中は自分以上のものは出せない」と話していた。中村晃も「自分にできるバッティングをするだけかなと思います。あんなホームランは僕には打てない。ポジションは一緒ですけど、プレースタイルは全然違いますから」という。自分にないもので戦うことはできない。首脳陣に評価してもらった時に自分の名前が出るように、最善の準備を続けるだけだ。

「刺激しあっていければいいんじゃないですか。しっかりと結果を残して、いいアピールを続けていければいいかなと思います」

 現状、小久保監督は打順を組むこともコーチ陣に一任している。村松有人打撃コーチも「結果が出たので、ちょっと落ち着いたかなと思います。技術は持っているわけですから、やってくれると思いますよ」と期待する。首脳陣の狙いを理解して、どんな役割にも応えてくれる。打順を組む側にとっても、そんな中村晃の存在は頼もしい。「うまくアジャストしてくれると思います。返すこともチャンスメークもできるので、組みやすいです」と信頼を寄せていた。

 23日に春季キャンプを打ち上げ、チームは実戦の中で日程を進めている。2月も終盤となり、中村晃は自身の状態を「普通くらいです。やりたいことが100%できたわけではないですけど、それなりにはできているんじゃないかなと思います」と表現した。プロ17年目となる2024年。チームの勝利のためなら、何色にだって染まる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)