19年間で73万本超…知ってほしい現状 43歳になった和田毅が続ける社会貢献活動

感謝状を贈呈されたソフトバンク・和田毅(左)【写真:福谷佑介】
感謝状を贈呈されたソフトバンク・和田毅(左)【写真:福谷佑介】

4月2日の本拠地開幕戦のマウンドを託され「ホーム最初の白星を監督に」

 社会貢献の輪を広げるために今年も左腕を振り続ける。ソフトバンクの和田毅投手は2005年から認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」(JCV)を通じて、投球数に応じてワクチンを寄贈する活動を続けている。昨季は1640球を投げ、3万5120本のワクチンを寄付。活動を始めてからの寄付は累計73万5120本にもなり、43歳の誕生日翌日となった22日には、同団体から感謝状を贈呈された。

 早大から2003年にホークスに入団し、プロ3年目から始めたこの活動も今年で20年目になる。「一気に送ることはできないですけど、コツコツ送ってきたことで70万本を超える数になった。そして、まだ現役として送ることができているので、本当に続けてよかったなと思います。それと同時に、一生懸命に野球と向き合って、現役でいられるからこそ、これだけの数を送ることができているので、本当に頑張ってよかったな思えています」。プロ22年目の今も現役で続けられる原動力の1つにこの活動がある。

「世界の子どもにワクチンを 日本委員会」が発足して今年が30年の節目の年だという。和田が活動を始めた当初は寄付先はミャンマーだけだったが、今となってはラオス、ブータン、バヌアツを加えて4か国に広がった。同法人によれば、和田の「僕のルール」に賛同するように、大手企業なども活動に加わり、各社それぞれ“僕のルール”を設定してワクチン寄付を行っているところもあるという。

 広がりを見せる活動に、和田は「それは僕の力ではないと思うんですけどね。JCVさんの努力の結晶だと思いますし、僕1人でそんなことできるわけなので」と謙遜しつつ、こうも語った。「少しでも知名度だったり、ワクチンのことを皆さんに知っていただいて、少しでも送る本数、国が増えたのであれば、嬉しいな、良かったなと思っています」。大切なのは、知ってもらい、活動に賛同してくれる人が1人でも増えることだ。

「自分自身も始めたときは全く無知でした。1日で8000人の子どもが亡くなっているっていうことに衝撃を受けましたし、日本であれば当たり前に受けられるものが、受けられない国もあるんだっていうことを知った。まだ1日で4000人という子どもが亡くなっているので、まだまだですけど、1人でも多く未来ある、夢を持てるような子供が増えてくれたらなと思っています」

 そんな願いを胸に抱えつつ、2024年シーズンも戦う。今季はホーム開幕戦となる4月2日のロッテ戦(PayPayドーム)で先発する。21日に小久保裕紀監督からホテルの自室に呼ばれて通達され「『俺のホームの開幕戦の最初の勝ち星を頼んだ』というふうに言っていただいたので、すごく嬉しかったですし、自分にとっての開幕ですし、ホーム最初の白星を監督に自分が届けられるように頑張りたいと思います」と語った。

 早大の後輩である有原航平投手が3月29日のオリックス戦(京セラドーム)で開幕投手を務める。奇しくも早大の先輩後輩が開幕とホーム開幕のマウンドを託され「僕の中でも、それ(有原)しかないと思っていましたし、自分も1%くらいあるかなと思っていましたけど(笑)、99%有原だろうな、と。そんな中でも自分をホーム開幕戦に指名していただいたことが本当にありがたいな、と。身の引き締まる思いがしたので、ウイニングボールを監督に届けられるように頑張りたいと思います」という。

「ワクチン活動を始めて20年目になるんですね。その年に、JCVさんも30周年とのことなので、お互いが節目の年っていうことで、今年が個人的にも、チーム的にも良い年になるように、1球1球投げたいと思います」。今年もより多くのワクチンを子どもたちに届けるために――。和田毅の2024年シーズンは4月2日、PayPayドームから始まる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)