43歳迎え「眠たくなるのが早く…」 和田毅が追う“限界”と「抜きたい」記録

ソフトバンク・和田毅【写真:小林靖】
ソフトバンク・和田毅【写真:小林靖】

21日は43歳の誕生日「まだ野球をやれているんだなと実感」

「松坂世代最多」の勝利数をかけたシーズンを迎えた。ソフトバンクの和田毅投手は21日、43歳の誕生日を迎えた。プロ生活22年目。「野球選手である以上、(誕生日は)キャンプ地で迎えるんだろうなと。もう22回目になりますけど、まだ野球をやれているんだなと実感はしますね」。大ベテランとなってもなおチームを引っ張る心境と、その原動力を紐解く。

 昨季は21試合に登板して8勝6敗、防御率3.18。怪我のリスクには細心の注意を払っている。「抑えるところは抑えないと簡単に怪我してしまいそうな感じもありますし、大丈夫だなと思って走って、やってしまったり……。去年もそうですけど、そこはやっぱり若い時とは全然違うと思います」。故障によって引退を余儀なくされた選手も多い。先人たちの姿を見てきたからこそ、余計に意識する。

「怪我をする、しないの、ギリギリを攻めていければいいかなと思っています」。プレーする以上はリスクと向き合いながら、掲げる目標に近づくための限界を探る。

限界を追い続けないと「落ちていくんじゃないかなっていう懸念」

「もちろんそこ(限界)は追い求めていかないと落ちていってしまうので。それがいいか悪いかっていうのはちょっとあれですけど、自分の中ではそれを求めていかないと、体の状態が落ちていくんじゃないかなっていう懸念はある」。41歳で自己最速の149キロをマーク。今でも大台の150キロを目標としている。追い求め続けないと、選手として衰退してしまうとの危機感も滲む。

 向上心を持ち続ける原動力のひとつに、同級生の存在がある。1980年度生まれの「松坂世代」で、最後の現役選手。同学年の顔だった松坂大輔氏は世代でトップの日米通算170勝を挙げており、対する和田は163勝。あと7勝に迫っている。

「自分はまだ抜けるチャンスがあるので、それを抜きたいという、ただ単純にその気持ちだけです。逆に自分がそのぐらい以上の結果を出さないと、個人的に納得もできないですし、チームとしてはやっぱり、いい位置にいない可能性もある。(記録を)抜けたな、しっかり結果を出せたなっていうのは、また(松坂)大輔に報告できればなと思います」

 現役最年長であるヤクルト・石川雅規投手も影響を受ける存在だ。「石川さんがブルペンで投げている記事とかを見ると、やっぱり凄いな、毎年(たくさん)投げているなと感じる。本当に僕の目標でもあるので、負けないようにしたい」。不惑を超えた2人の左腕は、互いに刺激し合っている。

お酒も弱くなった? 「寝られなくなってきたら、いよいよ危ない(笑)」

 チームを4年ぶりのリーグ優勝に導くため、主力のひとりにならなければいけないと自覚している。世代の頂点に立つことができれば、チームは自然と悲願に近づく。

 加齢による体の変化は日々実感している。「眠たくなるのが早くなってきました。お酒もなんか弱くなったような気がしなくもないです。まだ眠たくなってくれてるので、まだ大丈夫かな、と。これが寝られなくなってきたら、いよいよ危ないと思うんで(笑)」。周囲の笑いを誘いつつ、まだ目は少年のように輝いている。

 宮崎での春季キャンプも終盤。誕生日を祝ってくれるファンから、数多くのプレゼントやメッセージを受け取った。爽やかな笑顔で「うれしいです」と噛み締める。応援の声にも、背中を強く押される。和田毅の“22年目”の挑戦が始まる。

(飯田航平 / Kohei Iida)