小久保監督の「優しさを感じた」 正木智也が明かす…B組スタートにかけられた言葉

ソフトバンク・正木智也【写真: 福谷佑介】
ソフトバンク・正木智也【写真: 福谷佑介】

構えを前傾させる昨秋からの取り組みに手応え「調子は続けてすごくいい」

 A組昇格へアピールの一発だった。ソフトバンクの正木智也外野手が17日、生目第二球場で行われたセガサミーとのB組練習試合でいきなり本塁打を放った。初回に左中間の防球ネットに突き刺す特大の先制2ラン。2回の第2打席でも左翼線に落ちる二塁打を放ち、2安打1本塁打2打点と首脳陣に猛アピールした。

 初回、四球で出塁したイヒネ・イツア内野手を二塁に置き、打席に入った正木。相手左腕の真っ直ぐを振り抜くと、快音を響かせて打球は左中間の防球ネットに一直線。「感触は完璧でした。テーマとして真っ直ぐに振り負けない、というのがあったので、それをしっかり体現できて良かったです」。本人も納得の一打だった。

「このキャンプ、調子自体は続けてすごく良かったので、自信を持って打席に入れた」という正木。昨年のリハビリ期間、そして秋のキャンプ、参加したアジア・ウインターリーグで取り組んできたものの正解が、着実に身を結びつつある。

 昨年は開幕スタメンに抜擢されるも、18打席連続無安打と大不振に喘ぎ、そのまま2軍に降格。6月3日に1軍再昇格を果たし、初ヒットも放ったが、その後、肩の故障で戦列を離れた。

「リハビリに落ちたときに、何が悪かったのか、たくさん動画を見て、考えて、いろんな人の話聞いたりしました」。自身の課題と必死に向き合った。秋のキャンプで行った「ドライブライン・ベースボール」の計測でフォームを分析。打球角度を上げるため、構えをこれまでよりも前傾させるフォームに変えたことで、打撃にも変化が生まれた。

 フォームを変えて臨んだアジア・ウインターリーグでは17試合に出場して打率.351、2本塁打、4二塁打をマーク。「やっていたことをウインターリーグで出せて自信に繋がりました。その自信を持ったまま、ウインターリーグの感覚も持ったまま、オフシーズンに練習できた。それが春のキャンプでも継続できている感じです」。確実に自信と手応えになってきている。

 昨季負った右肩の怪我の影響もあって、B組で迎えた今春キャンプ。「悔しい気持ちはありますし、でも、まずは僕は肩の怪我をしっかり治さないといけない。もう治っているんですけど、実戦も入ってくる中でしっかり投げられるか、というのが課題というか、まず潰さないといけない」。肩の故障が再発してしまっては元も子もない。焦りそうになる気持ちを落ち着け、徐々に状態を上げていくことを考えている。

 そう考えられるようになった背景には小久保裕紀監督からかけられた言葉があった。キャンプのB組スタートに際して指揮官から「『A組に入って、焦って肩の状態が悪くなるのもアレだから、まずはB組でじっくり治して焦らずやれ』みたいなことは言われました」。現役時代、同じように肩の故障で苦しんだ経験のある小久保監督の“親心”だった。

 昨年、リハビリにいる間も当時2軍監督だった指揮官は正木のことを気にかけてくれていたという。

「リハビリのときに気をつけることとかも教えてもらったりとかして、いろんなことを教えてもらいました。小久保さんも僕と同じ肩の怪我をしていて気持ちもすごくわかってくれますし、酷い怪我だっていうのもわかってくれている中での扱いをしてもらっている。そういった優しさをすごい感じてるんで、結果を出して恩返ししたいなと思いますね」

 苦しい時も寄り添ってくれた小久保監督の言葉だからこそ、しっかりと受け止め、じっくりとB組から歩を進めることを受け入れることができた。

 小久保監督は肩の怪我に苦しんだ2年後、キャリアハイの44本塁打をマークした。当然、正木もそれを知っている。「自分のモチベーションになりますし、小久保さんが成し遂げたことを僕も成し遂げたいと思っているんで、同じような活躍できるように、まずはA組に上がれるように頑張りたい」。結果で示すことが最高の恩返しになることも、もちろん分かっている。

 苦しめられた右肩の状態はほぼ問題はなくなっている。「痛くもないですし、怖さもなくなってきた。もう大丈夫かな、と思います。いつでも(A組に呼ばれても)大丈夫です」。もう不安はない。あとは“お呼びの声”がかかるのを待つだけ。正木が虎視眈々と、B組からの逆転開幕スタメンを狙っている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)