1995年組で元同僚、“コンビ名”は「冷蔵庫とラジオ」 福岡で再会…古川侑利と鍬原拓也の絆

ソフトバンク・鍬原拓也(左)と古川侑利【写真:竹村岳】
ソフトバンク・鍬原拓也(左)と古川侑利【写真:竹村岳】

巨人時代のチームメート…鍬原の鷹入りに古川も「縁を感じます」

 絶妙な掛け合いに、緊張と緩和。“コンビ名”は「冷蔵庫とラジオ」だ。ソフトバンクの古川侑利投手と、鍬原拓也投手は宮崎の生目の杜運動公園で春季キャンプを過ごしている。同じB組からスタートしてまずはA組入り、そして支配下への昇格を目指す日々だ。巨人時代からチームメートで同級生、2人の関係性に迫った。古川は「こうやって同じチームでやれることに縁を感じます」と言う。鍬原も「すごく真面目ですけど、ちょっと頭固すぎですね(笑)」と笑って話す。

 鍬原は2017年ドラフト1位で中大から巨人に入団した。2022年にはキャリアハイの49試合など、通算で80試合に登板した。古川は2013年ドラフト4位で楽天に入団し、2019年7月にトレードで巨人に移籍。2人は初対面について「覚えていない」と口を揃える。鍬原は「同級生が入ってきたことが嬉しくて、すごく話していました」と、思わぬタイミングで同級生が増えたことを喜んだそうだ。

 鍬原は2023年、巨人で5試合登板に終わり、オフに戦力外通告を受けた。結果的にホークスと育成契約を結ぶが「『あるかもしれない』というか、なんとなくは聞いていました。連絡先も知っていたので」と古川は言う。鍬原にとっても「一番はじめに報告しました。『ホークスってどんなチーム?』から始まりました」と、最初に連絡を取った人物だった。当時は、同じく戦力外となった古川もまだ所属先が決まっていなかった状況で「あいつもまだ決まっていない状況だったので、一緒にやれたらいいねって会話はしました」とやり取りを明かす。

 古川は公称では176センチ、86キロだがオフでもウエートトレーニングを重ねて、昨シーズン終了後から約5キロの増量に成功した。Tシャツから伸びる太い腕、広い肩幅も含めて昨季の途中からチームメートに「冷蔵庫」「筋肉マン」と呼ばれるようにもなったほどだ。自分のあだ名を踏まえて「僕が冷蔵庫なら、あいつはラジオですよ! 一生しゃべっています!」と、奈良県出身でおしゃべりな鍬原の人間性を笑いながら表現する。

 鍬原も「僕は歩くスピーカー……いや、ラジオですね。ラジオで行きましょう。冷蔵庫の上にラジオを置いてもろて」と受け入れる。「僕しゃべらなかったら体調不良を疑われます。それくらいしゃべります」というほど。1度の食事で大量の情報量が耳に飛び込んでくるが古川も「ある程度は(笑)」と、全てをちゃんとは聞いていないそうだ。その上で「みんなと満遍なく話すので、コミュニケーション能力はすごいですよ」と、もちろんリスペクトもしている。

 2020年9月の古川の誕生日。球場で、好みで集めていたスニーカーを鍬原がプレゼントしてくれたそうだ。「『なんか誕生日プレゼントちょうだいよ』って適当に言ったら『ええよ』とか言って、すぐにくれました」と古川が言えば、鍬原も「自分がされたら嬉しいものをプレゼントしようと思って」と照れ笑いする。数年が経った今も履き続けている、古川にとっても大切な1足だ。

 鍬原の誕生日は、6か月後の3月。古川からの“お返し”は「何がいい? って聞いたら『いらんよ』って言われたんです。『何か言ってよ』って言ったんですけど、それで返していないです(笑)」という。鍬原から「おい!」とツッコミがあったのかと思えば「別に返してほしくてやっているわけじゃないですから。むしろ僕が『いらない』って言ったので」と、ただ本当に自分が好きなスニーカーをプレゼントしたいだけだった。

 今月の5日も鍬原と古川、重田倫明広報の3人でランチに行った。大盛りのパスタにデザート、食後のコーヒーまで含めて「3人でランチをバケモンみたいに食べて、ランチで1万ですよ? やばいでしょ(笑)」と“大食漢”であることも共通点だ。いつもニコニコで何事も全力で取り組む古川とは、関西人の鍬原も「気、合いますよ。僕が一生しゃべっているのを聞いてくれます。野球のことになると熱くなって“ああじゃない、こうじゃない”って話もします」と、くだらないことから熱い話までできる関係性だ。

 今はともに支配下枠を争うライバルでもある。古川が「2人で一緒に上がれたらいいですね。同じ年で、同じ右投げ。刺激しあって、高め合っていけたら」と意気込めば、鍬原も「そこ(支配下の枠)はあまり気にしていない。『一緒に上がってからが勝負だね』って話をしています。ここで勝負じゃなくて、お互いに支配下になって、1軍の枠を争う勝負をしたい」と、2桁背番号にになってからのステージを見据えていた。「冷蔵庫とラジオ」。立場的に今は崖っぷちかもしれないが、いつだって全力。だからこそこの“コンビ”を応援していたくなる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)