谷川原に「便利屋で終わってほしくない」 高谷コーチが語る“捕手専任”への経緯と狙い

ソフトバンク・海野隆司(左)、谷川原健太【写真:藤浦一都、竹村岳】
ソフトバンク・海野隆司(左)、谷川原健太【写真:藤浦一都、竹村岳】

ベテランの嶺井がB組スタートも「隣でやっているので」

 今季、捕手の競争はどんな展開を見せるのか。2月1日から宮崎市の生目の杜運動公園で始まったソフトバンクの春季キャンプ。主力が集うA組には甲斐拓也捕手、谷川原健太捕手、海野隆司捕手、そして渡邉陸捕手と4人の捕手が組み込まれた。残念ながら渡邉陸は肋骨の疲労骨折で離脱となり、吉田賢吾捕手が昇格することになったが、甲斐の牙城を崩そうと若い捕手が日々、切磋琢磨している。

「しっかり準備はしてきているな、というのは率直に感じています。各々、しっかりアピールしようというか、準備してきてくれているなってのは感じます」。谷川原と海野の2人について、こう語るのが高谷裕亮バッテリーコーチだ。小久保裕紀監督のもとで昨季まで2軍でバッテリーコーチを務め、指揮官と共に今季は1軍へ。ホークスのバッテリー面で鍵を握る存在だ。

 若い3人と甲斐がA組となり、昨季、DeNAからFAで加入した嶺井博希捕手はB組でキャンプインを迎えることになった。少しばかり驚きを持って受け止められた、このキャンプの組み分けに込められた意図を高谷コーチはこう説明する。

「Aだからとか、Bだからとかはないです。隣でやっているので、そこは関係なく、しっかりと見ていこうと思っています。やることは一緒だと思っているので、嶺井がB組だからどうとかはないです。競争なんで」

 キャンプの練習メニューの都合もあり、A組とB組を分けはしたものの、高谷コーチの頭の中では“捕手全員”による競争との認識でいる。だからこそ、高谷コーチは1軍バッテリーコーチであるにも関わらず、A組捕手陣の練習が終われば、B組に足を運び、嶺井らB組の捕手陣にも目を光らせている。

 そんな中で甲斐の“対抗”として期待されているのが、今季から捕手専念となる谷川原だ。これまで外野手や代走での起用など、マルチな役割でチームに貢献してきた26歳だが、今季は捕手一本で勝負に出ている。昨年の秋季キャンプで小久保監督が谷川原の捕手専任を明言。コーチ陣とも相談した上での決断だったいうが、その経緯について高谷コーチはこう明かす。

「監督と去年いろいろ話しをした中で、あとは本人にその覚悟があるかどうかっていうところでした。本人もそのつもりって言っていたので。これからまだまだもっと磨いてかなくちゃいけないですけど、ある程度技術というのは、肩も強いですし、ブロッキングもそこそこできる。そこからどれぐらいの伸びしろがあるのかっていうのも監督ともいろいろ話をした中で決めました」

 谷川原本人と話し合いの場を持ち、当人も“その覚悟”を持っていた。プロ野球選手たるもの、誰もがレギュラーを目指しているもの。ユーティリティーで終わっていいはずもなく、高谷コーチも「便利屋で終わらない、終わって欲しくないっていうのもあるし、本人もそのつもりでいた。こちらと彼の考えとが一致したし、その覚悟があった。それに尽きる、それが全てじゃないですかね」と明かす。

 甲斐、谷川原とともにA組にいる海野も並々ならぬ覚悟を抱いてキャンプに臨んでいる。昨季中盤には小久保監督から「現時点では5番手(捕手)」と厳しい言葉をかけられたこともある。オフは川瀬晃内野手と自主トレに励み、その後には今宮健太内野手の自主トレにも参加。高谷コーチの目にも「しっかり体も準備してるのは見てすぐわかりました。相当な決意はあるんじゃないですか」と映っている。

 第3クール3日目の12日に行われたキャンプ初のシート打撃で谷川原が2安打。翌日には海野が本塁打を含む2安打と結果を残した。「実戦で結果を残すことが大事なことだと思う。そのためにもまず練習とかでしっかり目立てるように」と語っていた高谷コーチに対して格好のアピールになったはず。では、今季の捕手起用は一体どうなっていくのか。現状で高谷コーチが思い描く構想については、次回で記す。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)