一流打者だからこその細かなこだわり 山川穂高が辿り着いた本塁打を打つ“1番いい練習”

ソフトバンク・山川穂高【写真:小林靖】
ソフトバンク・山川穂高【写真:小林靖】

キャンプ第2クール最終日は全体練習終了後に1時間超の特打

 アーチストとしてのこだわりの一端が見えた。8日に行われたソフトバンクの春季キャンプ第2クール最終日。FA権を行使して西武から加入した山川穂高内野手は全体練習終了後のスタジアムで志願の居残り特打を行い、緩いカーブマシンをひたすら打ち返すなど、1時間超にわたって、バットを振り込んだ。

 第2クール最終日は柳田悠岐外野手、アダム・ウォーカー外野手とともに他の選手のランチタイムにバッティング練習を実施。本隊のバッティング練習が終わると、再びバットを持ってグラウンドに姿を現し、黙々とバットを振った。緩いボールに対しても、何かを確認するように1球1球、念入りにバットを振っていた。

 この緩いカーブマシンでのバッティング練習は、山川がホームランを打つ上で大きな意味のある練習だという。「今までいろいろやってきた中でロングティーと緩いカーブをしっかり打つというのは、ホームランを打つ体の使い方として1番いい練習だなと思っている」。3度のホームラン王獲得、通算218本塁打を放ってきた長距離砲が辿り着いた“最高の練習”だ。

 なぜ、このカーブマシンでの練習がホームランを打つ上で、重要になるのか。山川はボールを打ち返すにあたっての深い狙いをこう語る。

「カーブマシンのときは緩いカーブにセットしているんですけど、中に入ってくるボールはボールの内側を打つことをイメージしないと、ドライブがかかってしまう。真っ直ぐ飛ぶか、もしくはレフトに飛んだ場合はスライス(回転)をかけることができればいいなっていう打ち方なので、良かったと思います」

 ただマシンから放たれてくるボールを闇雲に打ち返すわけではない。体をゆったり大きく使い、そしてボールの内側へとバットを入れる。レフトポール際に飛んだ打球でもファウルゾーンからフェアゾーンへと“返ってくる”ような回転をボールにかけるのが理想。柳田ら一流のバッターたちに共通する考え方を、山川も頭に描いている。

 この日の特打も「予定通りです」という山川。もともと練習量は豊富で、バッティングの理論も深いと言われる。小久保裕紀監督も「彼は昔から練習量がすごいと聞いていたので。自分できっちりやっていますよ」と全幅の信頼を寄せる。フリー打撃でも異次元の確率の高さでスタンドにボールを放り込んでいる。昨年は自身の不祥事で公式戦出場停止となっていたが、現時点ではその“ブランク”は感じられない。

 新天地でのキャンプも2クール目まで終わった。「1クール目よりは慣れましたけど、もう本当に1ずつです。昨日より、1慣れました。本当に慣れるのはまだはるか先ですし、でも、その中でしっかり結果を出せる準備をしていきたいなと思っています」。ただひたすらに黙々と――。山川は宮崎の地で、自分のやるべきことと向き合っている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)