2度の育成契約に戦力外… “元巨人ドラ1”鍬原拓也を奮い立たせる反骨心とプライド

ソフトバンク・鍬原拓也【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・鍬原拓也【写真:藤浦一都】

「1日1日無駄にしたくない」自分を信じて挑む3度目の支配下

 何度でも這い上がる強い気持ちが己を奮い立たせている。山川穂高内野手やアダム・ウォーカー外野手ら大型補強が目立つ中、育成選手としてホークスと契約したのが鍬原拓也投手だ。28歳となる今季、新天地で迎えた心境を語った。

 2017年のドラフト会議で巨人から1位指名を受けて入団するも、2度の育成契約と戦力外を経験した。「話がなければ引退も視野に入れていた」。そんな時に声をかけてくれたのが、ホークスだった。何度でも這い上がろうとする鍬原を支えるものは何なのか?

 1日から始まった宮崎での春季キャンプはB組からのスタート。初日から小久保裕紀監督や倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が見守る中で、100球超を投げ込んだ。3日目まで3日連続でブルペンに入るも「ブルペンでどれだけアピールしても試合で抑えないと意味ないと思うので。ブルペンでは僕の調整というか自分のやりたいようにやっているって感じです」と語る。

 プロで6年の年月を過ごし多くの挫折を味わってきたからこその言葉だ。「アピールっていうか、なんかそれを練習するのは僕は違うと思う。どっちかって言うと自分のために投げている感じです。アピールするために投げているんじゃなくて、自分が悔いのないようにやるために投げてます。変にアピールって思われてもあれなんですけど……」。

 ブルペンとはあくまでも実戦で結果を出すための“準備の場”であり“アピールの場”ではない。実戦で結果を残せるように、後悔しないように、と考えると、自然と体はブルペンへと向かっていた。「1日1日を無駄にしたくないっていうのもありますし、支配下登録の枠っていうのは決まっているので。(育成選手が)50何人いて、そこから(支配下の残る)8枠を狙うんで、人と同じようにやってもダメ」。2022年には巨人で49試合に登板した実績がある。淡々と語るが、出てくる言葉には重みがある。

「やっぱり悔しさと、リベンジじゃないですけど、反骨心かなっていう風に思います。プライドもあるんで」。何度も挫折を味わい、悔しい思いを経験する度に這い上がってきた。そんな鍬原を支えるものはプライドと経験だ。「まだまだやれると思っていますし、他にいっぱい若い選手、すごいピッチャーがいるんで『あーっ』て思うんですけど……。そこは自分だけをしっかり信じてやっています」と、ひたすらに前を向く。

 鍬原ならまだまだやれる、そう信じたのはホークスのフロントも同じはずだ。「ホークスにとってよかったなって思ってもらえるように。獲得して良かったなって思ってもらえたらベストですし、それを目指してやれればいいかなと思います。みんなよく喋ってくれますし、気を遣ってくれる。下の子がほとんどなので、あんまり気を遣わせないようにはしたいなと思うんですけど」。手を差し伸べてくれた球団と、受け入れてくれたチームメートへの感謝の気持ちは結果で返すつもりでいる。

 新しい環境でも「いい緊張感でできていますよ」とポジティブに捉える。ドラフト1位が持つポテンシャルをここで終わらせるわけにはいかない。培われてきた反骨心とプライドを胸に秘め、3度目の支配下登録に挑む。

(飯田航平 / Kohei Iida)