食事、睡眠、走り方…オスナの徹底的な管理 尾形崇斗が衝撃を受けたキャンプ初日の夜

ソフトバンク・尾形崇斗(左)とロベルト・オスナ【写真:竹村岳】
ソフトバンク・尾形崇斗(左)とロベルト・オスナ【写真:竹村岳】

昨年6月に「明日12時半に来い」 オスナから声をかけられともにトレーニング

 キャンプ初日から、熱い時間を過ごした。ソフトバンクは2日、春季キャンプ第1クール2日目を迎えた。A組入りした尾形崇斗投手は、初日からブルペン投球を行うなど、開幕1軍を目指している。その大きな手助けとなっているのが、ロベルト・オスナ投手の存在だ。「人生が変わった」というほどの出会い。1日夜、食事会場で顔を合わせたという2人。オスナの徹底した取り組みには、あらためて驚かされるばかりだった。

 宮城県に生まれ、学法石川高から2017年育成1位でホークスに入団した。2023年は12試合登板で0勝1敗、0ホールド、防御率4.00。納得のいく成績は残せなかった。そんな昨年6月のある日、自分の投球を見守っていたオスナから「明日12時半に来い」と声をかけられ、トレーニングをともにするようになった。尾形にとって、自分の理想をはるか先で体現しているのがオスナだ。

 MLB時代にもタイトルを獲得するなど、圧倒的な実績を持つ右腕。2023年を終えて、ホークスとの単年契約が満了。去就が流動的になったことは、尾形も「気になっていました。トッププレーヤーですから、そういう選手から僕も少しでも吸収したかった」と心配していたが、新たに4年契約を結んだことでまたチームメートになれた。2月1日に球春を迎えて、久しぶりにユニホームを着た練習を終えた。1日夜の出来事だ。

「昨日(1日)一緒にディナーして、1時間半くらい野球のこととかいろんなことについて話をして、すごく学びました。スプリングキャンプの進め方や、開幕までの進め方はどんな感じなのかって話をしたり。自分と立場は違うんですけど1つ参考にしてトレーニングをしたり、そういうところです」

「あとは食事のことですね。『もっとプロテインを摂ってもいいんじゃないか』とか、オスナはめちゃくちゃ食べていたので。やばかったです。オスナはもう牛肉のことを『プロテイン』って言っていました」

 尾形と大関友久投手が食事をしていたところに、たまたまオスナとダーウィンゾン・ヘルナンデス投手が来て、テーブルを囲うことになった。スペイン語圏であるメキシコ出身のオスナだが、英語はペラペラに話すことができる。尾形は英語の腕前は「あんまり上手くないんですけど、聞いていたらなんとなくわかるようになりました」というが、4人で野球談義に花を咲かせたようだ。オスナの取り組みを、尾形が代弁する。野球に人生を“全振り”した、徹底的な姿勢だ。

「全部プログラムしていますね。食べ物も全部写真で撮って、アメリカにいるトレーナーに送って『もうちょっとこれを摂った方がいい』とか。睡眠時間も全部アプリで管理していて、寝られたか寝られていないのか(スマートフォンで)見せてくれました。全部を自分で管理しているので、結果を出すべくして出しているなって思いました。これで出ないわけがないなって」

「相手のデータも全部頭に入れて、試合が始まっても相手の1巡目をマッサージを受けながら1人だけ起きて見ているんです。まだみんなは寝たり(仮眠)しているんですけど。当日の試合のことも、過去のデータも頭に入れて、食事も睡眠もトレーニングも、全部を管理している。走り方1つも『ピッチングのここの意識と同じだ』とか言って、これで結果が出ないはずがないと思っているので、僕も一緒にやりたいなと思いました」

 尾形もこれまで世界一の投手になることを目標にして、自分だけの道を歩んできた。プロ6年目だった2023年、オスナという偉大な投手と出会ったことを「目標とか人生を変えさせてくれた、方向性を決めさせてくれた出会いでした」と表現する。自分では当然、突き詰めて取り組んできたつもりだったが、上には上がいることも思い知った。オスナの背中を追い、置いていかれないように、いつかは追い越せるように、このキャンプでアピールしていく。

 尾形を取材していた時、オスナが隣にまでやってきた。タンクトップから伸びる極太の腕。尾形の腕を「チキン」と指差すと「誰がチキンや」と軽快なやりとりも見せていた。1日の食事についても「ビーフをおかわりさせられたので、納豆を食べさせました」と笑って明かす。独特な臭いのある納豆だが、オスナも「デリシャス。エブリデイね」と、お気に召したようだった。新たな師弟関係がきっと、ホークスのブルペンを支えてくれる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)