周東佑京の素敵な“気遣い”…選手会長の自覚を感じた瞬間 インタビュアーに咄嗟の一言

ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

2月1日にキャンプイン…代表インタビューを終えた周東が発した言葉とは

 思わず出てきた言葉から、成長を感じ取った。ソフトバンクは1日から春季キャンプをスタートさせている。立場が変わり、背筋をピンと伸ばして球春を迎えたのが周東佑京内野手だ。10日に28歳を迎える中で、今季から選手会長に就任。連日のように選手の先頭に立ち、言葉を発している。メディアから受ける取材も増える中で、西田哲朗広報が思わず感心するほどの“気遣い”を見せた瞬間があった。

 1月30日、毎年恒例の必勝祈願が宮崎・筥崎宮で行われた。周東も、小久保裕紀新監督とともに常に先頭に立ち「やっと始まるなという気持ちです。(選手会長として)みんながやりやすいように。野球に打ち込めるようにいろんなことを進めていきたい。みんなと元気な顔で会えてよかったです。先輩方からは『ちゃんとやれよ』と言われました」と明かしていた。キャンプイン前日の1月31日、宮崎空港での歓迎セレモニーでも花束を受け取るなど、まだ慣れない選手会長としての仕事も丁寧にこなしていた。

ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】

 待望の2月1日。あいにくの雨で、雨天練習場での調整となった。練習前の円陣などで、周東が言葉を発したわけではないが、チームとしての船出の日。広報を通した代表取材に選ばれたのも、やっぱり周東だった。「雨でしたもんね、何を話したらいいんだろう……」とちょっぴり心配しながら会見場に登場。3分ほどのテレビインタビューを終えると、インタビュアーにこんな言葉をかけたのだ。

「大丈夫ですか? ありがとうございます。うわ~、心配なんですよね。喋った時にニヤニヤしていないか」

 何気ない一言に、周東の確かな成長が詰まっていると西田広報は言う。「周東から、マスコミさんのことを気遣って『上手く話せていましたか?』という言葉が出る時点で、選手会長としての自覚と、キャンプイン1日目の代表としてインタビューを受けた自覚が芽生えていますよね。すごく気遣いができているなと思いました」。質問の応答はもちろん、選手から寄り添ってもらえることはメディアとしても嬉しいもの。笑顔もありつつ、ハキハキとした口調が強く印象に残ったインタビューだった。

 その後のペン取材も終えて、西田広報が声をかけた。「佑京、上手くできたと思ってるかもしれんけど、アナウンサーの聞き方が上手かったんやで」。周東も「そういうのって、持ちつ持たれつじゃないですか!」と照れ笑いしていたが、それにも西田広報は「冗談っぽく言ったんですけど、『インタビュー良かったよ』ということを感じてもらえたら」と振り返る。取材する側との関係性が大切ということに、少しでも気がついてほしいと思ってかけた言葉だった。

「インタビューする人もプロですし(選手を)評価される人でもあると思うんです。やっぱり良い時はそういう風に言ったら(選手が)『今のよかったんや』と思ってくれるかもしれないし、佑京も『今のはインタビューする人が上手かったのか』と感じてくれたら、より上手くマスコミの方と話せるようにもなると思うので。そういうところも僕らのちょっとしたサポートなのかなって思います」

 選手会長としての仕事が大幅に増える中で、周東が見せた気遣いを西田広報は見逃すことなく、スッと報道陣との間に入ってくれた。「次やった時に『あ、あのインタビュー上手かった人や』って思うだけで、また関係が生まれるかもしれない。マスコミさんは選手の話を聞いてもらって、それをファンの方に発信してくれるのが、お互いに良いことだと思いますから」。瞬間にしか生まれない言葉もある。西田広報の瞬時の判断もその場で笑顔を生み、周東の印象を良い方向に変えただろう。

ソフトバンク・西田哲朗広報(左)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・西田哲朗広報(左)【写真:竹村岳】

 1月の自主トレ公開の時にも、報道陣に細かな気遣いを見せていた。午前中からの練習を1つずつ消化して、テレビインタビューに対応したのが午後3時だった。まだ最後のクールダウンが残っていたため、ペン囲みは全てのメニューが終わってから行われることに。その時も「マスコミの皆さん、帰る時間大丈夫ですか?」と、報道陣のスケジュールにも気を配っていたそうだ。テレビとペン、合わせて30分近い取材にも丁寧に応じてくれた。

 西田広報が周東と顔を合わせたのは、昨年の12月下旬以来だった。その時はクリスマスイブの収録。家族と過ごしたい気持ちも当然理解しつつ「ちょっとだけ一緒に仕事しようや、と(笑)。『クリスマス、佑京と一緒に仕事したいわ』って話をしました」とやり取りがあったそうだ。周東自身も「苦手なので、喋るのは。これから慣れるんじゃないかなと思います」と苦笑いする。人前で話すという選手会長として大切な仕事の1つを、広報として全力でサポートしていく。

 オフを終えて、首脳陣も選手も勢揃いするキャンプイン。選手会長としての日々が本格的にスタートした。周囲からの目線も踏まえて周東は「あんまりヘラヘラしないことです。必要以上にふざけない。あまり映りがよくない時もあるので、そういうところは考えながらやっていかないと」と“見られ方”を心掛けているという。これまではニコニコな笑顔も代名詞の1つだったが、メリハリをつけることで、自分が思うリーダー像に近づいていきたい。

「色々とやることが多いなと。今までは“その他大勢”で見ている立場だったので、そこをやらないといけないっていうのは今までと違うのかなと思います。ちょっと気を遣いながら、疲れました」

 多くの役割をこなしながら周囲にも気を配る。キャンプ初日を終えて、疲れながらも笑顔で語ってくれた。「やっぱり1年間(試合に)出たいと思いますし、レギュラーで出て良い成績を残したいと思います」と、改めてレギュラー奪取を目指す2024年。周東佑京が進化する姿が、楽しみでたまらない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)