63キロの大津亮介…授かった“細身”の戦い方 憧れの山岡泰輔から学んだ数年先までの工夫

ソフトバンク・大津亮介【写真:竹村岳】
ソフトバンク・大津亮介【写真:竹村岳】

沖縄・うるま市の自主トレを打ち上げて筑後へ…キャンプインに向け最終調整

 充実の表情で帰ってきた。公称では175センチ、63キロ。細身な自分でも戦っていけるだけの手応えだ。ソフトバンクの大津亮介投手が27日、ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で自主トレを行なった。今月の中旬から始めていたオリックスの山岡泰輔投手らとの自主トレを打ち上げて、キャンプインに向けて最終調整に入っている。他球団の投手との交流で、どんなものを得たのか。「間違いなく行ってよかった」と力強く言い切った。

 日本製鐵鹿島からドラフト2位で入団し、2023年が1年目。46試合に登板して2勝0敗、13ホールド、防御率2.43と、リリーフとして存在感を示した。シーズンを終えて、小久保裕紀新監督が誕生した。指揮官から先発への転向を通達されて、オフに飛び込んだ。山岡との自主トレでは「自主トレの初日に体の動きを見てもらって『似てる』と言われました」とやり取りの一部を明かす。

 山岡は2016年にドラフト1位でオリックスに入団した。通算157試合に登板して43勝45敗、13ホールド。まだ28歳という若さながらも、先発としても中継ぎとしても豊富な経験を積んできた。山岡も公称では172センチ、68キロとプロ野球選手としては決して大柄ではない。大津自身も「想像していたんですけど、やっぱり同じ路線で、多分僕と似た考えをされていると思っていた」という。他球団の一員である山岡との自主トレは、どのようにして実現したのか。

「シーズン中に瓜野さんがもともとオリックスの方で、僕が山岡さんをずっと尊敬しているというか、憧れている選手だと話していたので。『1回話した方がいい』と言われて、シーズン中に話をしたんです。僕は色々と聞く側だったので、変化球とか。『自主トレもお願いしたいです』っていう話もしました」

“キューピット”は、オリックスに長年在籍していた瓜野純嗣ブルペン捕手だった。2023年のシーズン中、場所はPayPayドームだ。ソフトバンクの試合前練習が終わり、オリックスの選手がベンチ前に出てきた時。山岡のもとに足を運んで挨拶した。当初は社会人時代の先輩、DeNAの大貫晋一投手と自主トレする予定だったが「海外でやるとか、色々と日程が合わなかった。それで山岡さんから『自主トレ決まった?』と連絡がきて。(大貫投手と)日程が合わなかったので、お願いしたいです、と」と、導かれるように合同自主トレが実現した。

 細身の選手が生き残る道を、山岡も7年間のプロ生活で模索してきた。「考え方も似ていると思うから『やるか、やらないかは自分で決められる。合わなかったらやらなくていいから』って、色々と教わりました」と、柔軟な姿勢で大津を受け入れてくれたそうだ。細身ならではのトレーニングを大津は「簡単に言ったら、普通の人がやらないトレーニングです」と大まかに表現する。「スクワットにしても、絶対にこんな体勢でスクワットしないだろって姿勢でやります。体の使い方というか、勝手に体幹(に力)が入るように」と続けた。

 大津が例に出したスクワット。通常ならつま先を前に向け、お尻から深く沈み込むことで下半身を鍛える。「僕らみたいな細い選手がああいうスクワットしても体が使えないので、投球動作にその動きがないんです」。山岡らは、つま先を外側に向けながら体幹が抜けないように真下に沈むという。「細い選手は自分の体をどれだけ動かせるか。筋肉も動きやすい部分と動きにくい部分があるので、そこのつけるところを把握した方がいい」と、筋肉のつける箇所、順番にもこだわってトレーニングを重ねてきた。

 近年のプロ野球は、フィジカルの強化でスケールアップを図る投手が非常に多い。選手としての能力を持った選手が才能を伸ばし、パワーで勝負するような時代になりつつある。細身の選手が生き残っていく方法を大津は「それも僕は聞きました」と明かす。目の前に集中するだけでなく、数年先まで見据えた工夫が必要だと、先輩から教えてもらった。

「山岡さんはウエートはあまりやらない。体幹とか、体の使い方を重視していたみたいなんですけど、若い時はそれでいけたけどウエートが必要な時期が来ると言っていました。それで今やられているみたいで、だから僕も20代後半になる前に『絶対に来るから今のうちにやっておいた方がいい』『いずれ気が付くから』と言われて、始めました」

「僕はまだ歴が浅い。長くやっている山岡さんは本当にすごくて想像を超えるような、バランス感覚でした。体の使い方としてはめっちゃ勉強になりました。なんでこのトレーニングしているんですかって聞いたら、そのトレーニングに対する意味を全部返してくれました。全部聞いて、全部すぐに返ってくるんです。山ほど聞いたんですけど。僕もシーズン中から取り入れようと思います」

 春季キャンプはA組スタートが決まった。2年目にして、初の開幕ローテ入りを目指す2月となる。「僕は開幕ローテーションを目指して、1年間戦うためにたくさんの知識をつけてきた。怪我せずにアピールして、ローテーションに入れるように」。そう語る表情は、キャンプインが待ちきれない様子だった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)