真の選手ファーストは「ワガママを聞くことではない」 王イズム継承…小久保監督のコメント全文

ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】

「チームのためなのか、選手のためなのかという議論の出発点にしてください」

 ソフトバンクは26日、監督・コーチ会議を行い、キャンプメンバーの組み分けやキャンプの方針などを決めた。会議後に報道陣の取材に対応した小久保裕紀監督の一問一答は以下の通り。

――会議でどういったことを確認したか。
「個人的に球団から宿題としていただいたことは、全体に伝えた方がいいと思ったので。まず、強いチームを作ること。当たり前ですけどね。あとは、王イズムを継承してほしいということ、最先端技術を入れた指導をしっかり行うこと。この3点はしっかり念頭に置きながら、チームを作っていくという話を全員の前で伝えさせていただきました」

「強いチームを作るにあたって、強い組織であり、魅力ある組織であるために、良い選手、誰からも愛される選手を育成していくというのも我々の仕事なので、そのために必要なことはなにか。それを原点に置きながら、全員が同じ方向を向くことが大切だという話をさせてもらいました」

「全ては『これは本当に選手のためになっているかどうか』『必要かどうか』『強い球団になるために本当に無駄なことはないか』というような議論になるべきだと思うので。自分の方に向かない、“私”の方に向かないことが大事かなと思う。携わっている各部署の人たちが全て、これがチームのためなのか、選手のためなのかという議論の出発点にしてくださいという話をしました」

「王イズムの点でいくと、1軍のプレーがそのまま2、3、4軍の手本となり、模範となるようなチーム作りをすることを約束させてもらった。『1軍選手のプレーを見てみろ』『昨日の柳田の走塁を見たか』というようなものが2、3、4軍に瞬時に落とせるようなチームを作るのが1軍監督の役目だと思う。個別の選手に対してはいろいろあるんですけど、全体としては1軍を預かる立場として、そういうチームをしっかり作り上げるという話をしました」

「あとはデータサイエンスを含めて、コーディネーターの役割が今年はかなり権限を持ちますので、コーチとコーディネーターとデータサイエンスの部門がしっかり連携を取りながら、選手への指導法であったり、強化プランであったり、そういうものをしっかり統一して、王会長の言葉にもあったように、しっかり共有しながら、選手が迷わないようにしていくことが大切なんで、そこをやっていきましょうという話ですね」

――首脳陣は選手ファーストであるべき。
「そうですよ。本当の選手ファーストって、この選手が良くなるにはどうしたらいいかということで議論を重ね、そういう環境作りをするのが本当の選手ファースト。選手のワガママを聞いて、選手が気分良くすることだけが選手ファーストではないですから。選手にプラスにならないなら意味がない。そういう思いで真の選手ファーストをしっかり目指せるチームであり、球団であるべきですよね」

――選手にはどんな発信をしていくか。
「ずっと大事にしていこうと言っているのは、主力選手が若い選手の手本になるということ。中心になる選手は、当然責任も大きいわけで、試合にまず出るということが基本になるべき。そういう面でも強い選手をしっかりと作り上げていくというのも大切だと思っています」

――王イズムについて何かスキーム作りも考えているか。
「ゲームの中では一般の人たち、ファンの目が向かないけど、チームにとってプラスを生んだプレーというのもあるので、その辺を見逃さないようにする。見えている部分だけじゃなくて、例えばの話ですよ。ゲッツー崩しで、点差が開いてるにも関わらず、柳田がファーストまで全力で駆け抜けたおかげで、ファーストに生き残り、その次のバッターが三塁打で1点入って、となったら、みんなその三塁打を打った選手を見ると思うんですけど、その前にその点差にも関わらず全力疾走した柳田がセーフになったから、その1点が入ったんだみたいな、ね」

「そういうところは2、3、4軍ですぐに共有できる。今はタブレットもあるわけですから、選手もほとんど見てると思いますけど、それをコーチ陣のミーティングで使えるような、そういうチームにするのが理想ですね。やっぱり上から下に良いものを伝えるのが理想です」

――トライアルアンドエラーという話もしていた。
「失敗を責めないことですよね。やったことによる失敗を責めるんじゃなくて、それによってエラーが出た時に次どうするか。合言葉は『次どうする』ですね。ミーティングっていうのは約束の場。終わったことをグチグチ言うだけの会議、これをやっている組織はあまり良くないですよね。だから、良くなかったら良くなかったで受け止めて、なぜ良くなかったかという前に、良くなかった事実を受け止めて、次どうするかが問題なんで」

「行き当たりばったりで言っても、なかなかエラーには気づかないんで、ある程度自分はこうしようというものがあった上で、チャレンジしたらエラーが見えてくるんで。そのためには、ある程度はこういった方針でやっていくとか、自分はこういう手法を使うとかっていうものがないといけない。それをした上で失敗したことに関しては、咎めないということが一番、次のトライアルに繋がると思いますね」

――そういった発想に至った経験があったのか。
「いや、特にないです。学んだことです」

――キャンプの組み分けでルーキーがA組にいない。
「倉野コーチの育成方針というのがあって、一番最初はB組の環境からスタートしてというのが彼の方針でもあったんで、そこは賛同しようと。廣瀬に関しては、別に野手はそこまではなかったんですが、他の選手が全員、即戦力で取ってきてるピッチャーが全員B組なんで、じゃあ廣瀬もB組から上がってこいよ、と。ちょっと廣瀬には悪いかもしれないですけど。まだ実際に見てないし、隣でやっていますから。推薦があれば、実際にどんどん呼びますし。そこは近くでやってる利点なので、入れ替えるときはちゃんと入れ替えます」

――高卒の前田悠投手もB組。
「前田(悠)に関しては別なんで。初日からブルペンに入ることはないですし、彼は特別育成プログラムが出来上がっているんで、それに沿ってやっていきます。その上で宮崎に連れていく理由としてはドラフト1位だから。この世界に平等はないんで、ドラフト1位で、球団が期待して、やっぱり大きなお金で契約をした選手をちゃんと一人前に育てるっていうスタートの時点で、まずこちらで、こちらと言ってもB組ですけど、倉野コーチの近くで預かって。他のピッチャーの即戦力の人とは全然ベースが違います。それを良しとしました」

――即戦力として期待の投手たちは徐々に上げていくことになる?
「徐々にですかね? すぐ報告は来るので。隣でやっているので、ブルペンなんか真横ですからね。こっちが見ようと思えば、いつでも見られるので。そこに関してはどっちかというとラグゼの環境を最初に味わえ、と。そこから這い上がれ、シェラトンはまだ早いというところです」

――山川選手がA組に入った。
「球団もしっかり調査しながら、フェニックス・リーグもずっと付いて行った中で、実戦から離れていたとしても、十分に1軍の戦力として期待できるっていうところからですかね」

――厳しい条件を課すこともある。
「ないです。チームのルールがあるんで、チームのルールはA、B、C、統一のルールは話はしたので。それをしっかり守ってもらう。そのルールの中で動き回るのは自由に動き回ってください」

――A組に入った育成選手への期待は。
「支配下が62人スタートと、去年に比べれば5人も少ない。去年は67人でスタートだった。育成選手50数人で3枠を争うのか、8枠を争うかではモチベーションが全然違うと思うので。そういう中で、より支配下に近いポジションだということを意識しながらのキャンプになるでしょうし、そこを奪い取れるようなアピールというか、我々にもそうですし、フロントに対しても、そういう姿を期待していますね」

――キャンプの練習スケジュールに変化は。
「初日は写真撮影があるので当然早いんですけど、2日目以降も、第4クールからちょっと早くなるので、もう第4クールに合わせてスタートしましょうかって。集合時間も15分ぐらいしか変わらないんで、だったら体を慣らすために、いつもよりは少し早い集合にして、早めにスタートして早めに終わるというキャンプにしたいなと思っています」

――全体練習にメリハリをつけ、個人練習の時間を取る。
「そうですね、それが一番強いです。選手によってやるメニューは違って当たり前なので、チームとしての全体練習はきっちりしてもらいますけど、それ以外は自分の不足を補う練習は、自分で考えたところでやるべき。もちろんそれに対しての助言であったり、練習メニューのアドバイスだったりはしますけど、何をするかというところは本人が一番わかるところなので、そういう時間にしっかり充ててほしいなと思います」

――レギュラー争いも厳しい。
「故障してしまったら、スタートラインに立てないので。目一杯いきながらも、年間通して戦える体を作るというのが一つキャンプの目的だと思うので、しっかりキャンプを完走してもらえれば一番いいです。と言いながら、オレ、キャンプせずに普通に打ってたからね(笑い)。その辺がちょっと難しいんですよね。晩年になると『キャンプいらんな』って思っていたんで。だからそこは若い時はやっぱり1年戦える体をキャンプ中に作るという、そういう思いがあったんでね。若い選手は特にそれをしてほしいなと思います」

――サインが出ないのは3番、4番だけ、と。
「必要な選手には当然、必要なものを求めますし、その狙いの練習も組みます。サイン出さないと言っても、走者にいることはあるんで、そういう選手たちもランナーの練習はさせますよ、当たり前ですけど。そういうふうにしながら、勝つためにするわけなんで、勝つためにバントする方が確率が下がるとか、エンドラン出す方が確率が下がる選手に出す必要はない。その選手たちには別にそういう練習は設けません」

――キャンプの練習に配分はあるか?
「スケジュールが決まっているんでね。どっかで落とし日みたいなのは考えるかもしれないですけど、メニューも今日、選手全員に行くんで。あとバッティングの組分けあたりも、31日には全員分かる。自分でプランを立てやすいように配慮はしていますよ。どこでどれぐらいのウエートを入れて、どこで体のケアに充ててというものを、何となく自分で決められるようなスケジュールにしているので」

――どういったキャンプにしていきたいか。
「1年戦うにあたって、すぐに戦い方は見えないんですけども、どの選手を中心で起用していくかっていう、まず最初の見極めの段階だと思います。キャンプはなるべくピッチャーを中心に見ようかなと思っているので、今までと動きが違うかもしれませんけど、先発ローテーションっていうところは、しっかり倉野コーチと若田部コーチと中田コーチとしっかり見極めながら示していきたいなと思います」

――城島健司さんがシニアコーディネーターに就任した。
「人数が多いんで、1軍から4軍までを統率できる、技術的にもそうですし、そういうポジションがなければなかなか難しいんで。通して見るっていうのは球団として必要だと思うんですよ。そこは現場もしっかり協力しながら、我々は入れ替わっても、球団の選手に対するアプローチは変わらない。より良いものを球団に残していくお手伝いはします」

――育成選手4人がA組に入った意図は。
「意図というか、実際チャンスなんでね。この大きな組織を預かる中で、彼らのモチベーション的にも誰か(A組に)入ってこないと、育成の数だけ多くて支配下になれないとなったらなかなかそれはね。そういう中では、しっかり目立ってくださいね、という思いを込めた。今年のいきなりの戦力として考えるとすぐに支配下になれるんですけど、そのためには見極める必要があるんで、それをしっかり自分の担当コーチに見てもらって、というところですね」

――山川選手の状態や調整の情報は入っている。
「この前電話で喋りましたよ」

――どんなことを話したのか?
「もう全然『いつでも行けます』という感じで。フェニックス・リーグ終わってもほとんど休まず、ずっと動いていたのでと言ってました」

――それもあってA組の方でいけると判断した?
「そうそう」

――山川選手の起用はDHではなくてファースト。
「もちろん。それは運用でDHに入ってもらう日もあるかもしれないですけど、基本、全選手守らないと。ウォーカーも外野手の練習をしないと」

――前田悠投手がA組に来る可能性は?
「ないです。と、思います(笑い)」

――即戦力と言われるB組のピッチャーは紅白戦に投げることはある。
「もちろん! 前田がキャンプ中にAに来ることはないでしょうね。今のプログラムではないです」

――A組が43人と多い。
「でも1軍を確約してる投手が8人いるから、実質争うのは15人なんですよ。和田、有原、藤井、松本、オスナ、モイネロ、ヘルナンデスか。ヘルナンデスは入ってないかな? 15人ぐらいです。15人の計算です。8人はもう開幕に合わせろって伝えているんで。ピッチャーは実質15人という認識でスタートしていますよってこと」

――キャンプ中の実戦はいつ頃から?
「第3クールに多分シート打撃が入るんじゃないかな。第4クールに紅白戦2試合。終盤は毎日試合なんで。6試合かな、紅白戦入れて。たしかそのぐらいだったと思います、7試合かな」

――開幕投手に関しては。
「全然何も考えていないです。あんまり派手な発表の仕方はしない。時計の前に立ったりしない(笑い)」

(飯田航平 / Kohei Iida)