「ガンちゃんと呼んで」は“仕込み”だった ドラ2岩井俊介と古澤スカウトの深い“絆”

ソフトバンク・岩井俊介(右)と古澤勝吾アマスカウト【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・岩井俊介(右)と古澤勝吾アマスカウト【写真:上杉あずさ】

古澤スカウトが惚れ込んだドラ2岩井の人柄「みんなに慕われていた」

 担当スカウトの「愛」が滲む中でプロ生活がスタートした。今月9日からファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」でスタートした新人合同自主トレ。汗を流す新人選手たちの傍で、担当スカウトたちがその姿を見守っている。スカウト陣は交代で選手たちのサポートのために筑後を訪れる。17日の第3クールから姿を見せたのが、古澤勝吾アマスカウトだった。

 古澤スカウトは2020年オフに現役を引退し、昨季からアマチュアスカウトに就任し、昨年がスカウト1年目だった。27歳と若いこともあり、新人合同自主トレではノックを打ったり、精力的に声を出したりして、選手を盛り上げていた。

「なかなか来んなと思いながら」と、古澤スカウトがやってくるのを心待ちにしていたのはドラフト2位の岩井俊介投手(名城大)だ。古澤スカウトにとって、岩井は初めての担当選手。岩井にとって、この日は担当スカウトの前での初練習。元気に動く姿を見た古澤スカウトは「元気そうでよかったです、まずは。怪我とかされたら、何しよんねんとかなるけど(笑)」と笑みを浮かべる。ドラフトの時も嬉しかったが、入団して動いている姿を見て感慨深そうだった。

「しっかりやることをやって、人一倍声出したり、そういう姿を見せていきたい。古澤さんにもいい姿を見せたいですし、アピールしていけたらなと思ってます」と意気込む岩井。自身の性格を「明るい系だと思ってます」と言う。イジりキャラでもあり、イジられキャラでもあるという右腕は自ら声を出すなど、積極的に周囲と絡む姿も印象的だ。

 スカウトが選手をチェックする上で、当然、性格面もポイントになる。「マネジャーとか、みんな(岩井の性格を)良いって言っていましたね。後輩が『いや……』とか言ってたら、性格に難があるのかな、とかちょっと陰険なのかな、と思うけど、裏方の子とか後輩もみんな『接しやすい』って言っていたので。みんなに慕われていたんですよ」。選手としての能力だけでなく、人柄も含めて惚れ込んでいた。

 だからこそ、プロの舞台でもたくさんのファンに愛されてほしい――。そんな思いが詰まった出来事がある。新入団選手発表会見での一幕。「ファンに何と呼んでほしいか」との問いに、岩井は「ガンちゃんと呼んでください」と答えた。実はこの答え、古澤スカウトの“仕込み”だった。岩井は生まれてこのかた「ガンちゃん」というニックネームで呼ばれたことはなかったと言う。

「『ガンちゃんって言ったれ』って古澤さんに言われたんです(笑)」と、岩井はドキドキだった入団会見を振り返る。古澤スカウト曰く、こんな狙いがあったという。「是非、ガンちゃんって呼んであげて下さい。岩井って(いう苗字の選手は)また出てくるかもしれないし、あだ名はある方がいい。俊介は笠谷俊介もいるからね。そこ大事!」。古澤スカウト自身、現役時代は「アミーゴ」の愛称で親しまれた。社交的な性格でファンサービスも率先し、多くのファンに愛されていた。担当選手も、ファンやチームメートに愛されてほしいという願いを込めてのアイデアだった。

 その発言のおかげか、入団後は岩井を「ガンちゃん」と呼ぶ人が増え、自身も「ガンちゃん」に反応できるようになってきた。自身も気に入っているといい「自分もいい姿を見せたい。人気が出るような選手になりたいです」と笑う。

 5歳違いと年齢も近く、明るいキャラクターもなんとなく似通っている2人。岩井が古澤スカウトの第一印象を「チャラ! 若っ! かっこいい!」と表現し、爆笑し合うほど、2人の関係は良い。今では何でも相談できる、頼もしい“兄貴分”的存在となっているようだ。

 古澤スカウトも大切な担当選手のため、先輩投手陣にこの時期の調整方法などを質問するなど、少しでも後押ししようと考えを巡らせる。「キャンプに入って中盤ぐらいに、身体の疲れが出てきてちょっと苦しくなってくる。でも(そういう時に)気持ちで『ちょっとアイツすごいな』っていうのが見られたりする。キツくなったり、打たれたりもするけど、そこから(が大事)」。岩井が気持ちで走れるタイプだと買っているからこその助言だ。

 期待も心配もあるが「自分のやるべきことをしっかりやる。高校生じゃないですから。即戦力で来てるんですから、自分である程度計画していかないとな」と、古澤スカウトは自身の経験や失敗も踏まえて叱咤激励する。プロでのスタートを切った岩井。古澤スカウトの期待と愛が、その背中を力強く押している。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)