2016年ドラフト組で最後の1人に… 三森大貴に募る危機感と覚悟「よりシビアに」

ソフトバンク・三森大貴【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・三森大貴【写真:荒川祐史】

ドラ1だった田中正義は昨季日本ハムへ、ドラ3の九鬼は戦力外となりDeNAへ

 同期の選手は誰もいなくなった。チームに残ったのは自分だけ……。プロ野球が厳しい世界であることを改めて痛感させられたソフトバンクの三森大貴内野手は、決意を新たに今季へと挑んでいる。

 三森は2016年のドラフト4位でソフトバンクに入団。今季がプロ8年目となる。この年は三森を含めた支配下4人と育成6人の合計10人が同期で入団した。ドラフト1位だった田中正義投手はFAで加入した近藤健介外野手の人的補償として日本ハムへ移籍。同3位だった九鬼隆平捕手は今オフに戦力外通告を受け、DeNAの育成選手に。育成の同期達も次々とユニホームを脱ぎ、現役としてプレーしているのはヤクルトの長谷川宙輝投手のみとなった。

 プロのキャリアをスタートさせた球団に今も残れているのは自分だけ――。「そういった意味では、ある意味よくやれているのかなという気持ちもありますし、だんだん年数も高くなってきましたし、より1年1年もっとシビアに結果を残し続けないと。いなくなった人がいる分、よりもっと頑張らないとな、結果を残さないと厳しいなという風に思います」と覚悟を口にする。

 今オフにチームを去った九鬼とは特に仲が良かった。「12月に同級生とみんなでご飯行ったりしました。(佐藤)直樹とか大津(亮介)とか。また、いい舞台で会えるように、と言いますか……。同期ってそんなに人数もいないですし、一緒にできたっていうことはすごい良かったです。まだまだ一緒にできるチャンスもありますし、お互いいい成績を残していければいいのかなと思います」。もちろん寂しさは募る。それでも現役を続けている以上、グラウンドでの再会を楽しみに頑張るしかない。

 このオフも例年と変わらず、黙々と1人で練習をこなしている。「まずは開幕にしっかりいられるように、というのが1番です」。昨季は開幕を2軍で迎え、悔しい思いもした。「(やることは)変わらないですけど、キャンプでしっかり勝負できる形、技術の面では探りながらやるっていうのはないのかなと思います。キャンプの時にはある程度、自分の技術もしっかり、これでいこうというものを持って行った方がいいと思います」と抜かりない準備を進めている。

 小久保裕紀監督が確約したレギュラーは柳田悠岐外野手と近藤健介外野手の2人のみ。「毎年のことなのであまり気にせずに、しっかりキャンプ、オープン戦で自分の持ってるものを出し続けていくしかないと思う。これはシーズンに入っても変わらないこと。今まで通りしっかりアピールしていくしかないかなと思います」。競争する立場である以上、キャンプは“調整の場”ではない。初日からアピール出来るように自覚と決意を持って、自主トレに取り組んでいる。

「自分のやりたいように、じゃないですけど、まずは自分。自分の技術を高めるのが1番かな、と。もちろんいろんな方に聞いて上手くなることもあると思いますけど、そこは自分にあったやり方で」。ライバルが多いのは事実だが、とにかく自分自身のレベルアップに集中するべく、単独でトレーニングに励む。

 良い時も悪い時も“心の波”をほとんど見せない三森だが、その胸の内は熱い。

「意外と最終的な目標っていうのはあまり変わっていないですね。試合に出ることが多くなった今に関しては、やっぱりホームランも打ちたいですし、打率も残したいし、出続けるためにって考えた時には、やはりプロ入ってきた時の目標に向けてっていうのは変わってないかなと思います」

 2017年のプロ入り時、三森はこう掲げていた。「走攻守全てで頑張ります」「トリプルスリーを目指します」。貪欲な思いは7年経っても変わらない。選手としての高みを常に目指すのが三森という男だ。

 変わったことがあるとすれば、試合に出るためのスタイルか。「まずは試合に出ないと始まらない。それに向けてはいろいろ変わりながらもやらないといけない。そこに対してはすごい自分の中で変化はあったかなと思います。こだわりを持ったとしても、試合に出られなかったら意味がないので」。試合に出るためであれば、ポジションやプレースタイルにはこだわらない。自分の居場所を掴むためには泥臭く奔走する。

 同期のホークスでの現役選手は1人になったが、嬉しい再会もある。同年の育成ドラフト1巡目で入団し、2020年までホークスでプレーしていた大本将吾氏がスカウトに転身して帰ってきた。「やっぱり嬉しいですよ」と三森は笑う。大本氏も「三森とは寮の部屋も隣でしたし、最後のホークスに残っている同期なので、1年でも長く活躍を続けてもらえたら嬉しい」とエールを送る。三森も心強いに違いない。思いと覚悟を結果で示すシーズンにしてみせる。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)