周東佑京のラッキーカラーは? 道具から見える素直さ…配色を決めた「占い師」の一言

ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

周東佑京が愛用するグラブメーカー「久保田運動具店」 担当の梅田歩夢さんが語る素直さ

 ソフトバンクの周東佑京内野手は、「久保田スラッガー(久保田運動具店)」のグラブを使用している。鷹フルは、同社でホークスを担当している梅田歩夢さんを取材。過去2回では周東との出会いや、感じた兄貴肌、失敗を許された出来事などを紹介してきた。最終回となる今回は、周東の人柄をさらに深掘り。「占い師」を通して体感した「素直さ」について迫っていく。

 梅田さんは1998年生まれで、2021年から久保田運動具店に入社した。16年間、ホークス担当を務めていた前任者からバトンを受け取り、2022年から本格的に現場に出るようになった。周東との出会いから、ちょうど2年が経過。最初は緊張していた関係性だが「話している感じというか。上手く言えないんですけど、話しかけてくる言い方とかが、僕ら年下からすると兄貴感を感じます。言い回しだとか、言葉の選び方とか」と印象の変化を語る。人柄を知れば知るほど、リスペクトを持って惹かれていった。

 梅田さんは、周東の人柄を「めちゃくちゃ素直な人だと思います」と表現する。周東が店舗を訪れた時、打撃面で助言を求められたという。「僕らは別に、プロでやっていたわけではないじゃないですか。でも『昨日、構えがこうなってなかった?』って聞いてくるんです。しかも次の日とかにそれを練習で試したりしていて、1回やってみるんです」と言う。もちろん本人の中で情報の取捨選択はあるだろうが、人によって接し方を変えないのも周東の魅力の1つだ。

 梅田さんが「僕、めっちゃビックリしたことが」と言うのが、春季キャンプでの出来事。周東はサブグラウンドで特守を受けていた。遊撃の位置で打球を受け、二塁に転送する練習を繰り返していた。その時に二塁で送球を受けていたのが梅田さんだった。梅田さんが学生時代に遊撃の経験があると知っていた周東は、真顔で聞いてきた。

「『ショートのゲッツーって、これ投げ方どうやったらいいと思う?』って普通に僕に聞いてきました」

 梅田さんも、本気で聞いてきているとは思わない。驚いた表情を浮かべていると「『お前学生の時にショートしとったやろ?』って。『え、マジで言ってるんですか?』って言ったら『マジよ。早く早く』って」と、周東に押し切られるように、自分なりの意見を伝えた。プロの経験もない裏方の1人である自分にも、本気で耳を傾けてくれる。梅田さんも「そんな人なかなかいないです」と、これも周東に惹かれる理由の1つだ。

「『こうじゃないですか?』って言ったら、1回1回『どう? 今できてる?』って聞いてくるんです。そんな人、なかなかいないですよ。コーチとかに言われていることがその選手にあって『ここを注意して見ていてもらえませんか?』って言われることはありますけど、シンプルにそうやって技術的なことを僕らみたいな一般の人に聞いてくることはなかなかないと思います」

 シーズンごとに周東の意見を吸い込んで、感覚に見合ったグラブを作っている梅田さん。グラブの配色は基本的に「任せる。センスで」と言われるらしい。そんな周東が、1度だけ具体的に色を指定してきたことがあった。2022年の5月、新しいグラブを2人で作ろうとしている時だ。「また『色任せる』って言われたんですけど『あ、待って。青にして。青系で』って言われました」と振り返る。その理由も周東らしくて、クスッと笑ってしまう。「ラッキーカラーが青って言われたらしいです、占い師に」。

【写真:竹村岳】
【写真:竹村岳】

 占い師にどんなことを言われたのかまでは、梅田さんも「わからないです」と言う。しかし、初めての周東からの具体的な発注。梅田さんも袖を捲って、いいグラブを作ろうと尽力した。「青をベースにして、ピンクとかの差し色は僕が決めたんです。ファンの人たちからの評判も良くて」と自信作だった。周東の反応は「『なんでお前いっつもこんな派手なん』って言われました」と笑うが、それを使って周東がグラウンドの上で全力でプレーしていることもまた、嬉しかった。

 2023年のグラブは「またお任せ」と言われたというが、2022年を通して少しずつ定着してきた“周東の青”。「ラッキーカラーって言われたわけですし、せっかくならもう1回青にしたいなって、僕が勝手に思ってまた青にしました」と外野用のグラブを作った。昨年の失策は三塁での1つだけ。確実に向上している守備力の裏側には梅田さんの努力と、リスペクト、ちょっぴりのユーモアがある。

 2024年も「色、なんでもいい。センス」と言われたそうだが「いろんなものを作っていますけど、青を入れながらって感じです」と明かす。選手の感覚の変化に応じて作り上げるグラブには、職人の技術と愛情が注がれている。選手会長となって先頭に立ち、4年ぶりの優勝を目指す2024年。周東がどんな色のグラブを使っているのかにも注目して、心から応援していたい。

ソフトバンク・周東佑京(右)と梅田歩夢さん【写真:本人提供】
ソフトバンク・周東佑京(右)と梅田歩夢さん【写真:本人提供】

(竹村岳 / Gaku Takemura)