衝撃を受けた“1日8000人”「冗談だろ?」 和田毅が18年間社会貢献を続けるワケ

ソフトバンク・和田毅【写真:山口比佐夫】
ソフトバンク・和田毅【写真:山口比佐夫】

「HEROs AWARS 2023」を受賞「びっくり」…18日に授賞式が行われる予定

 忘れられない衝撃を語った。18年間も続く活動、その動機の全てだ。ソフトバンクの和田毅投手が「HEROs AWARD 2023」を受賞。18日、都内での授賞式に参加する。「びっくりしました。本当に自分でいいのかなって。たくさん、いろんなことをされている方がいるので。びっくりしたのが率直な感想です」と思いを語る。活動を始めた動機から、衝撃を受けた出来事まで、これまでの活動を深く語った。

「HEROs AWARD」とは、日本財団がアスリートやスポーツに関する社会貢献活動の優れたロールモデルを表彰するもの。和田は2005年から自身の成績に応じて、発展途上国へのワクチン寄付活動を継続してきた。2022年には4か国に4万本近いワクチンを寄贈。表彰という形で自身の活動が評価され「自分が選ばれるわけがないと思っていたんですけど、野球以外のことで取り上げていただくのはすごくありがたい」と純粋に喜ぶ。

 2005年、和田が活動をスタートさせたのは24歳の時だ。バックボーンは小学校の時にあったと明かす。「幼少期から赤い羽根だとか、緑の羽根の募金活動とかが何に使われるんだろうなっていうの(興味は)はあって。ただ単に好奇心というか、将来的にこういう募金を、自分が働いたお金で募金ができるような大人になりたいというのは子どもの頃から思っていました」という。ベルマークも集めていた若き頃。年を重ねてもそんな気持ちが失われることはなく、好奇心はどんどん輪郭を帯びていった。

 プロ2年目の頃には、もう球団と意見交換を始めていた。盗塁の数に応じて車椅子を寄贈していた元阪神の赤星憲広さんの活動を、和田も「一番有名」と振り返る。チームの先輩でも城島健司さん(球団会長付特別アドバイザー)や井口資仁さんらが活動する姿を見て、気持ちはより加速した。球団から紹介されたのがJCV(世界の子どもにワクチンを 日本委員会)だった。

ソフトバンク・和田毅【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・和田毅【写真:荒川祐史】

和田毅が語る“夢”…引退後は自身のワクチンが届く国へ訪問したい

 当時の和田に、ワクチンに関する知識は何もなかった。「『なんでこんなワクチンを毎回打たないといけないんだ』『また注射?』みたいなイメージしか僕もなかったんですけど、これがそんなに大事なものなんだというのを改めて知りました」と今でも驚きを覚えている。ワクチン以外の選択肢も考えたが「『ワクチンって受けられないの?』っていうところからでした。日本では当たり前だったので、海外では受けられないのかって……」。決断に至ったのは、世界で命を失う子どもの数を聞いたことだった。

「最初、1日8000人の子どもが亡くなっている計算だと聞きました。『8000人って……』と思って、それは衝撃を受けました。冗談だろ? と思いましたけどね、すごい数なので。それが今、最近では減っているらしいですけど、でも、まだそれだけの人が亡くなっている。大きい小学校でも3校分くらい亡くなっているわけじゃないですか、1日に。これはまだまだ大変な問題ですし、それだけ子どもたちの未来、将来、可能性が消えているわけですから。こんな悲しいことはないです」

 完成したのが和田の「僕のルール」だ。「ワクチンを受けられずに亡くなる子どもたちがたくさんいるんだというのを知った時に、なんて恵まれていたんだと思いました。これを通じて寄付の活動が何かできないかなとJCVさんと相談してできたのが『僕のルール』なんです」。2022年を終えた時点では、通算で73万本以上のワクチンを寄贈。金額にすると約4500万円を超える。今季も21試合に登板して8勝6敗、7年ぶりに100イニングにも到達しただけに、さらに多くのワクチンを届けることができた。

「(活動の意義を感じる瞬間は)やっぱり継続することじゃないですかね。野球を辞めた後、ボールを投げることはできない。そういう意味でもルールは変わると思いますけど、なんらかの形で継続して、やっていくことが大事なことだと僕は思っています。継続してやっていけたら」

 自身のワクチンが届くような発展途上国を直接訪れたことはまだないという。「誘われもしましたし、行きたい気持ちもあるんですけど、シーズン中でもあったり、調整ができなかった」と頭を下げる。来年2月には43歳を迎え、毎年を「最後のシーズンになるかもしれない」という覚悟で戦っている。まだ想像はできない引退後のこと。「一緒にJCVさんとそういう場所に行って、子どもたちがどんな感じでワクチンを受けているのか、どんな風にやるのか実際に見てみたい」。和田の大きな夢の1つだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)