参加野手は1人…和田毅が考える“専用メニュー” リチャードも感謝する大先輩の優しさ

ソフトバンク・リチャード【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・リチャード【写真:藤浦一都】

1月の自主トレでリチャードは和田毅のもとへ“異色のタッグ”「自分を変える」

 ソフトバンクのリチャード内野手が13日、PayPayドームで契約更改交渉に臨んだ。現状維持の1000万円でサインした。自主トレは、パ・リーグ最年長でありチームの大先輩、和田毅投手のもとで行う。「和田さんは意識が高い方。すごくお世話にもなっていますし、キツいとも聞くので。自分を変えるためには来年、自主トレを和田さんとやるのは大いにありだと思ったので、お願いしました」と経緯を語る。(金額は推定)

 6年目の今季は22試合に出場して打率.115、0本塁打、1打点。8月上旬には9試合連続でスタメンを任されたが14日には登録抹消。8月24日にも登録されたが、今度は28日に2軍落ちなど、最後まで安定したポジションを築くことはできなかった。ウエスタン・リーグでは72試合出場で打率.225、19本塁打、56打点。4年連続で同リーグの本塁打王となるものの、1軍での開花を手繰り寄せることができずにいる。

 王貞治球団会長をはじめ、期待をかけられ続けて来季が7年目だ。自分を変えるために頭を下げたのが、野手でもない和田だった。シーズン中にも食事に出かけたことがあるといい、意外ではあるが、確かな信頼関係が2人の間にあることは間違いない。くすぶっている24歳のために、和田はリチャードの“専用メニュー”を用意しているという。リチャードが代弁する。

「和田さんは、ありがたいことに(メニューを)考えてくださっているそうで、一生懸命にやろうと思います。『リチャードは走れない』と言われちゃったので、その分はウエートだとか、他のことが多くなりそうです」

 自主トレとは、そのチームのリーダーのような選手がメニューを考案して、ホテルなども手配することが多い。和田のチームで言えば当然、Tシャツや帽子の作成という細かいところまで和田が請け負っている。“専用メニュー”についても「まだあまり詳しいことは聞いていないですけど、そんな感じのことを言われたと思います」という。参加する野手はもちろんリチャード1人。こんなにも手厚く面倒を見てもらえることに感謝して、自分を変えたい。

「打席での立ち振る舞いとか、技術はちょこっと教えてもらったんですけど、和田さんも投手なんで。そういうところは『自分でやったほうがいいと思う』というスタンス。打撃を崩すことなく、打席中でのアプローチがメインになる。すごくためになることばかりを言われました。自主トレでそれをいっぱい聞きたいと思います」

 マイペースなリチャードと、後輩を引っ張る和田。意外にも思える2人だが、和田自身もその関係性について「だからいいんじゃないですかね」と笑いながら表現していた。リチャードも「あれだけ地位も実績もある人ですけど、すごく足並みをそろえて話をしてくれる」と、42歳ながらの腰の低さをまたリスペクトしていた。ウエートトレーニングについての助言などをもらったこともあるそうだが、和田の言葉だからこそ、耳を傾けたくなる。

 4日から9日、球団との取り組みの一環としてリチャードは渡米した。ドライブラインにも訪れ、計測して明らかとなったのは“大谷級”であったこと。「データはすごく上位に入るくらいいい。大谷さんにも手に届くくらいのところにいる。すごくプニプニしたボールだったんですけど、僕が(打球速度)108マイルだった。大谷さんが115マイルとかだそうで、もう少しで手が届くと言われました。ここ(の施設に)に来た人の中でもトップだ、と」と、自信を深める期間となった。確かなきっかけは、すでに手の中に掴んでいる。

 来季から小久保裕紀新監督に生まれ変わる。「2年間、僕が1軍でダメだったので教えてもらった。本当に成長させてもらった。打撃面も守備面も、野球に取り組む姿勢とか、野球人としてのあり方をとても教えてもらった。あとは恩返し。あの人を胴上げすることだと思うので、なんとかその輪の中に入れるように1軍で結果を出せたらと思います」と、目をかけてもらったからこそ恩返ししたいも人一倍強い。

「来シーズンの目標は、まず開幕1軍。ホームラン王、ですかね。ホームラン王を取ったら優勝もすると思う。まずは自分のことをしっかりしたいと思います」。結果を出すことだけが和田への恩返しになる。誰よりも真っ直ぐに野球と向き合う和田から、プロとしての全てを学ぶ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)