「自分のことだけ考える」 選手会長を“降りた”意味…今宮健太が考える“レギュラー白紙”

「鷹奉祭」に登場したソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】
「鷹奉祭」に登場したソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】

小久保監督が明言「レギュラーは柳田と近藤」、競争に投げ込まれた今宮の胸中は

 突きつけられた“レギュラー白紙”に、どんな思いを抱いたのか。偽らざる本音だった。ソフトバンクは26日、PayPayドームでファン感謝祭「鷹奉祭」を開催した。今宮健太内野手は2年間務めた選手会長を、周東佑京内野手に託し「最終的に自分で判断した」と、鷹フルの単独取材に理由も明かす。肩書きを降ろして“1人の選手”になったことは、自分なりにもう1度レギュラーを奪い取るという決意の表れでもあった。

 今宮は今季、126試合に出場して打率.255、9本塁打、48打点。2022年には打率.296とキャリアハイの数字を残したが、成績を落としてしまった。チームも3位に終わり、リーダーとしても「自分がこのチームを引っ張れているかって言われれば、まだまだ未熟」だと責任を背負う。最後の最後まで、何かがチームには足りなかった。

 2010年の川崎宗則さん以降、ホークスの選手会長は「2年周期」が基本線となっている。今宮も2年務めただけに、今回の“降板”に驚きはなかった。その中で同じタイミングとなったのが、小久保裕紀新監督の就任。レギュラーは柳田悠岐外野手と、近藤健介外野手だけで「それ以外は自分で掴むしかない」とキッパリ言い切った。今宮はプロ14年で通算1480試合に出場。名実ともにチームを支えてきたが、このタイミングでの“レギュラー白紙”をどのように受け止めたのか。

「多分、個人個人でわかっていることですから。『来年、俺レギュラーで出られるわ』とか思っている人は、なかなかいないです。僕自身も(今年は)3割近く打った次の年でしたけど、それはその年で終わっていること。また来年、1からのスタートで競争しないといけない。キャンプにも合わせてヨーイドンで競争することは変わらないですから。より一層、来年は苦しい競争になると思います。自分の年齢も年齢ですし、若い選手もいるので、そこはしっかりと意識してやっていきたいと思います」

 圧倒的なレギュラーを筆頭として、各ポジションに「本命」「対抗馬」「ダークホース」が存在する。ファンやメディアからある程度の予想はされるものの、競争の渦中において“自分はレギュラー”だと、一番思っていないのが選手だ。「思っていないです。一般的に『あいつはレギュラー』と思っている人もいるかもしれないですけど、だったら今練習していないですから」と今宮も同調する。自分の座に“あぐら”をかくような選手が、この世界にいるはずがない。まずは開幕のグラウンドに立つことだけに集中して、オフを過ごしている。

 選手会長を降りたことにも「大きくメディアには言えないですけど」と前置きした上で、思いを語る。「正直、自分のことだけを考えてやっていかないと。あと自分がたとえば8年やるとか、そんな保証はない。来年クビにもなるかもしれない中で、もちろんチームのことも考えますけど、自分のことだけを考えてやっていく。そこだけを考えてやるのが、僕にとっては1つの手なのかなと」。2年周期が基本線とはいえ、このタイミングでバトンを託すことが今宮にとっても理想的だった。

 勝敗を背負うチームリーダーが発した「自分のことだけを考える」という言葉。今宮は「自己中ですけどね」と笑ったが、プロ野球選手としては当然の考えだ。誰かがグラウンドに立てば、誰かがベンチに座る世界。常に勝利と敗北が存在し、選手1人1人には生活が掛かっている。今宮も2年という任期を果たしたことで、もう1度、1人の選手として競争に挑みたかった。

ソフトバンク・今宮健太【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・今宮健太【写真:荒川祐史】

 2013年に初めて規定打席に到達した。若手時代から将来的なリーダーとしての役割を期待されてきた中で、選手会長という肩書きが初めてついてきた。「発揮されるところは(選手会長では)そんなになかったですけどね」と話すものの「勉強になったことはたくさんあった。そういう経験を生かしながら、しっかり後輩と。僕らがサブ的な感じになってやっていけたらなって思います」。自分だけのポジションを確立させる中で、新会長となる周東を筆頭に、若手たちの模範であり続けるつもりだ。

 自主トレは今季も北九州で行う。楽天の村林一輝内野手、西武の児玉亮涼内野手らとの予定だ。過去にはかなり人数を絞って行った経験もあったが「今年も人数を絞りましたけど、大して(自分も)いい結果が出ていないので、どっちでもいいかな」と背景を明かす。村林は8年目の今季、キャリアハイの98試合に出場して打率.256、2本塁打、32打点。「三井ゴールデン・グラブ賞」でも遊撃部門で7票を集めるなど、確実に芽を出したシーズンだった。

「村林は僕の“師匠”ですからね。あれだけ(守備も)上手いとわかっていても、サブで出ていた時はそこまでみんなも(上手いと)思っていなかったかもしれないですけど。ああやってレギュラーとして出始めたらね。僕らも、上手いことはわかっていましたから。そこはお互いに見ているところもありますし、バッティングもあいつの方が打率も高いですからね」

 後輩からの刺激をしっかりと受けていた。川瀬晃内野手は参加しない予定だという。小久保新監督も「サードでは考えていない」と話すように、ショートで勝負をすることになりそうだ。今宮も「自分でやると言っていました。お互いにショートを狙うわけですし、いいんじゃないですか? 晃は晃で、自分でやらないといけない年齢ですから。自分でやることでたくさん勉強にもなります」と、川瀬を“1人のライバル”として心からリスペクトしている。来年の2月1日、横一線で勝負をかける。

「監督が変わったこともきっかけになりますし、本当に厳しい監督なので。もう1度、チームとしても原点に戻れるように。自分たちは挑戦者なので。3年、(優勝から)遠ざかっていますから。僕も、ギーさんもそうですけど、認めているところ。もう1度、歓喜っていうのを味わいたいです」

 今の自分がレギュラーだとも、今のチームが常勝軍団だとも思っていない。失ったものを取り戻そうとする今宮の表情からは、覚悟だけが伝わってきた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)