近藤健介はデータ野球の“先駆者” 球団のドライブライン導入…長谷川勇也さんと共闘を誓う理由

「ベースボールキッズ2023」に参加したソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】
「ベースボールキッズ2023」に参加したソフトバンク・近藤健介【写真:竹村岳】

熊本で行われた「ベースボールキッズ2023」に参加 西川龍馬の移籍に抱いた思い

 今まで積み重ねてきたことがあるから、球団の狙いも具体的に感じ取ることができた。ソフトバンクは23日、熊本・リブワーク藤崎台球場で野球教室「ベースボールキッズ2023」を行った。参加した近藤健介外野手は、子どもたちとの貴重な交流を楽しんだ。今秋でのキャンプを通して、球団が推し進めている“データ革命”を、近藤はどんな思いで見つめていたのか。

 2日から17日まで行われた秋季キャンプ。投手は筑後、野手は宮崎と初の縦割りキャンプが実施された。米国から「ドライブライン・ベースボール」のスタッフを招き、選手の動きを徹底的に計測。数値化することで投球、打撃における自分の課題を洗い出し、克服のためのドリルを与えられる。科学的なアプローチで、選手の技術向上を図る秋となった。

 これまでも近藤は、データからのアプローチを行っていた。3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、練習中から打球速度の計測が行われており、世界一に輝いてチームに復帰すると、すぐさま「打球速度、測りませんか?」と提案。練習中からでもトラックマンが設置されるようになり、成績はもちろん、さまざまな面でチームに影響を与えてきた。

 秋季キャンプでは首脳陣ではなく、球団が主導して練習メニューなども決めていった。時系列だけでいえば、近藤の取り組みを球団が追うようにスタートさせた。近藤は秋季キャンプには参加していなかったが、全体としての取り組みはどのように映っていたのか。

「1つの引き出しを球団が与えてくれたと思います。それを掴むのか、掴まないのかは選手次第だと思いますし。そこに理解して取り組むことが大切なので、興味を持って取り組んでくれたらと思いますけど、きっかけになることはかなりいいことだと思います」

 21日、球団納会ゴルフで近藤は小久保裕紀新監督と同組で回った。その際、指揮官も「彼(近藤)もドライブラインに行っていて、課題がハッキリとするのはいい点だと話していた」と信頼を寄せていた。シーズン中にはスコアラー陣も「(近藤選手は)打球速度を気にして見ています。違うベクトルでの近藤選手の野球、データの見方がいい具合に(他の選手に)流れていけば」と期待していたように、誰よりもデータを頼っていたのが近藤だ。そんな近藤が球団の取り組みを「かなりいいこと」と言うのだから、春先以降、結果に繋がっていくことに期待してしまう。

小久保裕紀監督と話を交わす長谷川勇也さん【写真:竹村岳】
小久保裕紀監督と話を交わす長谷川勇也さん【写真:竹村岳】

 ホークス入団の決め手ともなった“師匠”の存在は、来季も頼もしい。今季までの2年間、1軍で打撃コーチを務めていた長谷川勇也氏は2024年から動作解析を担当する「R&D」に配置転換となった。ユニホームを脱いだ長谷川氏も「やるなら今だなと思った。バッティングを良くしたい、良くなってほしい気持ちは何も変わっていない」と、自ら新しい領域に飛び込んだ。

 昨オフに日本ハムから海外FA権を行使してホークス入りした近藤。入団交渉に同席するほど信頼の固かった2人の関係性は、来季は少し形を変えることになった。長谷川氏の挑戦に近藤も「色々話をしていても、常にバッティングを追求している。選手にどう伝えたらいいのかっていうのも考えていると思いますし、僕もそうですけど、またわからないこと、新たな発見を教えてもらえたら」と、2024年以降も力強く手を取り合っていくことになりそうだ。

 22日、オリックスは広島から国内FA権を行使した西川龍馬外野手の獲得を発表した。近藤にとっても自主トレをともにする愛弟子で「本人も悩んだと思います。新たな場所でいろんな発見もあると思いますし、いいことなんじゃないですかね」と一報を受け取った。リーグ4連覇を目指すオリックスへの移籍で、最大のライバルになることも間違いない。「自主トレも一緒にやっていて龍馬の能力もわかっている。敵になって嫌ですけど、切磋琢磨しながらですね」と苦笑いで話していた。

 近藤は今季、全143試合に出場して打率.303、26本塁打、87打点、出塁率.431。本塁打王、打点王、最高出塁率の3冠に輝いだ中で、唯一逃したのが首位打者だった。同じ右投げ左打ちのヒットマンで、今季打率.305を記録した西川は、タイトル争いという意味でも手強い相手になりそう。「タイトルは本当に1年間怪我なくやって、最後に(ついてくる)って感じだと思う。まずはずっとグラウンドに立ち続けて、お互いにチームを引っ張って行けたら」と前だけを見た。

 柳田悠岐外野手とともに、すでに小久保新監督からレギュラーとして指名を受けている。今季と同様、自分自身の成績と徹底した準備でチームを引っ張り、首位奪回の先頭に立つ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)