【連載・周東佑京】12月は単身渡米…いつかメジャーに「行きたい」 初めて口にした憧れの中身

ソフトバンク・周東佑京(写真は侍ジャパンの時のもの)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・周東佑京(写真は侍ジャパンの時のもの)【写真:荒川祐史】

ドライブラインに触れた「根本的にフィジカルが弱い」、来月の自主トレの予定とは

 鷹フルがお届けする主力選手の月イチ連載、周東佑京選手の「11月後編」です。今回のテーマは「メジャー」です。秋季キャンプでの取り組みで「ドライブライン」に本格的に触れている周東選手。初めて、明確に口にしたメジャーリーグへの憧れの思い。興味が生まれた瞬間とは? 自分自身の足に、確かな可能性も感じていました。

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 今秋のキャンプで、ホークスは「ドライブライン・ベースボール」の関係者を米国から招いた。投手も野手も、計測からフィードバックまで行われる。自分のフォームを科学的なアプローチから数値化し、どんな動きをするべきか、選手1人1人によって適切な動作までが明確となった。周東も「発見は、やりたい動きが根本にあって、その動きの原因がわかりました。体の使い方のところです」と頷く。

 これまで話を聞いたことはあっても、測定したのは初めてだった。「根本的にフィジカルが弱いので、そこの数値をまずは上げないといけないと思いましたし、数値が上がれば、自然と他の部分も上がってくる」。近年はトレーニングの成果もあり、体も少しずつスケールアップしてはいるが、測定をしても改めてフィジカルが自分の課題であることを思い知ったようだ。

 来月には単身で渡米して、もう1度本格的にドライブラインに触れる予定。球界のトレンドをしっかりと自分のものにする。成長のヒントがそこにあると周東自身が信じている。「今やっていることの延長ですね。より良くするためにはどうしたらいいのかっていうのを考えながら、やっていきたいと思います」。単身での渡米で、英語でのコミュニケーションにも「なんとかなるでしょう」と笑う姿も周東らしかった。

 今年の3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも出場して、「侍ジャパン」の世界一に貢献した。海の向こう側に触れる機会がどんどん多くなる中で、日本を代表する“スピードソルジャー”も夢と興味を膨らませている。通用するのか、しないのか。何年先になるのか。実力も環境も、条件面も1度全て置いておいて、周東自身がメジャーリーグに憧れを抱いているのか、個人的な思いだけを聞いてみた。即答だった。

「行きたいですよ。需要があるなら、行きたいと思います」

 群馬県で生まれ育ち、大学は東農大オホーツク大を選択した。プロへの思いを抱き始めたのは大学時代だったが「なれたらいい」という程度のものだった。そんな周東が結果を残し、6年目のシーズンが終わった。今季は36盗塁でタイトルを獲得。メジャーへの興味が生まれたのは「WBCの影響もありますけど、昔からというか、メジャーを見始めてからやっぱりカッコいいなって思うようになりました」と語る。大谷翔平投手(エンゼルス)とプレーした影響もあり、シーズン中からロッカーのテレビにメジャーの中継が映っていれば、自然と目を奪われるようになっていた。

 一番近くに、刺激をくれる選手がいたことも大きかった。「千賀さんとしゃべる機会がすごく多いので、そういう話はさせてもらっていました」と、メッツの千賀滉大投手から影響を受けたことを認める。千賀といえば、2017年オフからポスティングシステムを利用してメジャー挑戦を訴え続けた。結果的に2022年オフに海外FA権を行使して海を渡ったが、メジャーへの熱い思いを抱き続けた先輩が隣にいた。

メッツ・千賀滉大【写真:ロイター】
メッツ・千賀滉大【写真:ロイター】

 千賀は1年目の今季にいきなり12勝を挙げて、新人王の最終候補にまで残る成績を残した。シーズン中も連絡を取っていたといい「柊太さん(石川投手)が電話している時に入ったりして。あとは普通にLINEもして、聞いてみたりしています」と明かす。「新鮮というか、メジャーリーガーと自分たちの違いって話をすごくしてもらったり、そのためにはどうしたらいいのか、千賀さんがどういうことをしているんですかっていう話もしました」と、プロ野球選手としての気持ちがくすぐられるような話ばかりだった。

 今季、ナ・リーグのMVPに輝いたブレーブスのロナルド・アクーニャJr.外野手は打率.337、41本塁打、106打点、73盗塁をマーク。史上初の40本塁打&70盗塁を達成し、大谷とともに満票でのMVP受賞だった。盗塁における周東のキャリアハイは2020年の50盗塁。単純に試合数も、牽制の回数制限などルールも違うだけに比較もできないが、リスペクトの中にも、意地のようなものも感じた。

ソフトバンク・周東佑京(写真は侍ジャパンの時のもの)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・周東佑京(写真は侍ジャパンの時のもの)【写真:荒川祐史】

「(73盗塁は)すごいですね。でも向こうとこっちでは、ルールが違います。逆にというか、よくあれで怪我しないなって思います。70個走って怪我しないことがすごいと思います。そこですね、70個は走れるかもしれないですけど、怪我しないで1年間っていうのがすごいです」

 過去に日本からメジャーに挑戦した選手といえば、投手として圧倒的な成績を残した選手や、バットで結果を出し続けた選手が印象深い。周東のようなスピードスターが海を渡れば、前例のない挑戦にもなるはずだ。「行きたいなって思います。やれるかやれないかじゃなくて、行きたいなって思います。(足が通用するのかも)楽しみですね」と、自信ものぞかせる。2020年には13試合連続盗塁という世界記録まで打ち立てた。今はもちろんホークスのために全力で戦う。その中で抱く夢が、どんどん自分の中で大きくなっている。

 ホークスからメジャーに挑戦した選手で、ポスティングシステムを利用した例はない。ほとんどの先輩が海外FA権で海を渡っていっただけに、周東が挑戦する時には30代になっているだろう。夢と目標を見失うことなく、一瞬一瞬を大切に走り続けていてほしい。

ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】

(竹村岳 / Gaku Takemura)