【連載・周東佑京】20分の“最後の電話”…移籍を知った高橋礼に伝えた言葉とは

ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】

高橋礼&泉圭輔が巨人にトレードで移籍「そういう年になってきたんだな」

 鷹フルがお届けする主力選手の月イチ連載、周東佑京選手の「11月前編」です。今回のテーマは「同級生」です。2023年の戦いを終え、このオフの編成で1995年組の同級生が4人、ホークスを去ることになりました。巨人にトレードで移籍することになった高橋礼投手には、周東選手が自ら連絡を取ったそうです。2人の間での“最後の言葉”とは――。周東選手自身は自らを「亀」とも表現していました。

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 8人いた同級生。来季を支配下として迎えるのは、4人だけとなった。今オフの戦力整備で上林誠知外野手、椎野新投手、古川侑利投手が戦力外通告を受けた。今月6日には高橋礼投手と泉圭輔投手が巨人に交換トレードで移籍することが発表された。同級生たちがそれぞれの人生を歩むことになり、周東も「寂しいなと思いましたけどね。そういう年になってきたんだなって実感しています」と言葉少なに、一報を受け取っていた。

 トレードとは、両球団において「欲しい」という意見が一致して成り立つもの。環境がガラリと変わることで、選手として何倍も成長を遂げた選手は過去に何人もいる。周東も「2人(高橋礼、泉)にとっては『欲しい』って言ってもらえるチームでやる方が、選手としてもいいことだと思います」と背中を押す。「自分の球団から評価されることはありますけど、他の球団からも評価してもらうって言うのは嬉しいこと」と、移籍する2人の野球人生が少しでもいい方に向くことを祈っていた。

 高橋礼には、移籍を知って自ら連絡をしたという。「周りの選手からも聞いていた」と、周東なりにトレードの噂はなんとなく知っていたそうだ。「僕、意外と誰とでも話しますから」と、20分ほどの電話。どんな言葉を、高橋礼には伝えたのか。

「寂しいなとは言いましたけど。『最後まで同級生会やらなかったね』って話もしましたし、あとはいろいろです。でも野球を辞めるわけでもないですし、僕らが関東に行く時だってあるし、そういう時にご飯行けたらいいんじゃないかって話もしました。キャンプだって、お互いに宮崎ですしね。会えなくなるわけではないですから」

ソフトバンクの仲間に挨拶に訪れた高橋礼(左)と泉圭輔【写真:竹村岳】
ソフトバンクの仲間に挨拶に訪れた高橋礼(左)と泉圭輔【写真:竹村岳】

 周東は泉とも「仲良かったですよ」と言う。プライベートでもゴルフに出かけたり、趣味の話に花を咲かせた。「ああいう感じなので、よくイジったりもして。年も1個下ですし、あんまり“後輩後輩”していないですから。同じ年みたいな感じで話していました」。今も記憶に残るのが、2022年10月2日のロッテ戦(ZOZOマリン)。泉が逆転3ランを浴びた時、自分もグラウンドには立っていた。1年以上が経った今、改めて周東にとって“10.2”はどんな経験だったのか。

「忘れることはないと思います。あの1敗があって、今年もあまり成長できていないって感じました。忘れることのない、忘れてはいけない出来事だと思っています」

 残酷ではあったが、今季の終戦も似たような形となってしまった。10月16日、ロッテとのクライマックスシリーズ第3戦(ZOZOマリン)。3点をリードした延長10回に津森宥紀投手と大津亮介投手が4点を失ってサヨナラ負けとなった。スタンドへの挨拶を済ませると、肩を落とす2人に最後まで隣に立っていたのが周東だった。後輩2人に寄り添えたのも、“10.2”の経験があったからだ。

「あそこで打たれたからって、死ぬわけでもない。ただ今年のシーズンが終わったというだけなので。あの2人はまだ若いですし、若いうちにああいう経験ができたのも今後につながると思いますし、悲観する必要なんてないと思います。周りになんと言われようと、あそこで投げたのは2人。文句を言う人だっているかもしれないですけど、それができないなら、本当に何も言わないでほしいなって思います」

斉藤和巳投手コーチに肩を抱かれてベンチに戻るソフトバンク・津森宥紀(中央)【写真:荒川祐史】
斉藤和巳投手コーチに肩を抱かれてベンチに戻るソフトバンク・津森宥紀(中央)【写真:荒川祐史】

 2017年育成ドラフト2位で東農大オホーツクから入団した。昨年の現役ドラフトで大竹耕太郎投手も阪神に移籍。同期入団の同級生は、周東1人だけになった。プロ初出場は4月7日のロッテ戦(当時ヤフオクドーム)。「今となってはですけど、僕が(1軍昇格は)一番最後だったので。“亀”が勝ったのかなって」と笑う。球界屈指の俊足だが、自分自身はウサギではなく、亀だと表現していた。

 1年目だった2018年はまだ育成選手として、ファームで汗を流していた。同年、上林は1軍で全試合に出場。22本塁打を放ち、戦力として存在感を示し続けていた。「僕が入った時から1軍で試合に出ていた。野手は僕と誠知と2人だったので、誠知と一緒に1軍の試合に出たいと思っていました」。1歳年上だった釜元豪外野手や、上林から道具をもらっていた下積み時代。上林のことも「雲の上の存在」と、周東にとっても追いかけてきた背中だった。

「僕はまだまだやれると思っていますし、敵にしたくないと思っているくらいです。寂しいなっていうのはありますけど(プロ野球は)こういう世界なので。僕自身もいつ来るかわからないですし、いい顔してグラウンドで会いたいなと思います」

 まだまだ移籍先が決まっていない選手もいる。周東にとっても、秋季キャンプを過ごしている今。自分のレベルアップにはもちろん集中しているところだが「みんな決まってほしいですよ。そういう気持ちです。周りも気にしている余裕もないですけど、大丈夫だろうと思っています」と、同級生の去就を頭の片隅に置く。いつクビを切られてもおかしくない世界。どんな進路を選ぼうと、同級生で1軍の舞台を目指した気持ちは、絶対になくならない。

 今春の宮崎キャンプ、同級生会が企画された。しかし、野手である周東と上林の都合が合わず。“同級生の投手会”となった。個性の強かった1995年組。それぞれの道で、ホークス戦士たちが輝きを放ってほしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)