学びの秋に目を輝かせている。野手が宮崎、投手が筑後で行っているホークスの秋季キャンプ。第4クールが始まった14日から筑後の投手キャンプに渡邉陸捕手が、谷川原健太捕手と共に合流した。キャンプで学んだ“フレーミング”を、実際の投手のボールを受けて実践するために宮崎を離れたのだが、早速、その成果に手応えを感じていた。
合流した14日にブルペンで投手陣のボールを受けた渡邉陸は「いつも以上に、ブルペンが楽しかったです」と清々しい表情だった。ホークスはこの秋、独学でフレーミングを研究してきたキャッチングコーディネーターの緑川大陸(みどりかわ・ひろむ)さんをキャンプに招へい。オフの自主トレでは甲斐拓也を指導した緑川さんから、捕手陣は今までとは違うアプローチで技術を学んだ。
宮崎で取り組んできたのは「意識付けみたいな感じ」と、重いボールや角度のついた傾斜台を使っての捕球練習や、マシンのボールを捕るなどして感覚を磨いた。縦割りキャンプのため、宮崎で実際に投手の球を捕る機会はなく、渡邉陸と谷川原、高谷裕亮バッテリーコーチは本来の予定を変更し、第4クールのみ筑後でキャンプを送ることになった。
早速、ブルペンで育成の三浦瑞樹投手のボールを受けた渡邉陸。投げた三浦からも「すごく気持ちよく投げられた」と反応があったという。
「『自分の球が生きているというか、伸びているというか、そういう感じがする』って(三浦が)言っていたので、 やっぱりそういう感じ。(ミットが)下から行く分、こうなる(上から被せる)ことはないじゃないですか。だから伸びているように見えるって言ってました」
「捕るってことに関してはそんなに変わらないですけど、緑川さんに教えてもらったことをちょっと意識するだけで、ピッチャーから見たらそういう捉え方をしてくれたんで。ちょっとでもストライクって言ってもらえるようにやっているので、ピッチャーのためになればいいなとは思います」
まだ、基礎を学んだばかりで、試行錯誤の段階ではあるが、ブルペンを見守った高谷コーチも「僕もびっくりしていて。こんなに違ったんだって」と、投手陣のあまりの反応の良さに手応えを感じた様子だった。
「やっぱり日本の野球ってワンバウンドを止めるとか、盗塁を刺すっていうところに重点が置かれがちなんですけど、キャッチャーを数値化していくと、試合の勝敗に一番直結してくるのがフレーミングだと言われて。そういうのがデータで出ているらしいんですよ。フレーミングで勝敗が変わるって」
こう語る渡邉陸はフレーミングの大切さを改めて知ったという。この技術をマスターすることで、少しでも投手を助けることができ、ひいてはそれが自分を“勝てる捕手”へと近付けてくれる。
これまで捕手だけでなく、ユーティリティとして重宝されてきた谷川原は来季、捕手に専念することが決まった。大きな期待をされながら、今季は1軍昇格のチャンスを得られなかった渡邉陸にとって、手強いライバルとなる存在だ。
谷川原の捕手専念にも、渡邉陸は「去年ぐらいからキャンプでもタニ(谷川原)さんはキャッチャーでやっていたんで、そんなに特別めちゃくちゃ変わったなっていう感じはしないですね。お互い高め合っていけたら。自分がレベルアップするだけと思ってるので」と自分自身に矢印を向ける。
2人とも“打てる捕手”として期待は大きいが、「キャッチャーだからとかじゃなくて、とにかくチーム内で打つ方でも結果出して、タニさんも打って結果を出したら、それはそれで、自分としてもレベルアップしているんで、それはそれでいいかな。変に意識するっていうよりか、もう自分のレベルアップです」と誓う。小久保新体制で迎える2024年。渡邉陸だって、負けるつもりはない。