来季の“リリーフ専念”通達に胸中は? 先発か中継ぎか…藤井皓哉が抱えていた迷い

ソフトバンク・藤井皓哉【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・藤井皓哉【写真:荒川祐史】

「1年間、役割が変わらずにやっていける方がいいパフォーマンスは出せる」

 早々に役割は定まった。ソフトバンクの藤井皓哉投手が来季はリリーフとして起用されることになった。投手陣が行う筑後キャンプ第2クール最終日となった8日、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が「(藤井と松本裕樹は)中継ぎで話をしています。藤井がまた来年先発に挑戦するということはないです。それは藤井も理解しています」と明らかにした。

 藤井は今季、先発に転向して開幕を迎え、シーズン序盤で5勝(3敗)をマークした。脇腹の怪我から復帰するタイミングでリリーフに配置転換となり、後半戦は勝利の方程式を担った。勝ちパターンの一角として替えの効かない存在だっただけに、倉野コーチは「彼はなんだって対応してくれると思うんですけど、チームとしてこうだ、という話を監督と決めて、本人も納得して、目標に向けてやってくれると思います。チームが優勝するためには、あのピースは絶対に外せない」と全幅の信頼を寄せた。

 倉野コーチと星野順治コーディネーターと3人で行った面談の中で“中継ぎ専念”を伝えられた。その時を藤井はこう振り返る。「必要としていただいてるんで、そこは凄くありがたいなと思います。1年間、役割が変わらずにやっていける方が、いいパフォーマンスは出せるのでっていう話は、僕からもさせていただいた中で、チームとしては『後ろで』っていう話だった。そこはしっかり受け止めて、チームのために頑張っていきたいなと思います」と明かした。

 今季は本人の希望もあって先発に転向し、開幕ローテ入りを果たした。しかし、怪我で離脱すると、シーズン途中から昨季任されていた中継ぎに戻る形となった。先発への思いというのは、藤井の中でも常にあった。その一方で「後半戦のいい場面で投げるっていうのは、リリーフでしか経験できないことだなと思いましたし、正直、自分でも迷ってたというか……。(先発とリリーフ)どっちがしたいと、ハッキリは思えていなかったのはあります」とも。自身の中でも気持ちは揺れていたという。

 そんな中で「絶対に外せない存在」と小久保裕紀監督、倉野コーチら首脳陣に求められてのリリーフ専任。「必要とされているところでやっていくっていうのは、僕の中でもベストだと思っている。その中で最善を尽くして、結果をしっかり出せるようにやりたい」と決意を固めた。そして、藤井は3者面談で伝えられ、心を動かされたある言葉の存在を明かした。

「引っ張っていくような選手になってほしい」

 藤井は正直、驚いた。「自分の中でそんなことは本当に考えてもいなかったですし『引っ張っていく』とか、まさか自分がそう言われるとは思わなかったので。すごくびっくりしました。でも、年齢的にも、そうやっていかなきゃいけないのかなっていうのはあるかなと思います」。自身が求められている役割の大きさにハッとさせられた。

 2020年オフに広島を戦力外となり、翌年は四国ILの高知でプレー。2022年に育成選手としてホークスに加入した。支配下を勝ち取って勝利の方程式を担い、チームに欠かせない戦力になった。とはいえ、ホークスでは今季がまだ2年目。自身が「引っ張っていく立場」という考えには至らなかった。積み上げた信頼は、2年間の努力と結果の賜物だろう。

 とはいえ、後輩たちを引っ張っていくためには、自分が結果を残すことが大前提だ。「自分が結果を出さなきゃ、そういうのはついてこないと思うので、まずは結果を出して、信頼される投手になることを目指していく中で、少しでも若い選手を引っ張っていけるように、頑張っていきたい」。自らに課される責任と役割に、引き締まる思いだった。

「正直、怪我もありましたし、中途半端な1年でした。でも、自分の中では去年より数字は落ちていますけど、ゲームのいろんな状況を見れた中でピッチングできてるってのもある。自分としてまだ上手くなれる可能性があると感じられたというか、さらに良くなるっていうふうに感じられたものが最後の方はありました」

「怪我をして、投げられない時期があって、やっぱり野球選手である以上、1軍で投げてナンボだなと思った。まずは怪我をしないようにしっかりトレーニングをしていきたい。その中で、1番はフォームの再現性というか、波があるので、そこの波をなくしていけるようにやっていきたいと思います」

 首脳陣が固めた“リリーフ専念”をポジティブに受け止め、より一層の自身の可能性を見出すためにも、充実したオフを過ごすつもりだ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)