「一緒にプロを目指さないか?」 鷹ドラ2岩井俊介の転機になった元中日右腕からの誘い

福山龍太郎アマスカウトチーフ、2位指名を受けた名城大・岩井俊介、古澤勝吾アマスカウト(左から)【写真:福谷佑介】
福山龍太郎アマスカウトチーフ、2位指名を受けた名城大・岩井俊介、古澤勝吾アマスカウト(左から)【写真:福谷佑介】

京都翔英高時代は控え投手…3年夏は登板機会のないまま京都大会3回戦で敗退

 プロ野球選手になる実感が湧いてきた。ソフトバンクは10月31日、ドラフト2位で指名した名城大の岩井俊介投手に指名挨拶を行った。福山龍太郎アマスカウトチーフと古澤勝吾アマスカウトが同大学を訪問。約30分、挨拶を受けた最速156キロ右腕は「今日、指名挨拶があって、さらに実感が湧いてきた。プロ野球選手になる、という意識をもっとして、日頃の生活から過ごしていきたいと思っています」と表情を引き締めた。

 愛知県高浜市の出身で、高校は京都の京都翔英高へ。1年生の頃からベンチ入りしていたものの、3年生でも控え投手だった。最後の夏は登板機会のないまま、京都府大会3回戦で敗退。全国的にも無名の選手で、プロ野球は遠い夢だった。転機となったのは名城大への進学、そして、元中日投手だった山内壮馬コーチとの出会いだった。

 高校時代は控え投手で、プロには到底、手が届きそうになかった岩井に入学前、山内コーチはこう語りかけたという。「名城大で一緒にプロを目指さないか?」。なんの実績もなかった岩井にとって「気持ちが変わった」という大きな一言だった。球の速さを高く評価してくれた名城大に進み、山内コーチと二人三脚で努力してきたことで、次第に右腕を大学球界でも屈指の剛腕へと成長していった。

「1番は練習の量が増えたっていうのが、自分の自信にもなりましたし、球速やその成績にも繋がってるのかなと思ってます。(山内)壮馬さんと出会って、教えてもらった練習メニューとかをずっと頑張ってきたので、今このようなプロ野球選手になれたと思っています」

 最速156キロの真っ直ぐに加え、フォーク、カットボール、スラーブなどを操る。スリークォーター気味の腕の振りから投じられる真っ直ぐの回転数は2780回転/分を叩き出す。NPBの投手の平均は2300回転/分から2400回転/分ほどと言われており、その凄さが分かる。「侍ジャパン」大学代表で計測した際にも1人、ズバ抜けた数値を叩き出しており、岩井にとって球速とともに回転数も大きな武器だ。

「そこは自分の武器として、自信を持ってどんどん真っ直ぐを投げていきたいなと思っています。(回転数は)意識していなかったんですが、僕の考えは、リリースの瞬間まで力を抜いて、リリースの瞬間に100%の力を込めて投げているんです。ボールを握り潰す、っていう感覚で投げているんで、それが回転数に繋がっているのかなって思っています」

 ドラフト前にラプソードを用いて各種データも計測してきた球団も、類稀なる“ボールの質”に着目した。福山龍太郎アマスカウトチーフは「ポテンシャルだけだったら今年でも本当にトップクラスの回転数であったり、曲がり幅だったり、各種成分は素晴らしいものを持っている」と絶賛。この日の指名挨拶でも回転数は話題にあがった。ストレートだけでなく、フォークやスラーブも秀でた数値を叩き出すという。

 理想として追い求めるのは、昨季までホークスに在籍していた千賀滉大投手(メッツ)だ。同じ愛知県出身のメジャーリーガーに対し「高校の時からずっと憧れていました。でも、憧れてしまったら超えられないと思うので。成長できたら、憧れるのはやめて、超えられるように頑張りたいです」。大谷翔平投手がWBC決勝前に発した“名言”を用いて“千賀超え”も誓う。

「160キロは投げたいと思っています。球の強さであったり変化球が良いと言ってもらえたんで、もっと磨いて通用できるように頑張りたいと思っています」。先発の適性も、リリーフの適性もあるという岩井。稀有なポテンシャルを秘める右腕は楽しみな存在となりそうだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)