届けられなかった最後の言葉…“慶三さん”に会いに行った理由 指導者として過ごす今

楽天・川島慶三2軍打撃コーチ【写真:竹村岳】
楽天・川島慶三2軍打撃コーチ【写真:竹村岳】

「ホークスファン」「松田宣浩」「後輩たち」 鷹フルでは単独インタを3本掲載

 鷹フルでは、現役時代にソフトバンクで活躍した、楽天の川島慶三2軍打撃コーチに単独でインタビューを実施しました。全3回の中で、取材後記として竹村岳記者が「なぜ川島コーチを取材したかったのか」、そして実際の取材中の雰囲気をお届けします。“慶三さん”の口から聞きたかった言葉の数々、そして指導者として過ごす今に迫りました。

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 仙台駅から地下鉄「南北線」で9駅。15分ほど電車に揺られて、泉中央駅に到着する。タクシーにまた15分ほど乗って、楽天2軍の本拠地「ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉」に着いたのは、午前7時すぎだった。泉中央駅は朝から通勤通学の人が行き来し、球場付近は閑静だったが隣には大きな商業施設がある。少し歩けば飲食店も立ち並んでいる。そんなところに、今の川島コーチの“職場”がある。

 10月7日。スケジュールの都合で、インタビューは、9時から始まる練習前に行われた。都合が合うのがこの日しかなかった中で、朝イチから取材を入れてもらったことには広報にも川島コーチにも、感謝しかない。取材スペースに通してもらう道中で「久しぶりだね」。顔を上げると、そこに川島コーチがいた。目を合わせて、ニッコリ笑ってくれた。

 ホークス時代、川島コーチの人懐っこさに触れたことがある。春季キャンプの朝、スタンドでボーッとしながら、コーヒーを飲んでいると、グラウンドにいた川島コーチから大きな声で「美味しい!?」と聞かれた。慌てて何度もうなずくと、こちらを見てニコッと笑いかけてくれた。当時はコロナ禍。選手と記者も距離を空けないといけなかった中で、一部ではあるが、川島コーチの優しさの知れた瞬間だった。

楽天2軍の「ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉」【写真:竹村岳】
楽天2軍の「ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉」【写真:竹村岳】
楽天2軍の「ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉」【写真:竹村岳】
楽天2軍の「ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉」【写真:竹村岳】
楽天2軍の「ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉」【写真:竹村岳】
楽天2軍の「ウェルファムフーズ森林どりスタジアム泉」【写真:竹村岳】

 筆者のホークス取材歴は2020年からで“ソフトバンクの川島慶三”を記者として見たのは2年間。コロナ禍もあって取材が制限されていたため、覚えてもらえているか不安だったが、その心配は必要なかった。あわてて挨拶を返して、改めて名刺を渡してから、すぐに取材は始まった。

 個人的な思いでしかないのだが、どうしても川島コーチを取材したい理由があった。2014年7月からトレードでホークスに加入して7年半。優勝に何度も貢献して、頼もしい背中を後輩に見せ続けた。そして何より、明るいキャラクターとリーダーシップで、ファンに愛され続けた。2021年オフに構想外を告げられると、現役続行を希望して退団。楽天で1シーズンを送り、昨オフにユニホームを脱いだ。

 その時の情勢や球団ごとの事情、川島コーチ自身が現役続行に強い意欲を示したことなど、さまざまな要素があったと思う。その中で、ホークス退団時に会見が行われることはなかった。昨年の引退も楽天からの「発表」。あんなにも愛された人が、お世話になった人、後輩、ファンのために、最後の言葉を発する機会がなかったことを、とても寂しく思っていた。松田宣浩内野手の引退で「慶三さんの言葉を聞かないわけにはいかないだろう」と、仙台での1軍戦に合わせて、この度インタビューをお願いさせてもらった。

 特に印象に残ったのは松田選手について話す表情。自分のことのように誇らしそうで、言葉だけでは表現できないようなリスペクトまで伝わってきた。他のテーマでも取材がしたかったので話を切り替えたが、いつまでも話していたいように感じた。現役引退の理由や、ホークス時代の思い出、ファンへの感謝……。これまで積もりに積もっていた聞きたかったことを、1つずつぶつけた。取材の時間とは限られているもの。ボイスメモを見れば20分以上、話を聞かせてもらっていて、本当に時間を忘れるほどの内容ばかりだった。

楽天・川島慶三2軍打撃コーチ【写真:竹村岳】
楽天・川島慶三2軍打撃コーチ【写真:竹村岳】

 午前中の練習も、カメラを手に必死に撮影した。「カッコ良く撮ってよね」と、見られ方にこだわるのもオシャレな川島コーチらしい。バント練習では実演も交える。打撃練習では投手役を務めて「あー、ごめん。ボールやね!」「これは右中間行ったな!」と1球1球にリアクションする。指導者1年目のシーズンが終わりそうな10月。真剣な表情はもちろん、見慣れた笑顔も交えつつ指導する。指導者として楽天の若手たちと、一緒に成長している途中だろう。

 帰る前に挨拶をしようと、練習も最後まで見届けた。すると、ひと段落した川島コーチの方から「ナイターなんでしょ? 早く帰って寝ないと」と歩み寄ってきてくれた。いつもニコニコしていて、人懐っこくて、野球少年で、話しているこちらにまで元気がもらえる。慶三さんに久々に会えて、慶三さんの「今」を知れて、嬉しくてたまらないこの気持ち。心から、ファンの皆さまに共有させていただきたい。最後に、優しい笑顔でこう言われた。「ありがとう、またね」。

楽天・川島慶三2軍打撃コーチ【写真:竹村岳】
楽天・川島慶三2軍打撃コーチ【写真:竹村岳】

(竹村岳 / Gaku Takemura)