上林誠知が心中を独占激白 戦力外通告の経緯と電話で流した涙、ファンへのメッセージ

ソフトバンクから戦力外通告を受けた上林誠知【写真:荒川祐史】
ソフトバンクから戦力外通告を受けた上林誠知【写真:荒川祐史】

ホーム最終戦で感じたファンの愛「すごい愛されているなっていうのを感じました」

 ソフトバンクは22日、森唯斗投手、嘉弥真新也投手、上林誠知外野手、高橋純平投手、古川侑利投手、九鬼隆平捕手、佐藤直樹外野手に来季の支配下契約を結ばない旨を通告したと発表した。2013年ドラフト4位で仙台育英高から入団し、ファンからの人気、期待も大きかった上林は通告を受け、鷹フルの独占インタビューに応じて心境を激白。現役続行への思い、ファンへの感謝などを語った。

――ファンの方々へのメッセージ。
「本当に、色々あったんですけど……。最近の話で言えば、ホーム最終戦で(中村晃外野手が)敬遠されて、大して結果も残していない人間に対して最後にああやって、その日一番じゃないけど、すごい歓声をくれて、すごい愛されているなっていうのを感じました。最後にああいう歓声がもらえたっていうのが一番の思い出です」

「それはファンの方の思い出ですけど、去年はアキレス腱を切って、CS最後の試合(ロッテとの3戦目)で負けたんですけど、代走で出て、ああいう前進守備の中でギリギリ、セーフになったっていうところは『自分、よく頑張ったな』って。ここまで走れるようになったんだっていうのは感じたので、直近ではその2つですね。出来事としては」

――逆転満塁ホームランから始まったプロ野球人生。
「デビュー戦ではなかったんですけど、ホームでの初スタメンで、最初のヒットはレフト前でしたけど、初ホームランが満塁ホームラン。球団最年少記録っていうのも作ったりして。ド派手なデビューをして、そこから覚えてくれた人がたくさんいた。そこからずっとやってきて、最初の5年はどちらかというといい思いをして、後半の5年は怪我から始まって。本当に、苦しい5年間を過ごして……。いい時も悪い時も、ファンの方は常にどんな時も応援してくれて、それは本当に嬉しかったです」

「リハビリ中も、テレビで試合とかも見ていて、ユニホームやタオルを持って応援してくれていたのは見ていたので。なんていうのかな……。技術とか、結果を出す選手でも、なかなかここまで応援される選手っていうのはいないかもしれない。そういう意味では、自分では言いづらいんですけど、本当に愛されていたのかなっていうのは感じていました。本当に寂しいんですけど、そういうファンの方って、どこに行っても応援してくれると思うので、辞めるまでは全力で頑張りたい感じです」

――球団からはどんな説明が。
「来年は契約しないっていう、あまり長い話もなく、普通に伝えられて。今まで頑張ってきてくれた選手なので、今後はサポートしていきますっていう、そういう話でした」

――自分としては「まさか」という気持ちだった。
「最初、(球団に)呼ばれた時は『なんだろうな?』って思いましたね、正直。で、言われた時はビックリはしましたね」

――頭が真っ白になった。
「全然、そういうのはなくて、ただビックリっていう」

――少し時間が経ちましたが、現在の心境はどうですか。
「自分っていうよりは、周りの人の落ち込んでいる姿をよく目にしたり、話をしている中で落ち込んでいる姿を見ると、ちょっと寂しさを感じるというか……。そんな感じですね」

――いろんな人に連絡もした。
「いろんな人に電話をしている中でも、複雑な心境で電話をしていました。スッキリしている部分もあったり、寂しさを感じながら、そんな感情の中で電話もしていて……。今宮さんと電話をした後に……。健太さんだったからかもしれないし、いろんな人と話をする中でそういう感じに徐々になっていったのかはわからないんですけど、健太さんと話し終わった後に泣いちゃったというか……。自然と涙が出たなっていう感じでした」

――今宮選手との電話の内容は。
「最初に報告をして『あぁ、そうか……』と。確か自分が『体も心もちょっとボロボロですけど、あとちょっと頑張りたいと思っています』みたいに言ったら『最後までもがいたらいいんじゃないか』って話があったのは覚えています」

――涙は電話の後に。
「終わってからですね。電話中は全然なくて。終わったら急に……って感じでした。その泣いている最中に(他の人から)電話も来たんですけど『今ちょっと出られないや……』みたいな感じもありました」

――今後は現役続行を目指す。
「そうですね。まずは、10年間、本当にありがとうございました。今の自分を作り上げてくれたのはホークスなので、そこにまずは感謝しています。新天地に行ってからは『上林を取ったから強くなった』とか『取ってよかった』っていう声が、最後に聞けたらいいなっていう感じですかね。『来てくれてよかった』『入ってくれてよかった』というふうに、言われたい、思われたいというところです」

――岐阜にあるミズノのバット工場にも行く。
「話が終わって無職の状態なのに、勝手に来年の準備じゃないけど、勝手に自分で(来年が)あると思って動き出しているような話ですね」

――それだけNPBでやりたい思いがある。
「そうですね。実は10年間、今まで1回も行ったことがなくて。まさかこのタイミングで行くと思っていなかったんですけど、例えばイチローさんって入団してからほとんど(バットを)変えていないらしいんです。そういう話も知っていたので、バットを変えるとバットのせいにしているみたいで嫌だっていうのもあったので、今までずっと同じ形でやっていたんです。ただ、こういう形で、また10年という節目で初めて行って見て、普段(バットを)削ってくれている人に会ったり、工場の中を見せてもらったり、初めて経験することで、また気持ち新たにできそうだなっていうのはあります」

(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)