“変態打ち”に大絶叫…後輩も「おもろいっすよね」 柳田悠岐が変えたベンチの空気

3回に勝ち越し打を放つも「打った球種はわかりません」…試合後に語った真相とは

 あんな曲芸打ちはきっと、ギータにしかできないだろう。ソフトバンクは15日、ロッテとの「パーソル・クライマックスシリーズ・パ」ファーストステージ第2戦(ZOZOマリン)に3-1で勝利した。同点の3回に試合を動かしたのは、柳田悠岐外野手。打った本人すら、とらえた球種が「わからない」という一打。ベンチからも大絶叫が飛んでいたという。

 打線は初回、2死二塁から近藤健介外野手の適時打で先制。その裏に先発の有原航平投手が1失点して追いつかれ、3回を迎えた。無死から三森大貴内野手が二塁打で出塁して、川瀬晃内野手が犠打で送り、柳田が打席に立った。1ストライク1ボールからの3球目、内角のスライダーに手を出した。打球はフラフラっと舞い、左翼線に落ちる。そのままフェンス際まで転がるほど、強烈なスライス回転がかかっていた。

 打った瞬間、柳田は打球を探しているような表情で、フェアゾーンに飛んでいることを確認してから走り出した。試合中の広報コメントで、本人は「打った球種は何かわかりませんが、とにかくバットの先までうまく使うことができたということです」と明かす。塁上では見たことがないガッツポーズを“初披露”するなど、柳田らしさが詰まった打席だった。

 柳田はポーズの意味に「先に当たったので、ビリヤードみたいに」と笑いながら振り返る。ベンチを見ながら右手を動かしていたのは、ビリヤードを意味していたようだ。打った瞬間も「うわ! って感じでしたけど。いいところに飛んでくれてよかった」と、目撃したファンと同じように、本人も驚くような打球だった。結果が全ての短期決戦。勝ち越しがかかる状況だっただけに「気持ちで打ちました」と、まさに執念の一打だ。

 勝ち越しという結果はもちろん、柳田があんな打球を打ったということも含めて、ベンチは大盛り上がり。柳田と自主トレをともにする谷川原健太捕手は「みんな叫んでいました。(ポーズの意味は)ビリヤードじゃないですかね。佑京さんも『ビリヤード!』って叫んでいたので、多分そうだと思います」とベンチの空気を代弁する。柳田にしかできない曲芸打ちにも、「見習いたいです。おもろいっすよね(笑)」と目を丸くするしかなかった。

 14日の第1戦では、反撃ムードを高める2ラン。2試合連続の打点で、CS通算打点は「31」となった。何度もAクラス入りして、短期決戦を経験している何よりの証で、先輩の内川聖一氏にも並んだ。「偉大なる大先輩なので、並べたのはうれしいです」と恐縮しながら語る。第1戦は敗れ、後がない状況で迎えた試合だったが「それはあまり考えていなかったです。チャンスで回してくれたので、なんとかしたい気持ちだけでした」と、一戦必勝の姿勢だった。

 昨季、PayPayドームで行われた西武とのCSファーストステージでは2試合連発。レギュラーシーズン終盤から圧倒的な存在感を見せて、最後の最後までチームを牽引していた。今季レギュラーシーズンでは163安打を放ち最多安打を獲得。3位からのCSにも「これが今の実力だと思うので、挑戦者としてやるだけかなと思います」と意気込みを語っていた。勝利だけが求められる試合だからこそ、頼りになる。

 この日、昨季まで在籍していたメッツの千賀滉大投手が観戦に訪れていた。柳田は2位指名、千賀は育成4位指名ではあったが、2010年ドラフトの同期入団。「いましたね! あいつ」と驚くと「カッコよくなっていました。ひと回り、カッコよくなっていました」とニッコリ笑う。そしていつもと同じように「また明日頑張ります」と球場を去っていく背中は、やっぱり頼もしかった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)