【連載・周東佑京】ファンも注目した喜び方の“クセ” 歓喜の輪でバットを掲げた理由

サヨナラ勝利を喜ぶソフトバンクナイン【写真:荒川祐史】
サヨナラ勝利を喜ぶソフトバンクナイン【写真:荒川祐史】

9月29日の西武戦で左足を痛めて交代…1度は試した“グルグル巻き”のテーピング

 鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、周東佑京選手の「10月前編」です。今回のテーマは「なんで、その喜び方?」。9月30日の日本ハム戦(PayPayドーム)で、中村晃外野手がサヨナラ本塁打。周東選手は歓喜の輪の少し外から、バットを掲げて勝利を喜んでいました。川瀬晃内野手が“白刃取り”している真相は? 痛めてしまった左ハムストリングについても、具体的に言及してくれました。

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 9月29日の西武戦(PayPayドーム)で左ハムストリングを痛め、30日の午前に病院で受診。「左ハムストリングの軽度の肉離れ」と診断され、日本ハム戦ではベンチスタートとなった。首脳陣には「無理しても行きます」と出場を志願したが、クライマックスシリーズを争う途中。先の戦いを見据えても離脱されるわけにはいかず、悔しさを胸に、ベンチからナインを応援した。

 日本ハム戦は、9回まで1点ビハインドの展開。相手も守護神の田中正を送り出し、ホークスの最後の攻撃が始まった。先頭の柳田悠岐外野手が同点のソロアーチを放つと、1死後だった。中村晃が3ボール1ストライクからの5球目、右翼席に打球を突き刺して試合が決まった。本塁周辺でできた歓喜の輪。終盤戦となって、ホークスの一体感が改めて伝わってくるシーンだった。

 ファンから注目を集めたのが、周東の喜び方だ。歓喜の輪の後方から中村晃のバットを両手で高々と掲げ、芯の部分は川瀬が持っている。“クセの強い”2人の喜び方は、なぜこのような形になったのか。周東本人が明かす。

「(サヨナラ本塁打は)自分が出られなかったので、嬉しかったです。本当に『頼む』って思っていたので。バットが落ちていて、みんなが集まってくるじゃないですか。邪魔だし危ないかなって思って」

 一緒に喜んでいた川瀬は「グローブを置いていて、ちょっと遅れたので、輪に入るところがなかったんですよ。それで、佑京さんがバットを持っていたので」と苦笑いで振り返る。この日はスタメン出場するも、8回に代打を送られて交代した。中村晃が打った瞬間も「みんな(ベンチから)出ていくのめっちゃ早かったんですよ」と代弁する。さまざまな要素が絡んで、偶然あんな喜び方になったようだ。

 チームは10月9日のオリックス戦(京セラドーム)で、レギュラーシーズン全日程終了。71勝69敗3分けで、自力で2位を決めることはできなかった。それでも、終盤戦においてサヨナラ弾で勝ったあの試合に「勝ったのも大きいですし、勝ち方も勢いが出るような勝ち方だったので。あの試合がデカかったなって思います。あの試合で負けていたら、相当今の状況も苦しかった」と、改めて振り返る。全員が一丸になり続けた終盤戦だった。

ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】

 足を痛めた西武戦、はじめはテーピングでグルグル巻きにしてみたという。しかし「グルグルがあんまり好きじゃなくて、余計、変な感じもして。1回やってみたんですけど、他のところに(負担が)くるのも嫌だなって思って」とプレーに影響も感じた。あくまでも「(今は)必要最低限ですね」と、うまく付き合い方を探しながらグラウンドに立とうとしている。

 左足の影響で出番がなかったのは2試合。“小休止”だったが「嶺井さんと拓也さんと話しながら。『こういう時はキャッチャーはどうなんですか』とか話を聞いたりして。自分が打席に立った時に生かせるように」と、時間を無駄にするつもりなど一切なかった。心境も「『みんな頑張ってくれ』って。出られないのは仕方なかったので」と、とにかくチームの勝利だけを祈っていたという。

 復帰したのは10月2日の楽天戦。初回の第1打席で右前打を放ち、先制のホームを踏んだ。中堅の守備からベンチに戻ってくる時も、キビキビと走るのではなく、1歩ずつ慎重に感触を確かめていた。「極力、ゆっくり帰ろうと思って。ちょっとでも負担がかからないように」と細心の注意を払う。2日の復帰以降は4試合で17打数3安打も、3試合連続で得点を記録するなど、今できる全力でチームに貢献しようとしている。

 9月は22試合に出場して打率.360、11盗塁。クライマックスシリーズ進出に向けて、周東の存在が大きな原動力になった。「何が良くて、何が良くないのか。もう1回考えながら、練習日があるので。そこから考えていきたいと思います」と前だけを見た。114試合に出場して打率.241、2本塁打、17打点、36盗塁だった2023年。確かな成長を遂げたレギュラーシーズンだった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)