「指の骨折なら出られる」 リスクは承知…周東佑京が見せた人生初の“一塁ヘッスラ”

ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京【写真:竹村岳】

9回に松井裕樹からセーフティバントで出塁…三盗にもトライした

 頭から突っ込む姿に、チームの思いが溢れ出ていた。ソフトバンクは7日の楽天戦(楽天モバイルパーク)で延長12回5-5の引き分け。クライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。試合が膠着していた中で、見せ場を作ったのが周東佑京内野手の足だ。9回にセーフティバントを仕掛け、一塁にヘッドスライディング。「人生で初めて」というプレーは、どんな思いが突き動かしたのか。

 先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手は2回2死二、三塁から村林に2点中前打を許す。3回に3点を奪って逆転し4回、5回と着実に追加点を挙げた。しかし6回だった。四球と安打で2死一、二塁とされ、辰己に初球を右翼席に運ばれた。同点3ランで、試合は一気に振り出しに戻ってしまった。

 9回、楽天は松井をマウンドに送る。試合前の時点で39セーブ、防御率1.63を誇る守護神だ。先頭打者で打席に入った周東。その初球だった。バットをスッと寝かせて投前に転がす。松井が処理して一塁に送球。周東は頭からベースにスライディングし、セーフを勝ち取った。9月29日の西武戦(PayPayドーム)で左ハムストリングを痛めたばかり。どんな思いが突き動かしたのか。

「今シーズン、(松井を)打てていないですし。エスコン(フィールド北海道)もそうですけど、この球場だったらあれが一番、最善かなと思って。(ヘッドスライディングは)気持ちじゃなくて、駆け抜ける方が怖かったので、足が。あっちの方がいいかなと思って」

 松井との対戦は今季2打数無安打。土のグラウンドであることも頭に入れて、セーフティバントを選択したと明かす。続く川瀬晃内野手の犠打で二進し、柳田悠岐外野手を迎える。またしても初球、周東は三盗を狙ってスタートを切った。「行けると思ったので行きました」。結果的に柳田が手を出して三邪飛に倒れたが、一時期は「基本的に三盗はしない」とも話していた策。足で決勝点を奪おうとする姿勢はスタンドにまで伝わっていた。

 怪我のリスクを伴うヘッドスライディング。2021年に右肩を痛めた経験のある周東なら、なおさらだ。それでも「指の骨折するくらいなら、試合には出られる」と真顔で言う。二塁以降のベースに頭から突っ込む姿は見覚えがあったが、一塁には「人生で初めてやりました」。アマチュア時代にも経験がなかったか、と確認しても「初めてです、人生で。レアですね」と、温め続けた“禁じ手”をここで使った。

「怖かったですけど、三森にも教わりながらあのイメージをしていました」。セーフティバントをする上で、事前に三森大貴内野手から助言をもらって準備をしていたと言う。その内容にも「滑るんじゃなくて、ベースに手をついてそこから滑るくらいのイメージでいい』と言われたので、そうしようと思って」としっかり実践し、怪我することなく球場を後にしていた。

 4月29日の日本ハム戦(エスコンフィールド北海道)では、二塁ではあるが頭から滑り込んで右股関節を打撲した。過去に故障につながった経験があっても「(この日のヘッドスライディングは)最初からやるって決めていたので、そういう怖さはなかった」と、あくまで別物であることを強調する。左ハムストリングの怖さも付きまとうだろうが「あと1試合なので、そこはあんまり考えないで。行けるところは行こうかなと思います」と、目の前のプレーにだけ集中していた。

 仙台入りする前、自身の足の状態について「まだ100(%)で走っていない。痛さもそんなには感じていないです」と言及していた。この日の3回には二盗を決めて、楽天の小深田と並ぶ36個目の盗塁。タイトルの意識も「無理してチームがCSに出られないとかになると、そこ(タイトル)は考えなくていい。勝つためにどうしたらいいのか」と強調していた。もし、今の自分が離脱したら。もし自分のために走って失敗したら。そんなリスクを、周東は負わない。常にチームの勝利だけを考えているから、今の姿から闘志が溢れ出る。

 延長10回2死一、二塁で一ゴロに倒れた後、野村勇内野手がグラブを持ってきてくれるまで、膝を曲げてかがんだまま。拳を右足にぶつけて、悔しさを表現していた。「勝ちたかったですよ。勝てば今日で決まりだったので。勝ちたい気持ちはありました」。たとえ自分が傷だらけでも、先頭を走る。泥まみれのユニホームからは、受け継がれてきたチームリーダーの意志を感じる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)