バッテリーを“セット”で交代の真相 嶺井博希が制御できなかった石川柊太の「テンポ」

ソフトバンク・嶺井博希【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・嶺井博希【写真:荒川祐史】

4回からバッテリーごと交代…藤本監督は「石川と嶺井をセットにしていた」

 バッテリーが「セット」で交代――。その言葉の真意にまで迫った。ソフトバンクは1日、日本ハム戦(PayPayドーム)に3-4で敗れた。先発の石川柊太投手が3回4失点と立ち上がりから崩れ、8敗目を喫した。注目を集めたのは、4回の守備でベンチが見せた采配。石川から武田翔太投手にスイッチすると同時に、嶺井博希捕手から甲斐拓也捕手に交代となった。

 石川は初回こそ無失点に抑えたものの、2回無死からアルカンタラにソロアーチを浴びてあっさりと先制される。2回に打線が逆転したが、直後の3回も無死から連続で四球を与えると、高卒5年目の田宮に3ランを被弾。激しいクライマックスシリーズ争いの中で先発を託されたが、あまりにも寂しい内容だった。

 4回からバッテリーごと入れ替えた理由について藤本博史監督は「石川と嶺井をセットにしていたから、今日はね」と説明。9月20日の楽天戦(楽天モバイル)では5回1死二塁とされたところで大関友久投手から津森宥紀投手に交代。津森が連打を浴びたところで捕手を嶺井から甲斐に交代させ、結果的に後手に回るという試合もあった。指揮官が語った「セット」の意味に、もう少し踏み込んだ。

 石川の今季23試合登板のうち、嶺井が先発マスクを被ったのは3試合目で、9月16日の日本ハム戦(エスコンフィールド)以来。たとえ石川が5回、6回まで投げていたとしても、森浩之ヘッドコーチは「それはもう代えるつもりやった。対石川というところで、ちょっとリズムを変えてという感じで監督も言っていたから」と言う。嶺井を先発で起用したのも、石川にとって何かきっかけとなって、リズムが良くなることを期待したようだ。

「誰がいい、誰が悪いじゃなくて投手のリズムを監督が考えたところがある。柊太の調子がもう一つで……。初回は真っ直ぐが148キロくらい出ていたので、今日は気持ちが乗っているかなって思ったけど。何か1つリズムが狂ってしまうと、2回、3回みたいになってしまう。結局、自分でコントロールできないのか、難しいところがあるのか。初回を見ると、特に3回は残念というか。今日も2安打だけやったら、もったいなかったな」

“手綱”を取った嶺井本人も「テンポを急ぎすぎたところもあった。ちょっと一定になってしまったので、柊太のテンポに強弱をつけてあげられたらよかった」と反省しながら振り返る。直球に強さがあった初回のボールについては「いつも通りじゃないですかね」と、嶺井も一定の手応えを感じていた。制御しきることができず「また勉強します」と、嶺井もまた自分自身に矢印を向けていた。

 藤本監督は石川の内容について「2本しか打たれていないけど、2本がホームランやからね。その前に四球を出して、2安打で4点はね。ちょっと先発投手としてはね」と厳しい表情だった。選手も首脳陣もきっかけを探し続けているが、なかなか掴めずにいる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)