松田宣浩は「ミスタープロ野球」 柳田、今宮、中村晃のコメント全文…“HR競争”を誓った年賀状

ソフトバンク・今宮健太、柳田悠岐、中村晃(左から)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・今宮健太、柳田悠岐、中村晃(左から)【写真:荒川祐史】

中村晃「電話をいただきました」、今宮健太「連絡があって『辞めるわ』と」

 ソフトバンクで17年を過ごし、後輩に背中を見せ続けてきた“熱男”がユニホームを脱ぐ。巨人は28日、松田宣浩内野手が今季限りで現役を引退することを発表した。この一報を、後輩たちはどう受け取ったのか。中村晃外野手、今宮健太内野手、柳田悠岐外野手が29日の西武戦(PayPayドーム)の試合前に取材に応じ、思いを語った。今宮がゴールデングラブ賞を取れたのは「松田さんのおかげ」と語る理由は? 柳田が語る、昨オフに退団した松田から「よぉ連絡きよった」という中身とは? 3人の全コメントを掲載する。

・中村晃外野手
――松田選手から学んだことは。
「やっぱり準備ですかね、一番は。毎日同じ準備をする人だったので。ああいう結果を出すには、しっかりとした準備が大切なんだって」

――そこは自分も真似をしている。
「そうですね、はい」

――引退の一報はどのように知ったのか。
「電話をいただきました。会見の前日、神戸にいた時に少し話をさせてもらいました」

――泣いていませんでしたか?
「松田さんですか? いや、泣いていないです。多分いろんな人に電話しすぎて、大変だったと思うので。2、3分だったんですけど」

――「すがすがしかった」という人もいましたが、声色はいかがでしたか?
「いつも通りでしたよ。いつもの松田さんでした」

――松田選手のためにも、この先を勝ち抜きたい。
「そうですね、しっかりやります」

・今宮健太内野手
――松田選手が引退を決めた。
「ここを辞める時も、3人(今宮と、柳田、中村晃)に教えてくれて。(引退も)発表前に松田さんから連絡があって『辞めるわ』と。すごく明るい声でした。『辞めるんですね』って言っても『辞めるわ!』って」

――会見はご覧になりましたか?
「まだです。あとでじっくり見たいと思います」

――「辞めるわ」という言葉に、今宮選手はどのように返したか。
「もう『お疲れ様でした』って。僕らが何を言っても、松田さんが決断したことなので。色々と教えてもらったり、良き伝統を引き継げるようにってやってきた。僕らの世代からすると松田さんが一番だったので。そういう先輩たちの意志を引き継いでここまでやってきたつもりですけど。現状、松田さんがいなくなってから、いい形でできていない。そこはまた改めて、また考えてやっていかないといけないところかなと思います」

――引き継いでいくべきものとは。
「正直、声の出し方とかそういうものに関しては真似しようと思っても真似できない。でも、どんな時でもいつでも明るく、チームを鼓舞してやってきてくれて、僕らが若い時はその支えがあって頑張れたところがあったので。そこに関しては真似していきながら、若い選手をどんどんやりやすい状況を作っていくのが、上の選手かなと思うので」

「現状、若い選手も来ているので。そういうところをサポートしていきながらやっていけたらいいのかなって思います」

――三遊間をともに守ってきたが、印象に残っていることは。
「ゴールデングラブを取るというのは、ずっと意識して。三遊間で何年連続で取れるかというのはずっと意識してやっていました。連続して取れたことは僕の1つの思い出ですし、細かいことをいえば松田さんのトレーニング法とかも、ずっと真似してきているので。それがあったから昨年も怪我なく、今年も大きな怪我なくできている。そのおかげかなって思います」

――どんなトレーニングを。
「トレーニング自体はそんな細かいことじゃないですけど、練習前に準備をしてやるっていうことです」

――松田選手は、ゴールデングラブ賞を取れたのは「健太のおかげ」だと、以前話をしていた。
「僕もゴールデングラブを取れたのは松田さんのおかげなので。サードゴロに近いところまで取りに行かないといけなかった(笑)。そこは評価をしていただいたところなのかなと思うので、松田さんに感謝しています(笑)」

――松田選手の守備範囲までカバーしていた……?
「当時はまだ若かったので行けましたけど、今は逆に松田さんがサードを守ると、ゴールデングラブはほど遠くなりますね(笑)」

――今でも「松田さんがいたら」と思うことがある。
「思ったりしますよ、やっぱり」

――何が一番。
「難しいですよ。何がって言われたら。言葉で表現するのはすごく難しくて、真似をしようと思っても真似できないすごさがある。そこはもう皆さんもわかっていると思いますけど」

――今宮選手は特に「松田さん」と言葉にもしてきた。
「さっきも言いましたけど、やっぱり松田さん、本多(雄一2軍内野守備走塁コーチ)さん、長谷川(勇也1軍打撃コーチ)さんの世代が、当時は小久保(裕紀2軍監督)さんもいましたけど。そこの世代が僕たちを成長させてくれたのは間違いないので。僕らがうまく引き継いでいけば、ホークスの良き伝統は継続されていくところだと思いますし。そこが大事かなって思います」

――引退を聞いて、喪失感のようなものは。
「それは去年の方が大きかったですけどね。今年は、違う球団でプレーして、辞めるということでしたから。僕らも『松田さん、どうなるのかな』って思っていたところでもありますし。でも本当にやり切ったと思うので『お疲れ様です』しかないですよね。偉大すぎて、何も言えないです」

――熱男の継承者には。
「なれません!」

――松田選手も、ああいう性格ではなかったけれど、チームのために少しずつなっていったと。
「それをできたのがすごいですよ。偉大ですよね」

――今宮選手はその過程を見ていない。
「見ていないです。もう熱男になり切ったところしか見ていないです。完成した熱男しか」

・柳田悠岐外野手
――松田選手が引退。何かやり取りはされましたか?
「『引退するわ』と。『お疲れ様でした』と」

――学んだことは。
「学んだことたくさんあるんですけど。やっぱり、まずはバッティングとか見て。ホームランを打つための角度とか、そういうところも、直接聞くこともありましたけど、見て学んだというか。どうやったらホームランを打てるのかっていうのは、一番松田さんのバッティングを見ていましたし。あとは松田さんの数字とかも意識して、勝手に松田さんの背中を追っていました」

――自身にとって、松田選手はどんなプロ野球選手ですか。
「えー。(少し考えて)ミスタープロ野球。ミスタープロ野球、ミスターアンダーアーマー(笑)」

――松田さんに学び、これから継承していきたいところは。
「それはなかなか難しいと思うので。松田さんのように長く、一流選手として頑張りたいなっていうふうに思います」

――今も松田選手が使っていたロッカーを使っている。
「使っていますよ!」

――置き土産とかあったんですか?
「ないですないです。汚かったので(笑)。しっかり掃除しました」

――松田選手がいなくなった2023年シーズンだが、感じている偉大さは。
「もちろん、いつも僕らに会った時に明るく接してくれていた。そういう方がいないのはやっぱり寂しいです」

――松田選手の方が柳田選手の数字を意識しているイメージだったが、柳田選手も強く意識していた。
「いやいや、僕も常に松田さんのホームランの数とか意識していましたし。毎年毎年松田さんに『今年は勝ちたいです』って言っていたので。初めて勝てた時とか、すごくうれしかったのを覚えています」

――ホームランの数を競走していた。
「年賀状とかに毎年書いていたので。それもいい思い出ですね」

――それもあって、関係も近づいた。
「もちろんそれもありますけど、一番は松田さんのプレースタイル、残す数字とか全てがカッコいいなって。そういう選手に勝ちたいと思っていました」

――今年からいなくなったことで「松田さん」と言葉にすることも増えた印象がある。
「よぉ連絡きよったんで。忘れようとしたら、そのたびに連絡きて。思い出してました。ずっと尊敬する先輩です。いなくなっても、いた時もずっと同じです」

――どんな連絡が。
「大した内容じゃないですよ」

――柳田選手の打撃の状態を見て、とか。
「いやいや、そんなのじゃないです。暇つぶしじゃないですか(笑)。ありがたかったですけどね」

――試合におけるデータ収集で、松田さんから学んで生かしているものは。
「データとかはあまり取らないですけど、相手投手の映像を見て、自分のバッティングの映像も見る。試合が終わって。自分の打ち方と感覚を擦り合わせて。イメージと、映像を。それをまた自分の中でイメージして、試してって感じで」

――松田選手から引退の連絡があって、かけられた言葉は。
「自分のことを報告してくださったので、特に僕から言うことはなかったですけど」

――会見を見ていましたか。
「ちょっと見ていたんですけど、子どもと遊んでいたので。あんまりじっくりは見られていないです」

(竹村岳 / Gaku Takemura)