小久保2軍監督も絶賛「分析能力高い」 ドラ6吉田賢吾の新人離れした“落ち着き”のルーツ

ソフトバンク・吉田賢吾【写真:竹村岳】
ソフトバンク・吉田賢吾【写真:竹村岳】

1月に右肘故障で出遅れも…2軍で打率3割超え 桐蔭横浜大から6位で入団した新人

 ソフトバンクの吉田賢吾捕手が好調を維持している。24日、ウエスタン・リーグ阪神戦(タマスタ筑後)に「5番・一塁」で出場。2安打2打点で、乱打戦を制する立役者となった。ウエスタン・リーグで打率3割を超える中、この日は打者としての「プライド」が結果をもたらしたという。さらに大学時代、人生を変えたという同級生「平野」との出会いに迫った。

 優勝へのマジック「4」で迎えた一戦。1点を追う4回に逆転し、なお1死満塁で打席に立った。相手投手は茨木秀俊。初球は外角球を見逃してストライク。2球目はチェンジアップに空振りし、すぐに追い込まれた。迎えた6球目、今度はしっかりとチェンジアップを右中間に運び、一気にリードを広げた。「追い込まれても、キツい感じは全然なかった」と冷静に振り返る。

 神奈川県横浜市出身。横浜商科大高、桐蔭横浜大を経て昨年のドラフト会議で6位指名を受けた。1月の新人合同自主トレで右肘に故障が見つかり、大きく出遅れることになったが、ウエスタン・リーグでは28試合に出場。打率.319、2本塁打、12打点の成績を残し、終盤戦の9月ではクリーンアップを託されている。小久保裕紀2軍監督も「簡単に三振しない」と持ち味を語る。

 自分自身でも「2ストライクからの打撃は得意」を胸を張るほど。小久保裕紀2軍監督も「吉田はバッティングがいい。本当に分析能力が高い。(ノートに)書いてくる内容が他の選手とダントツで違う」と、そのポテンシャルに目を見張る。新人離れした打席での落ち着きぶりや、技術にも裏打ちされた“読み”は、どのようにして培われたのか。ルーツは高校時代にあるという。

「高校時代はメンタル的なところを鍛えられた。体力面とか、厳しく言われて。それが苦痛だったというか、自分も“子ども”で『なんでこんなこと……』とか思っていたんです。大学に入ると他の高校から来た仲間に比べると、大人な考えができるようになった。それも高校のキツい練習、指導のおかげでした」

ソフトバンク・吉田賢吾【写真:竹村岳】
ソフトバンク・吉田賢吾【写真:竹村岳】

 進路に選んだ桐蔭横浜大では人生を変える出会いを果たす。「平野っていう内野手の同級生がいて、そいつとの出会いが本当に大きかった」。現在、日本製鉄東海REX野球部に所属している平野翔内野手のこと。吉田と平野は文字通り、学生生活もありながら、野球に全てを捧げてきた。

「1年生に入った時から朝の4時半から起きてグラウンドに行って、毎朝一緒に練習していました。全体練習の後も練習して、それを4年間続けました。遠征の日も、早い時は2時50分とかに起きたりして。試合の出発前もバッティングしたり。上級生になると、その姿を見て後輩が『ああいうのが大事なんだ』って気づいてもらえたらいいね、って話を2人でしながら。2人で練習していたことが、いろんな引き出しにつながりました」

 2人っきりでの練習。互いにボールを投げ合って打撃練習をしたり、ノックを打ち合ったりした。同じ志を持つ仲間との練習は、自然と自分の“野球偏差値”を引き上げてくれた。「大学の時も『このピッチャーはこう打とう』とかミーティングでも話をしていた。練習をしていく中で得た引き出しを使っていました」。大学では通算15本塁打。プロ入りをつかめた背景に、平野選手との日々がある。今も頻繁に連絡を取り合っている。

 自分なりに野球に捧げてきた努力が、打席での落ち着き、読みにつながっている。この日の1死満塁から放った2点二塁打も、打者としてのプライドが詰まっていた。

「1球目、キャッチャーの足が動くのが聞こえて、インコースに来るのがわかった。満塁で体には当てられない状況だったのでインコースの甘めに張っていたんですけど、外に来て、ちょっと遠く感じたので(手を出すのを)やめて。2球目はチェンジアップで、ハーフスイングになってしまった。でも右打者にもチェンジアップを投げるピッチャーだったので、そんなに驚くこともありませんでした。自分は2ストライクからの打撃が得意なので」

「逆に言えば、いっぱいいっぱいの球を見られて余裕ができました。追い込まれたのでポイントを近めにして。インコースもあるとは思いましたが、満塁で2ストライクでしたし、低めで三振が欲しいかなと思って。投げミスが来たら1球で捉えようとは思っていたんですけど、自分のプライドもあって、あそこでチェンジアップを振らされたので、その球種を打ちたいなと。しっかり反応できました」

 捕手登録ながら、今季は一塁の守備にも就くなど確実に自分の幅を広げている。ホークスでいえば渡邉陸捕手、野村大樹内野手らがいる世代。「学生の時とは違って“仕事”ですけど。コミュニケーションも取って、野球で慣れ合いにならないようにしています」と、新しい仲間の存在を表現していた。心を許せる友がいるから、勝負の世界でも戦える。

(竹村岳 / Gaku Takemura)