終盤戦で増えつつある“悪癖”…バッテリーの苦悩 斉藤和巳コーチが受け止める「責任」

ソフトバンク・斉藤和巳1軍投手コーチ【写真:竹村岳】
ソフトバンク・斉藤和巳1軍投手コーチ【写真:竹村岳】

小深田への5球目がサイン決まらず…甲斐拓也はタイムを取って又吉克樹のもとへ

 ソフトバンクは19日の楽天戦(楽天モバイル)に2-3で敗戦した。7回に敵失で勝ち越し点を奪うものの、その裏に又吉克樹投手が2点を失って2敗目を喫した。7回だけで3四球を与え、直近3試合では23四球。昨季からの課題がここにきて顔を出しつつある。投手陣の現状を、どう受け止めているのか、斉藤和巳投手コーチに迫った。そして、最後の最後まで諦めなかった、甲斐拓也捕手の姿勢とは。

 先発はカーター・スチュワート・ジュニア投手。2回に先制を許したが、打線は4回に柳町達外野手の適時打で同点とした。相手先発の則本との投げ合いは6回を終えて1-1のまま。堂々の内容で、試合は7回に突入した。四球と安打で2死一、三塁とすると、甲斐の打球を三塁の小深田が一塁に悪送球。待望の勝ち越し点が入り、ベンチは継投策に踏み切った。

 送り込んだのは、10試合連続無失点中の又吉。制球力が持ち味の32歳だが、先頭の辰己に四球を与える。鈴木大の犠打で二進され、打席には代打の安田。一ゴロにこそ抑えたが、カウントは3ボール1ストライクだった。2死三塁となり小深田にも四球を与え、村林に左越えの2点二塁打を浴びた。

 16日からの日本ハム戦(エスコンフィールド)では3試合で22四球。2戦目、3戦目にはそれぞれ9四球を与えた。昨季、リーグワーストだったチーム与四球「474」。春季キャンプから改善を図り、開幕以降も確実に数字に表れていた。月別で見れば3、4月の55四球(22試合)が最少で、7勝15敗だった7月(22試合)の74四球が最多。9月は16試合を終えて71四球だ。チーム成績に比例するように増える四球を、首脳陣はどう受け止めているのか。

 斉藤和コーチは言う。又吉を「(前回登板に続く)2回連続の四球は反省せなあかんけど、ずっと抑えることは無理だから。打たれることもあるけど、当たり前のことをどれだけ当たり前にできるか、やね」とかばう。その上で「(四球が失点に)絡んでるね、最近ね。こういう終盤になって緊張感のある試合が続くから、慎重になってしまう。その中でどうするのかが大事だから」と、増えつつある四球を受け止めている。

 開幕以降、斉藤和コーチは常々「ゾーンで勝負する勇気」を選手に伝えてきた。終盤戦に来て、選手の疲れもピークに近いだろう。この時期になっても斉藤和コーチは「そういうところは伝えてる」と言うが「なかなか難しいところもあるけど、やらなあかんところもある。それをやらせ切れていないというのは、俺らの責任やから。選手だけの責任じゃないからね」と打開策を探している。

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:竹村岳】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:竹村岳】

 当然、バッテリーは最善を尽くしている。村林に決勝打を許す直前、小深田と対戦したシーン。カウントが3ボール1ストライクとなり、何度かサインを交わすが、なかなか5球目が決まらない。甲斐拓也捕手はタイムを取って、又吉のもとまで歩を進めた。どんなやり取りがあったのか、又吉が反省を込めながら明かす。

「僕が投げようと思っていた球種と、甲斐の球種が違っていたので。そこで中途半端で勝負に行って『ああだった』『こうだった』と(後になって)言うよりは、甲斐がそれを感じ取ったんだと思う。そこで話して、その後にしっかり行って、その次の球まで行かないと。話した意味がないので。そこは自分の、甲斐の要求に応えられなかった」

 結果的に投じた5球目は外角への141キロ直球。6球目は大きく外れたが、選択したのはまたも直球だった。又吉は「僕は『こういうふうに見えているけど、どう思う?』って話をして。甲斐は『こうこうこう見えているので、この意図でいきましょう』と。フルカウントになったところで、もう1度整理できればよかった」と続ける。意思のすり合わせ、確認を最後まで怠ることなく、3つ目のアウトを目指していた。

 8回に登板したのは大津亮介投手。マウンドに歩きながら、ここでも甲斐は言葉を交わしていた。「3つ、全力で取るようにっていう。あとは初球の入りとか、今回の配球だとか。この球で勝負するとか、そういうところです」と大津が明かす。ホークスにとっては、最後の攻撃の直前にあたる8回の裏。もう1度、流れを手繰り寄せるために大津の背中を押したようだ。「気持ちは全力です」と3者凡退で応えた大津。バッテリーとしても勝つチャンスを、最後の最後までもぎ取ろうとしていた。

 試合後、又吉は「ストライクで勝負できていない。あれは出していい四球ではない。完全に自分の責任」と頭を下げる。甲斐も、バッテリーとして踏ん張る時期か、と問われて「はい、もちろん」と前を向いた。ここまで積み上げてきたものを見失うことなく、この苦境でこそ、バッテリーには一丸となってほしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)