【連載・和田毅】2024年も現役で「やれるかな」 来季へ思い描く構想と抱く“引き際の美学”

ソフトバンク・和田毅【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・和田毅【写真:荒川祐史】

8月は防御率1.90の好成績「体のしんどさ、バテ感が今年はない」

 鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、新しく和田毅投手に登場していただきました。9月の前編、テーマは「来季への想い」です。2月には42歳を迎えた和田投手。この時期になると毎年のように、現役続行かその他の選択肢か、ファンは気になるところ。常々「ダメだったら終わり」と覚悟を表現してきましたが、2024年シーズンに向けて、今抱えている率直な思いを聞かせてくれました。そして、いつかは来る引退の瞬間。和田投手が考える“引き際の美学”とは――。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ここまで18試合に登板して6勝6敗、防御率3.43。17日の日本ハム戦(エスコンフィールド)こそ、5回5失点で黒星を喫したが、有原航平投手の8勝に次ぐ白星を挙げて先発ローテーションを支えている。「昨年よりはイニング数も現時点で投げていますし(2022年は81回)、今年もちょっと投げられない時期がありましたけど。昨年よりはしっかりと投げられている」と充実感を抱きながら、毎登板、準備を重ねている。

 8月31日のオリックス戦(PayPayドーム)では7回無失点。今季最多タイとなる103球と42歳とは思えない内容を見せつけ、チームのサヨナラ勝利を呼び込んだ。「長く投げるというか、球数を投げられる感覚がちょっと出てきた。“蘇ってきた”というか、『70、80球でしんどいな』っていう自分の中で体のしんどさ、バテ感っていうのが、今年はない」とキッパリと言う。結果以上に内容に手応えを感じているのだから、どこまでも衰え知らずだ。

 8月は4試合に登板して1勝1敗も防御率1.90。いずれも中6日だったが「全く大丈夫でした。体力的にもしんどくないし、問題もなかったので」と振り返る。この終盤戦にまで来て、新しい感覚が自分の中で芽生えていると言う。6月2日の広島戦(マツダ)で左手に打球を受けるアクシデントもあったが、「手に当たったのが消えてきたぐらいから、自分の中で、ちょっと変わってきた部分もあります」と分岐点を語る。

 2月に42歳を迎え、パ・リーグ最年長選手として2023年を戦っている。常々「ダメだったら終わり」と、引退の瞬間を明確に意識して、メディアの前でも発言してきた。シーズンの終盤戦とは、同時に、来季の始まりを意味するタイミングでもある。和田ほどの実績があれば、誰もが気になる胸中だ。現役続行か、否か――。偽らざる本音を明かした。

「今のピッチングをしていると、意欲は出てきてはいますね。来年の方がもっと長いイニング投げられるんじゃないかとか、この感覚をもし維持できれば、5回とか、70球、80球で降りるっていうことは、来年はもっと減らせられるんじゃないかなと思うし。それができてくれば、規定投球回も、ちょっと自分の中で欲が出てくる」

 当然、プロ野球選手である以上、自分の一存だけでは決められない。そこには球団との契約が存在し、自分もサインをする必要がある。ただ和田の感覚だけで言うのなら、2024年も「怪我なくいければまだやれる」とハッキリと言った。「僕の場合は、来年の意欲があるかないかだけなんで。今のピッチングを続けられるのであれば、やってみたいし。また来年は来年で、どんな景色が見られるのかなって」と真っすぐに来季を見据えている。

 今季の春季キャンプで和田は、新球のスラーブを習得しようと工夫を重ねた。シーズン中にはチェンジアップのサインを出された中で、打者の気配を察して意図的にフォークの握りで投げたこともある。「また来年は変化球も増やしたり、あんまりスラーブ系を使っていないんで、しっかり完成させたいなとか。フォークも精度を上げたいし、カットの割合とかも」などとスラスラ話す。誰よりも和田に可能性を感じているのが、和田自身だ。

 プロ野球選手なら、いつかは来る引退の瞬間。世代の代表でもある松坂大輔さんは、西武のユニホームで引退試合(2021年10月19日)に登板し、最速は118キロ。最後の最後まで戦った証を、マウンドで見せてくれた。ボロボロになるまで戦う選手も、華々しいままユニホームを脱ぐ選手もいる。和田なりに考える“引き際の美学”を問われると「それはわからないですね」と言う。

「別にいけるかなと思っても、例えば僕よりすごい先発が6人、7人現れて、僕が1軍にいなくて、2軍にいるんだったら、それは引き際かなと思うでしょうし。怪我でやめるかもしれないし、逆に全く先発が1軍にいなくなっちゃって、何かやめたいんだけど投げてもいいのかな、みたいな空気になったらやるかもしれないし。多分タイミングなんでしょうね。それはもう、多分感じるので。やめるときだ、やめる年だ、みたいなのを感じるんで」

「でも毎年1月、2月、3月は感じるんですけどね、今年でやめるなって。意外とシーズンに入って1軍で投げられている、まだ1軍で必要とされてるんだなって思えて、自分の中でも結果が良かったりすれば、やっぱりまた来年もやれるかな、みたいになる。『やれるかな』の方が強いですね、『やりたい』というより」

 引き際が想像すらできないほどに、今の自分に手応えを感じているのは間違いない。和田も8月以降の投球を踏まえて「まさにこの1か月ぐらいは、すごくその『やれるかな』を感じられたので」と力強くうなずく。42歳となった今も、一番自信を得られるのは、実戦での結果だ。うまくいかなければ、必死に考えて練習する。結果を出してチームに貢献できれば、何よりも喜びを感じる。野球選手としての本能が、今もなお和田を突き動かしている。

「また来年に向けて、こんなこと試したいなとか、こういうトレーニングしたいなっていうのをちょっといろいろ今、想像を膨らましてる段階なんで。楽しみと言うか、来年どんなピッチングできるかなっていうか、そこが楽しみな部分もあるんで」。目をキラキラと輝かせて話す表情は、野球少年のよう。うまくなりたい。誰よりもそんな気持ちを持つ和田毅は、これからどんな景色をマウンド上で見せてくれるだろうか。

(竹村岳 / Gaku Takemura)