藤本監督は「技術がない」と言うが… 流れを手放したエンドラン失敗の三振ゲッツー

ソフトバンク・藤本博史監督【写真:小池義弘】
ソフトバンク・藤本博史監督【写真:小池義弘】

柳町はチーム内で三振の割合が高く、空振りするリスクの高い選手

 ソフトバンクは26日、敵地・楽天モバイルパークでの楽天戦に1-2で敗れ、115日ぶりに貯金がなくなった。先発の板東湧梧投手が2回に味方の失策からピンチを招き、先制点を献上。今宮健太内野手のソロで同点に追いついたものの、6回に勝ち越し点を献上した。打線は1点のみに終わり、4位の楽天との差は3ゲームに縮まった。

 2回、先頭の浅村のゴロを三塁でスタメン出場したリチャードが一塁へ悪送球。先頭打者の出塁を許し、板東は島内に右前打、阿部に左前適時打を許して1点を先行された。その後は5回まで1失点と好投していたものの、6回1死から浅村へ四球を与えると、島内の左前打、岡島の右前適時打で2点目を失い、これが決勝点になった。

 痛かったのが2回にミスから与えた先制点。この直前の攻撃では、流れを手放す場面があった。先頭の近藤健介外野手が四球で出塁し、無死一塁で柳町達外野手が打席へ。フルカウントからの6球目、ベンチからのサインは「ヒットエンドラン」だった。しかし外角低めのボール球に柳町のバットは空を切り、スタートを切っていた近藤は二塁で刺され、最悪の三振ゲッツーになった。

 試合後、藤本博史監督は「三振ゲッツーのところはチームバッティング。こちらは作戦をとっているので。当たらないのは技術がないということ。練習するしかない」と空振りを憂いた。ただ、セイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照すると、柳町の三振率を示す「K%」は26.3%と、100打席以上立った打者の中では甲斐拓也捕手の次に高い。スイングした際にバットに当たるコンタクト率を表す「Contact%」でも甲斐、柳田悠岐外野手に次いで低い。

 バットコントロールの良いイメージのある柳町だが、空振り率も10%を超えており、実はコンタクト能力はそれほど高くない。柳町自身は「僕が空振りしたのが悪いので……」と振り返ったが、チームの中でも空振りするリスクの高い選手、そして一塁走者が近藤という場面で出す作戦だったのかは疑問が残る。

 また、指揮官はここまでヒットエンドランを多用してきている。バントを仕掛ける回数は減っているものの、それに替わるように頻繁にエンドランを仕掛けている。この2試合で3度もヒットエンドランを仕掛け、全て失敗。ヒットエンドランを多用することは、他球団も当然把握しており、相手の奇をてらう作戦であるはずのヒットエンドランは、もはや奇をてらえるものではなくなっている。

 7回には、1死から中前打で出塁した中村晃外野手に代えて周東佑京内野手を代走で送った。ベンチから盗塁を命じるのかと思いきや、サインは“グリーンライト”で、スタートを切るかどうかは周東に一任されていた。打席の今宮は「ゲッツーだけは打たないように。なんとか佑京を二塁には進めようと思った」と、2球目にセーフティ気味にバントを試みるなど工夫を凝らしたが、結果的には中飛に終わって同点に追いつくことはできなかった。

 結果的に5安打1得点に終わり「1点差で勝てないね。ピッチャーも、野手もみんな頑張っている」と指揮官の声にも元気がない。貯金はついになくなり、4位の楽天が迫ってきている。噛み合わない歯車。クライマックスシリーズ進出圏を死守するためには、これまでの戦い方を悔い改めるときに来ているかもしれない。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)