“サプライズ声出し”の真相 サファテ氏独占激白、熱いゲキに込めた思いとホークス愛

ノーヒットノーランを達成したソフトバンク・石川柊太(右)を祝うデニス・サファテ氏【写真:荒川祐史】
ノーヒットノーランを達成したソフトバンク・石川柊太(右)を祝うデニス・サファテ氏【写真:荒川祐史】

サプライズで試合前の声出し役を務めたサファテ氏を鷹フルが単独取材

 ソフトバンクは18日、本拠地PayPayドームで行われた西武戦に8-0で快勝した。先発の石川柊太投手が史上88人目となるノーヒットノーランを達成。主砲の柳田悠岐外野手が6回に通算1500安打の節目の一打となる16号ソロを放つなど、3安打猛打賞と活躍し、記録づくめの一戦となった。

 大勝は「キング・オブ・クローザー」が呼び込んだのかもしれない。この日、本拠地には2014年から2021年まで8年間在籍し、通算234セーブをマークしたデニス・サファテ氏が来場。19日に行われる「ダブルアニバーサリーデー」にゲスト出演するために、この日来日したばかりのサファテ氏がサプライズを行った。

 試合前に行われる野手陣の円陣。栗原陵矢外野手の呼び込みで姿を見せたのがサファテ氏だった。驚くチームメートたちに向けて「ホークスはあんなもんじゃないはず。1位だよ、ホークスは1位じゃなきゃダメだよ」とゲキを飛ばし、それに応えるように打線は2回に一気に5点を奪った。

 なぜ、サファテ氏が突如として声出しを行うことになったのか? その舞台裏と真相を独占取材。サファテ氏がゲキに込めた思いを明かした。

 サファテ氏の“サプライズ声出し”の仕掛け人は、現役時代に常に隣でサポートしてきた山田雄大チーフ通訳だった。声出しは1人の野手が務め、勝てば継続、負ければ交代というルールで回している。17日のオリックス戦にチームは敗れ、声出し役は交代するタイミング。せっかく来日するなら、流れを変える意味でもサファテ氏にやってもらったらいいのではないか? 声出しの指名役でもある栗原に相談し、内諾を得たという。

 試合開始直前にドームに到着する予定だったサファテ氏に、山田チーフ通訳は連絡を入れて到着の時間を早めてもらった。チーム内でもサファテ氏が声出しをするのを知っていたのは栗原と山田通訳、そして公式映像を撮影するオフィシャルレポーターの加藤和子さんの3人だけ。選手に見えない用具置き場にサファテ氏は身を隠しており、姿を見せると選手たちからも驚きの声が上がった。サプライズは成功だった。

 サファテ氏がかつての仲間たちにぶつけた熱い思い。その胸の内を「ホークスは1位にいなきゃいけないチーム、それだけの組織ですし、それだけのチーム力もある。選手も3位で終わっていい、4位で終わっていいとか思って欲しくない。福岡という街を代表するチームですし、常勝軍団と言われていると思うんで、それだけのところで自分たちがやってるんだっていう、鼓舞する意味も込めて、今の位置ではダメなんだよ、っていうのを分かって欲しかった」と明かした。

 ホークスは現状、パ・リーグで3位に位置している。なかなか歯車が噛み合わず、苦しい戦いが続いていることをサファテ氏も分かっている。だからこそ「野球ってそんなに簡単なもんじゃないですし、なかなか噛み合わずに上手くいかないことっていうのも多々あると思う。みんなはすごくいいチームなんだっていうのをもう一度勇気づけるというか、認識してもらいたかった。これがいいキッカケになって、いい方向にチームが進んでくれればいいなというふうに思います」と“声出し”の依頼を喜んで受け入れたのだ。

 3年ぶりの来日当日が、石川のノーヒットノーランと柳田の1500安打達成とメモリアルな1日になった。だからこそ喜びもひとしお。石川の達成会見にも乱入し「こんな日に柊太があんなピッチングして、凄くいい試合だった。柊太は最初に1軍に上がってきたころから見ていたんで、その彼が素晴らしいピッチングをした瞬間に立ち会えたことは本当に嬉しい」と、久々の日本での1日を満喫した。

 チーム内からは“デニスパワー”との声が上がった。声出し役は勝てば、継続がルール。サファテ氏は「もちろん! 明日もやらないといけないね!」と“再登板”を予告。セレモニアルピッチを行う19日に向けて「明日は森(唯斗)が僕の靴を見てびっくりすると思うよ」と笑みを浮かべていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)