打率.226でなく打率.140を選択 ベンチの思惑…代打アストゥディーヨの“正当性”は?

ソフトバンク・藤本博史監督【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・藤本博史監督【写真:藤浦一都】

調子が下降している中村晃に代打を送った理由は「左を全く打てていないので」

 ため息がPayPayドームに充満した。8日に行われた楽天戦。3-9で敗れたソフトバンクにとって、痛かったのは8回の攻撃だった。1点を勝ち越されて迎えた2死一、二塁のチャンス。ここで送り出された代打のウイリアンス・アストゥディーヨ内野手が遊飛に倒れ、反撃ムードが萎んでしまった。

 この回、先頭の三森大貴内野手が執念の内野安打で出塁。今宮健太内野手の犠打で1死二塁を作った。柳田悠岐外野手は見逃し三振に倒れたが、近藤健介外野手は3ボールとなったところで申告敬遠で歩かされた。打順が中村晃外野手に回ったところで、ホークスベンチが選んだ勝負手はアストゥディーヨだった。

 藤本博史監督は「増田(珠)かアストゥディーヨを準備させていた」と試合後に明かした。後半戦が始まった7月22日のロッテ戦から前日まで中村晃は57打数8安打、打率.140。直近5試合で4試合が無安打。現在の状態と、相手が左投手であったことを考慮し、勝負をかけた。では、アストゥディーヨと増田の選択肢で、なぜ打率.226の増田ではなく打率.140のアストゥディーヨを選んだのだろうか。

 森浩之ヘッドコーチは、ベンチの思惑を明かした。

「晃も悔しいと思うけど、そこは監督の戦略のところなんで仕方がない。あの場面は一発長打が欲しい場面だったのでアストゥディーヨ。繋いでほしいところだったら増田だった。どちらかといえば長打といえばアストゥディーヨ。9回のところも1点差だったら松井(裕樹)が出てくるということも考えながら、どちらがいいかを天秤にかけながら準備させていた」

 状況は1点ビハインドの2死一、二塁。単打であれば、同点止まりだが、長打ないし一発が出れば、一気に試合をひっくり返すことができる。ベンチが描いたのは“一打逆転”。仮にチャンスを逸しても、1点差であれば、楽天の守護神・松井に対して、粘りや出塁の期待もできる増田をぶつけたい。そんな思惑もあった。アストゥディーヨと増田はともに二塁打と本塁打が1本ずつ、長打率では増田の方が上ではあるが、藤本監督はアストゥディーヨを選んだ。

 左腕の鈴木翔がマウンドにいたとはいえ、ここ一番の勝負強さが光る中村晃に代え、今季この日まで得点圏打率.000のアストゥディーヨの代打起用は、結果的に奏功せず。ベンチの期待を背負って打席に立った助っ人は、2ボール1ストライクからの4球目を打ち上げて力ない遊飛に倒れた。

 今季チーム全体での代打成績は114打数22安打の打率.193、1本塁打10打点。打率、打点ともに西武、日本ハムに次ぐ低さだ。首位を走るオリックスは72打数18安打の打率.250、0本塁打18打点となっており、ホークスの方が打数では40打数以上多いにも関わらず、打点は8も少ない。繰り出す代打が、有効な策になっていないと言える。

 投手の左右による選手起用が際立つ藤本采配。この日、三森と柳町達外野手の起用について、指揮官は「左右病って書くか分からんけど、左を打っていないんだから」と言及していたが、この代打策も元をたどれば、投手の左右によるもの。オリックスとは今季最大の9.5ゲーム差に広がり、4位の楽天は2.5ゲーム差に迫ってきた。結果に繋がっていない以上、責任を負う指揮官も方針を変えてみてもいいのではなかろうか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)