なぜ中村晃に代打アストゥディーヨ? 藤本監督が語った同点好機で代打策の意図

代打で出場したソフトバンクのウイリアンス・アストゥディーヨ【写真:竹村岳】
代打で出場したソフトバンクのウイリアンス・アストゥディーヨ【写真:竹村岳】

1点を追う8回2死一、二塁のチャンスでベンチは代打アストゥディーヨ

 ソフトバンクは8日、本拠地PayPayドームで行われた楽天戦に3-9で大敗した。3点ビハインドの6回に近藤健介外野手の16号3ランで一度は同点に追いついたものの、直後の7回に田浦文丸投手がピンチを招き、又吉克樹投手が併殺崩れの間に勝ち越し点を奪われた。その後のチャンスも生かせず、再び自力優勝の可能性が消滅した。
 
 球場がザワついたのは、1点ビハインドで迎えた8回の攻撃だった。先頭の三森大貴内野手がショートへの内野安打で出塁。禁止されていた一塁へのヘッドスライディングでもぎ取った執念の安打だった。今宮健太内野手の犠打で三森は二塁へ。柳田悠岐外野手が見逃し三振に倒れ、近藤健介外野手が打席に立つと、ネクストバッターズサークルには次打者の中村晃外野手ではなく、ウイリアンス・アストゥディーヨ内野手が準備していた。

 近藤への投球が3ボールとなり、楽天ベンチは敬遠を申告。2死一、二塁となると、ここでホークスベンチは勝負強い中村晃ではなく、アストゥディーヨをそのまま代打に送った。同点のチャンスで大事な打席を託された助っ人だったが、2ボール1ストライクからの4球目を打った打球は力無く舞い上がり遊飛に。スタンドからはため息が漏れた。

 なぜ同点のチャンスで勝負強い中村晃に代えて、打率.140、得点圏打率.000のアストゥディーヨを代打に起用したのか。試合後、藤本博史監督はこう語った。

「勇気いりますよね。ただ晃も調子が。ここ20日間で1割台だから。1週間に限れば.150だから。左を全く打てていないので、チャンスだし、2アウトだったのでゲッツーはないので、増田かアストゥディーヨっていうところで準備できていたので」

 指揮官が明かした理由は下降している中村晃の状態だった。オールスターブレークが明けた7月22日のロッテ戦から前日まで中村晃は57打数8安打、打率.140に沈んでいた。8月5日の日本ハム戦でこそ3安打を放ったものの、翌6日の日本ハム戦は5打数無安打。この日も四球こそ選んだものの、2打数無安打だった。

 現状の中村晃の状態を考慮した上で、ベンチはアストゥディーヨか増田を代打の候補として準備させた。2人の選択肢の中で最終的に送り出すことを決めたのがアストゥディーヨだった。結果的に、助っ人は遊飛に倒れて同点のチャンスは消滅。直後の9回に大量5点を失って、試合の行方は決まった。

 勇気を持って繰り出したはずの代打策だったが、実らなかった藤本監督は「切り替えて、別に連敗したわけじゃないんで、明日、明後日勝ちましょう」と試合後の会見を終えた。首位のオリックスが勝ち、その差は9.5ゲーム差に拡大。自力Vの可能性は再消滅した。策を繰り出せども当たらない。苦しい戦いは続く。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)