西武高橋の前に重かった“3点差” 勝負を分けた申告敬遠に込めたベンチの意図

ソフトバンク・藤本博史監督【写真:小林靖】
ソフトバンク・藤本博史監督【写真:小林靖】

4回2死二塁、長谷川に対して2ボールになったところでベンチは勝負を避ける決断を下した

 ソフトバンクは1日、敵地ベルーナドームでの西武戦に0-5で敗れた。先発の有原航平投手が2回に先制を許すと、7回途中5失点。打線は高橋ら西武投手陣の前に散発の5安打で無得点に終わった。2回から4イニング連続で先頭打者が四球で出塁したものの、得点には結び付かず。試合後、藤本博史監督は「有原が投げているから1点先に取りたいっていう、残り50試合ちょっとしかないから先に先に、と思ったけど、上手いこといかないね」と肩を落とした。

 初回2死から近藤健介外野手、柳田悠岐外野手の連打が出たが、5番に据えた中村晃外野手が右飛と凡退。2回には先頭の柳町達外野手が四球で出塁したが、続く今宮健太内野手のバントが最悪の投ゴロ併殺に終わった。すると2回に有原が1死二塁から長谷川に右前適時打を浴びた。“エース対決”で与えたくなかった先制点を奪われてしまった。

 3回、4回も先頭打者への四球で走者を出したものの、3回は3者連続三振、4回は内野ゴロ併殺と後続が倒れて、貰った走者を生かせなかった。再三の走者を打線が生かせないと、有原が堪え切れなかった。4回、先頭のマキノンを二塁への内野安打で出塁させ、栗山には左前安打。今宮の好判断で二塁を狙った栗山を刺して2死としたが、続く長谷川に2つのボールが続くと、ベンチは長谷川との勝負を避ける決断をした。

 3球目はベンチの指示で外角に外させると、4球目の前で敬遠を申告。打率1割台の古賀との勝負を選んだものの、これが裏目に出た。2ボール1ストライクからの4球目。142キロのカットボールを捉えられると、打球は左翼フェンスに直撃する二塁打に。2人の走者が生還。ここまで2試合連続完封、今季3度対戦して防御率1.42と抑え込まれていた高橋を前に、重すぎる3点を失った。

 大黒柱としてカード頭を託す有原を信じ、勝負を託しても良かった場面。前の打席で右前適時打を浴びていた長谷川を申告敬遠で歩かせる決断をした意図について、森浩之ヘッドコーチは「次の古賀とどっちが勝負しやすいかを選択して、古賀を選んだだけのこと。(2ボールになって)投げにくそうにしているから、次のバッターで勝負して抑えようという中で打たれただけのこと」と語った。

 長谷川はこの日までに今季41試合に出場して打率.227。2020年の育成ドラフト2位で入団し、昨季途中に支配下登録された21歳。有原の方が実績も経験も上だが、前の打席で右前適時打を浴びていたこと、2ボールとボールが先行して投手不利のカウントになったことで、より抑える確率の高そうな古賀との勝負をベンチが選び、結果的にこれが勝負の分かれ目になった。

 申告敬遠の瞬間、複雑そうな表情を浮かべていた有原。ただ、試合後は「ああいう作戦なので、その後抑えられなかったことが悔しいんで。あそこでしっかり抑えなきゃいけなかったという思いだけです。あそこをしっかり抑え切っていれば、こういう結果になっていないと思いますし、流れも違ったと思う」と、続く古賀に適時打を浴びたことを悔やみ、自身で責任を背負い込んでいた。

「3点差になったら何もできないでしょ。それまでにやっているんですからね。有原が投げているんだから先に1点取れば、有利に運べるわけだから、最初にバントもした」。4回に失った2点が重くのしかかり、最後まで反撃できなかったソフトバンク打線。チグハグに終わった攻撃が、今の流れの悪さを表しているようだった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)