「こんな選手まで…」 2軍の支配下が戦力外の「標的」になる理由…小久保2軍監督が考える戦力整備

ソフトバンク・小久保裕紀2軍監督【写真:竹村岳】
ソフトバンク・小久保裕紀2軍監督【写真:竹村岳】

支配下になったのは木村光のみ…突き抜けられなかった育成選手たち

 支配下選手の登録期限の8月1日を迎え、育成選手はシーズン中に支配下昇格を勝ち取ることはできなくなってしまった。球団は、7月28日に新戦力としてオリオールズ傘下3Aのダーウィンゾン・ヘルナンデス投手を獲得すると発表。メジャーで91試合登板を誇る最速159キロ左腕の入団で、支配下登録選手は70人に到達。3位からの逆転優勝を目指すためのラストピースが埋まった形となった。この補強は、小久保裕紀2軍監督の目にはどう映っているのか。

 シーズンが始まった時点では、支配下は67人。6月13日にアルフレド・デスパイネ外野手をキューバ国内リーグから獲得。7月17日には、育成3位で入団した新人右腕の木村光投手を支配下登録したが、結果的に育成から“2桁背番号”を掴んだのは木村光のみとなった。育成から支配下になる選手は、首脳陣やフロントに「1軍の戦力」として認められたということ。その他の選手は、突き抜けた結果や能力を見せることはできなかった。

 支配下を目指してきた競争について、小久保2軍監督は「(突き抜けていたら)とっくに支配下になっているもんね、去年の藤井(皓哉)みたいにね」と分析する。「だと思いますよ、実際」と、一芸に秀でるなど飛び抜けた選手がいなかったことを認めた。

 育成選手の中で、ウエスタン・リーグで登板経験のある投手は、木村光を含めて10選手。10試合以上登板したのは木村光と、11試合登板の渡邊佑樹投手。そしてチームトップの36試合登板の中村亮太投手の3人だった。野手での出場試合数の上位3選手は、64試合の勝連大稀内野手、38試合の西尾歩真内野手と緒方理貢内野手。俊足巧打の選手が多い印象で、2軍戦で本塁打を放ったのは川村友斗外野手と藤野恵音内野手の2人だけだった。

 育成選手の登録期限を終え、オフには戦力整備の期間がやってくる。指揮官は「ここ(2軍)にいる選手が、一番その対象になると思うんで」と自分なりの考えを話していた。戦力整備は、フロント側に決定権があるだけに「それは僕が決める問題ではない」と前置きした上で、「普通、支配下から切るんじゃない? 組織として考えたら、普通はそうでしょう」と考えを続ける。

「(7月を終えても)やっぱり最後の印象も大事な話なんで、『8月9月の暑い時期に来年期待を持てるね』って終わるかで、全然印象が違うので。そういう戦力外に入ってくる層からすると、2軍が一番(対象になりやすい)と思いますよ。だから、余計に気を引き締めて、やらないとあかんよね。3軍、4軍よりか2軍が(戦力外の)標的になると思います」

 今季から4軍が新設され、昨季の育成ドラフトでも12球団最多となる14選手を指名した。54人の育成選手を抱えてシーズンはスタートし、秋には4軍を設立してから2度目のドラフトを迎える。多くの選手が入団するということは、肩を叩かれてユニホームを脱がなければいけない選手もいるということ。2桁の番号を背負いながらも1軍の戦力になれていないのなら、その選手に順番が来るのは必然だ。小久保2軍監督は「いつも言っている」と、常に選手に伝え続けてきたことだと言い切る。

「危機感をどうやって持ってもらうか、与えられるかは永遠のテーマ。去年は仕方ないよね。4軍を作るとなって、増やすしかなかったから。今回は入ってくる分はなくなる。『え、こんな選手まで』っていうことが2か月後には起こるわけですから。そこに入らないように頑張りなさいということだと思います」

「支配下になったとしても、育成の1番であっても支配下の最下位。ということはその(戦力外の)対象になる。自分の地位を築くまでは“人様”のことは構っていられない。自分の城を築きなさいという話は、ずっとしています」

 チームとしても、3年ぶりのリーグ優勝を目指して突入した2023年。開幕時には存在した「残り3枠」のうち、2枠を外国人選手が埋めた。ファームにいる若鷹はこの現状に奮い立ち、1軍へと飛び立っていかなければならない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)