キャプテンの本音「病んでました」 柳田悠岐が語った千葉での決起集会と連敗中の胸の内

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】
ソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】

8回2死一、二塁から三塁線を破る2点二塁打 「勝つのは本当に難しい」

 トンネルを抜ける待望の瞬間が訪れた。ソフトバンクは25日、オリックス戦(京セラドーム)に5-0で勝利した。7月6日の日本ハム戦(PayPayドーム)以来の白星で、連敗は「12」でストップ。貴重な追加点を挙げたのは、柳田悠岐外野手だった。南海時代の1969年に喫した15連敗以来の12連敗。キャプテンは、どんな心境でチーム状況を見つめていたのか。

 24日のロッテ戦(ZOZOマリン)、1点リードの9回2死一塁からロベルト・オスナ投手が角中勝也外野手にサヨナラ2ランを被弾した。悪夢のサヨナラ負けから一夜明け、関東から大阪に移動して迎えた一戦だった。相手の先発は山本由伸投手と厳しい条件だけが並んでいた。

 3回1死三塁、牧原大成内野手の内野ゴロの間に1点を先制する。先発の有原航平投手が何度もピンチをしのぎ、試合は8回まで進んだ。2死一、二塁で、柳田が打席に立つ。「それまで抑えられていたので集中して、気持ちを入れて打席に入りました」。山本が投じた111球目、外角のフォークを三塁線に弾き返した。「絶対にランナーを返そうと気持ちを出して必死に打ちにいきました」と振り返る。何度も塁上で、両手を掲げて追加点を喜んだ。

 54年ぶりの12連敗。3年ぶりのリーグ優勝を目指すはずが、苦しすぎる夏場を戦っている。柳田自身は7月の月間打率.328と奮闘していたものの、なかなか結果はついてこない。チームの雰囲気も「勝てないので、苦しいですけど、やるのは選手なので。勝つためにみんなが必死にやっていたと思います」と代弁する。長かったトンネルをようやく抜けて、本音を漏らした。

「自分がもっと打っていれば勝てたゲームも間違いなくありますし、すごく病んでいました」

 23日のロッテ戦の後には、千葉市内の飲食店にほとんどの選手が集まった。中村晃外野手が提案して、開催された集会。柳田も「いろんな選手と話をして。普段できないような話もしましたし、それも(連敗ストップに)つながったかなと思います」。結果的に24日はサヨナラ2ランを浴びて敗れて「野球は何が起こるかわからない。本当に勝つことの難しさを感じました」。過去は戻ってこないが、プラスに変えるしかない、心に刻み込まれる期間となった。

 歴史的な連敗街道を歩んでしまった。キャリアを振り返っても、これだけ黒星が続いたのはもちろん初めてだ。成績だけを見れば柳田は十分にチームを引っ張っているが「もっと打てればチームのためになっていると思うので。そこはまた技術を磨いていかないといけない」と責任を背負いこむ。昨季“あと1勝”で逃したリーグ優勝。どれだけ1勝の重みを知っても、勝つことは「難しい」と言う。

「(この期間で)勝つのは本当に難しいということはもちろん感じましたし、チームの雰囲気というか。みんな苦しい。体力的にも苦しい時期ですし、夏場で。勝てない精神的な苦しさもあるので。今日勝てて、みんな嬉しいと思います」

 先発の有原航平投手が11奪三振を記録して完封勝利。相手先発が山本由伸投手の中で、これ以上ない勝ち方で黒星を止めた。「有原がすごく頑張っていたので、有原のためにもなんとかしたいと思いました」。苦しんだ気持ちの全てを二塁上のガッツポーズが表していた。残り57試合。最後に笑って振り返るためにも、ホークスは前だけを向かなければならない。

「勝つために、みんなでまた戦いたいと思います」。柳田は言った。心に刻んだ“1勝の重み”を胸に、歴史ごとひっくり返してみせる。ここからもう1度、優勝だけを目指す。

(竹村岳 / Gaku Takemura)