斉藤和巳コーチも絶賛した“魂の99球” やり返せるのは週1回…東浜巨が抱いていた責任と覚悟

オリックス戦に登板したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】
オリックス戦に登板したソフトバンク・東浜巨【写真:竹村岳】

集中したのは「全部のイニング」…気迫の99球を斉藤和巳コーチも絶賛

■オリックス 2ー1 日本ハム(16日・PayPayドーム)

 強い気持ちを持って臨んだマウンドだった。16日のオリックス戦(PayPayドーム)で1-2で敗れ、痛恨の8連敗を喫したソフトバンク。延長にもつれ込む接戦の中で、先発した東浜巨投手は8回1失点の力投。試合後は「こういう展開で、あの1点を守りたかったのが正直なところ。その中でも、ゲームが終わるまでは最後までしっかりと投げ抜くことだけを考えていました」と、反省しながらゲームを振り返っていた。

 初回に打線が1点を先制した。直後の2回1死、宗に同点のソロアーチを許してしまう。そこから3回から7回までは5イニング連続で3者凡退という圧巻の内容だった。8回2死からは野口に左中間に二塁打を許して得点圏に走者を背負ったものの、最後は若月を右飛に打ち取って雄叫びを上げた。自身の投球内容には「全体的にボールを操れていた。出せるものは出せた」という納得の表情だ。

 7月7日の楽天戦(楽天生命パーク)から始まった8連敗。東浜も同8日の同戦に先発して3回2/3を投げて6失点。チームも1-8で敗れて6敗目を喫した。「7」にまで伸びてしまった連敗を受け止めて、上がったマウンド。東浜はどんな胸中で、この日の登板を迎えたのか。

「連敗の流れを作ったのは僕なので。有原(航平投手)で初戦を負けて、その次に僕が負けてからの連敗だった。昨日がどういう結果になろうが、今日は絶対に勝ちたかったという思いでマウンドに上がっていました。この1週間、チームが負ける姿もベンチ裏で見ていたので、今日はなんとか……チームを勝たせたかったというところです」

 中7日で迎えた登板。毎日のように出場する野手とは違って、先発投手の出番は週に1度しかない。「言い方がいいのか悪いのかわからないですけど、やっぱりやり返せるのは週に1回しかないので。その準備をする責任が1週間にはあります」。チームがどんな状況だろうが、登板日以外にできることはない。東浜にとってもこの1週間はもどかしかったはず。だから自然とマウンドで熱い気持ちがほとばしった。

 白熱した宮城との投げ合い。同じ沖縄出身の後輩左腕との投手戦は1-1のまま膠着状態となった。7回2死、頓宮を三ゴロに仕留めると何度もグラブを叩いて気持ちを表現した。「自然と、っていうのもありますし。なかなか重い雰囲気で試合が進んでいたので、なんとか流れを変えたいなって思って。そういう意識がありました」。東浜なりにチームを救いたい思いの表れだったのだ。

 石川柊太投手とともに、投手陣の柱として期待されてきたシーズン。6月に33歳を迎えた右腕は言葉と姿勢、そして何よりも結果でチームを引っ張ろうとしている。チームが苦しんでいるのは確かだが、マウンドの姿から野手も勇気をもらうようなピッチングだったはずだ。5勝6敗で終えた前半戦。「うまくいっていないところも多いですけど、チームを勝たせたい思いは変わらない」と語る。

 その姿を斉藤和巳投手コーチも絶賛した。「よかったよ。久しぶりに見たね、いいリズムで投げているのを。あれを続けてほしい」。最大のピンチとなった8回2死二塁では、タイムを取ってマウンドへ。かけられた言葉に東浜は「『踏ん張るぞ』っていうだけ、それだけでした。あとはどういう意識で投げるとか、細かい確認で。間を空けたタイミングだったと思います」と明かす。この日の姿と結果はさらなる信頼につながったはずだ。

 集中した場面を問われても「全部のイニングじゃないですかね。今日は1つ1つ、本当に意識して上がっていました」とキッパリと言った。敗れはしたものの、マウンドの上で戦う姿はナインにもファンにも示した東浜。どれだけ苦しんでいようとも、ホークスは毎試合、ファイティングポーズを取り続けている。

ソフトバンク・東浜巨(左)と斉藤和巳コーチ【写真:竹村岳】
ソフトバンク・東浜巨(左)と斉藤和巳コーチ【写真:竹村岳】

(竹村岳 / Gaku Takemura)