目に見えてわかっていた“中継ぎ陣の疲労” 大関友久が背負った責任とチーム状況

西武戦に先発したソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】
西武戦に先発したソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】

体調不良の復帰から3度目の登板…5連敗で回ってきた登板に大関の心境は

 チームを背負おうとしているから見える景色だった。ソフトバンクは13日、本拠地PayPayドームで行われた西武戦に2-4で敗れ、今季ワーストの6連敗を喫した。先発の大関友久投手は6回1失点で勝敗はつかず。7安打を浴びながらも要所を占めるピッチングでリードを守って降板したが、本人は「悔しかった」とキッパリ。今のブルペン陣の状態を思うからこその理由だった。

 2回、2本の安打で無死一、二塁とされたが、後続3人を打ち取り、無失点にしのいだ。4回は、無死から連続で四球を与えたが、呉のバントで三塁封殺。長谷川を右飛、古賀を空振り三振に仕留めて得点を許さなかった。5回を終えて球数98球。続投した6回に1点を失うも、115球でリードを守ったままリリーフ陣にバトンを託した。先発としての役割は果たしたはずだった。

 結果的には、リリーフで投げた3投手が1点ずつ失って逆転負けを喫した。チームが5連敗で迎えたマウンド。「自分が止めるつもりでマウンドに上がっているので、結果的にチームが負けて、自分ももうちょっと長いイニングを投げられればよかったんですけど、いろんな意味で悔しいです」と振り返る。“いろんな意味”には自分のこと以外の要素も含まれていたから、なおさら悔しかった。

「自分のピッチングで勝ちたいっていう個人的なものも正直ありますし、結果的に試合に負けてしまっているので。自分がもう少し投げていれば……っていうのも(ある)。中継ぎの人たちの疲労っていうのも、明らかに目に見えてわかります。そこは今、先発陣がカバーしないといけない部分だと思うので、そこの悔しさがありますね」

 チームはこの日の試合で7月は11試合目。登板した甲斐野央投手と武田翔太投手は今月だけで早くも6試合目、津森宥紀投手は今季リーグ最多の37登板目だった。どの登板も勝つという目的は変わらないが、中継ぎ陣の疲労度までしっかりと頭に入れた登板だった。「自分の中では長いイニングを投げるのは武器でもありますし、“行って当たり前”だと思ってやっている。そこは大事にしたいですよね」。だから、余計に悔しかった。

 先発投手が長いイニングを投げるためには、首脳陣に「続投させること」が試合に勝つための最善手だと思わせるだけの内容を見せないといけない。ブルペンの状況や、点差など、さまざまな要素が絡むのが継投だ。この日の大関は6回までに115球を要して降板。当然、ブルペンを信じて託しているが、降板して以降はもう応援することしかできない。同点、逆転されていくチームを見るのは、もどかしさも残る。

 大関自身も、長いイニングを投げるための努力を重ね続けている。体調不良での離脱から復帰して、この日が3度目の登板。病み上がりだからこそ、マウンドで“新しい自分”も見つけようとしている。「カーブとかも良かったですし、どんどん投げていくたびに操れるようになってきている」。緩急を生かしながら、走者を出してもピンチは広げない。打たせて取る投球にも手応えを感じている。

 150キロを超える直球に、スライダーとフォークを軸にしたオーソドックスなスタイルが大関の持ち味。「あんまりそういうの(緩急を使った投球)はやってこなかったんですけど、意外とできるものだなって、やってみて思います」と自らも変化を認めており、“かわすピッチング”という新しい領域を掴もうとしている。もちろん、あくまで“引き出し”の1つであり、自分のスタイルは見失ってはいない。

「そこが中心になっちゃうのは良くないんですけど、サブというか。調子が悪い日はそういうふうに……っていう1つの形ができてきてるので、そこは安定感が増してくるのかなって思っています」

 初めて開幕投手を経験した今季。周囲の選手の状態や、チームの状況など、さまざまな要素を把握した上でマウンドに上がるほど大関は成長している。目標が明確だからこそ、自分を突き動かす思いはどんな時も変わらない。

「自分の中では、もうちょっと自分もいいピッチングをしたいし、チームとしても優勝したい。両輪を持っていて当たり前だと思います。どっちがっていう話じゃなくで、両方大事なこと。チームが優勝できれば、自分がめちゃくちゃでいいわけがない。でも自分がよければ、チームが2位でいいわけもない。最後、優勝して終われるようにっていうことだけを考えています」

 そう語る姿は、エースとしての道を真っ直ぐに歩もうとしているように見える。25歳の大関友久が背負うものが、目に見えて伝わってきた登板だった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)