7回甲斐野→8回津森に込めた信頼と期待 モイネロ不在…首脳陣が明かす継投の意図

西武戦に登板したソフトバンク・甲斐野央(左)と津森宥紀【写真:荒川祐史】
西武戦に登板したソフトバンク・甲斐野央(左)と津森宥紀【写真:荒川祐史】

藤本監督は「7回の甲斐野、8回の津森はシミュレーションで決まっている」

 信頼して送り込んだリリーフ陣が崩れた。ソフトバンクは13日、本拠地PayPayドームでの西武戦に2-4で敗戦した。先発の大関友久投手が6回1失点の力投を見せたが、バトンを受けた甲斐野央投手、津森宥紀投手、武田翔太投手がそれぞれ1失点ずつ。リバン・モイネロ投手を欠く中で、首脳陣が“勝利の方程式”に込めた思惑はどんなものだったのだろうか。

 1点リードの7回から継投に突入した。2番手としてバトンを受け取ったのは甲斐野。前日、北九州市民球場で行われた西武戦で1/3回を投げて2安打2四球で1失点だったが、首脳陣は期待を込めてマウンドに送った。だが、先頭の金子に三塁打を浴びた。外崎は空振り三振としたが、源田に中前に落ちる適時打を許して同点とされた。

 8回に登板した津森は、安打と死球、犠打で1死二、三塁とされ、長谷川のボテボテのゴロの間に三塁走者が生還。決勝点を奪われてしまった。防御率0.98と奮闘してきたモイネロが不在の中での投手リレーに、藤本博史監督は「モイネロがいない中で7回は甲斐野ですから。8回の津森と、これはシミュレーションで決まっている。6回の松本(裕)、大津と田浦はその周りを助ける形になっている」と説明し「(甲斐野に)7回を任せているので仕方ないです」と受け止めた。

 この日を含めて4登板のうち3試合で失点している甲斐野に7回を託した理由を、斎藤学投手コーチは「甲斐野に対する期待が一番。それに見合うだけのボールを投げているのも甲斐野なので」と説明する。前日の失点を取り返してほしい気持ちも「ありました」。ここまでブルペンを支えてくれている1人でもあり、信頼もある。「結果的には取られましたけど、次につながるような姿だったとは思っています」と責めなかった。

 そして、斎藤学投手コーチは「僕が一番大事だったのは8回だった」と自ら切り出す。同点に追いつかれた試合の流れと、西武のブルペン陣を踏まえ「向こうの8回、9回が苦しいのはわかっているわけで、しのげるかしのげないかでだいぶ変わったのかなとも思います。津森には『そういう気持ちで行ってくれ』という話は事前にした」と明かす。「でも、うまくいくとも限らないですから」。野球である以上、思うような結果にならないこともある。今回は期待に対して結果で応えることはできなかった。

 モイネロ不在の重圧も、ブルペン全体にあるという。「その重圧はかなり大きいと思うけど、これは乗り切ってもらうしかないし、力があるから、あそこ(マウンド)にいるわけで」。現状の戦力で、どう戦うかを考えた上で、接戦の展開でマウンドを任されている。だからこそ「信じて投げられていれば、もう少し強い気持ちが出てくるのかなと思う」と背中を押した。

 マウンドを降りた後にベンチで消沈していた甲斐野と津森。すぐに隣に座り、声をかけていたのが斉藤和巳投手コーチだった。果たして斉藤和コーチはそれぞれにどんな言葉をかけたのか。

 甲斐野は21試合目の登板で、2試合連続の失点は今季初。斉藤和コーチは感情的な様子はなく、自分の考えを真っ直ぐに伝えているような雰囲気だった。甲斐野は「アドバイスですね」と言葉少なに明かした。背中を押されるような言葉だったか、と問われて「そうです」とうなずいた。津森は「去年よりはマシやからって話でした。そう言われて、次また頑張ろうっていう話です」と明かしていた。

 昨季、6月に防御率9.64だった津森。7月に2.45と盛り返したが、8月は再び4.00と調子の波が課題だった。今季の交流戦前にも斉藤和コーチと「この時期に落とさずに乗り切れるようにしよう」「去年と一緒の失敗をしないように」と約束もした。2人の中で共有している課題と、この日の結果を踏まえ、前進しているんだと背中を押したようだ。

 今季ワーストとなる6連敗と苦しむ今、野手も先発も中継ぎも、全員が一丸になるしかない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)