きっかけは藤井皓哉との会話…高橋礼が結果を「気にするのをやめた」理由と過去の反省

ファームで登板したソフトバンク・高橋礼【写真:福谷佑介】
ファームで登板したソフトバンク・高橋礼【写真:福谷佑介】

7日のオリックス2軍戦で7回無失点…2軍では5勝1敗、防御率1.64の好成績

 もう一度、自分自身と向き合っている。きっかけは後輩投手とのある会話だ。ソフトバンクの高橋礼投手は今、ファームで日々を過ごしている。7日のウエスタン・リーグのオリックス戦(杉本商事バファローズスタジアム)で先発し、7回2安打無失点に抑えた。小久保裕紀2軍監督も評価する内容で、この日はファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で練習を行った。

 2回無死一塁で山中を遊ゴロ併殺。6回1死一、二塁でも安達を遊ゴロ併殺と、持ち味の打たせて取る投球も光った。「投げている時はそんなに感じなかったですけど、投げ終わって『これがいいんだ』と数字を見て感じることがあった」と手応えも握りしめる。「右打者からゲッツーも2つ取れましたし、狙った打ち取り方ができたかなと思います」と振り返った。

 今季は開幕ローテーションをつかみ、先発6番手としてシーズンを迎えた。しかし、4月6日のオリックス戦(京セラ)で2回1/3を投げて3失点で黒星。その後も中継ぎとして2試合に登板するも防御率11.81と結果を残せず。5月18日に登録抹消となってからはファームで時間を過ごしている。今、どんな心境なのか。藤井皓哉投手との会話で得たきっかけがあったという。

「藤井とちょっと話をして。どういうメンタルの持ち方をしているんだろうと、ちょっと話をさせてもらって。あいつは『あまり気にしていないです』って。『自分の球を投げたら抑えられるのもわかっているし』と。結果を気にすると腕振れないですよねって話をしていて、自分もそうやなって思ったので」

 高橋礼にとって、開幕した時点の立ち位置は6番手。中継ぎとして昇格した時も含めて、1回の登板で結果も印象も残さなければいけなかった。「やっぱりメンタル的に余裕がなかった。それが球に表れてしまうのが1軍」。投球にも表れた重圧と不安。1軍の打者たちは見逃してくれなかった。野球である以上、結果は出るものだが「自分の投球」に自信を持つ藤井を見て、感じることがあったようだ。

 藤井は「左内腹斜筋の肉離れ」で今でこそリハビリ組にいるが、今季はここまで9試合に登板して5勝3敗、防御率2.35。昨季も55試合に登板して防御率1.12の成績を残した。高橋礼も結果の重要性を理解しつつ「気にするのはやめました。いいピッチングをしないといけないと思うと、気にしすぎると腕が振れなくなる」。もともとアンダースローが最大の持ち味。結果を出す投球から“自分の投球”に焦点を当てるようになった。

「そういうメンタルでやり始めたのはここ2、3試合なので。前回くらいかな。そんなものなので。そういうメンタルでの取り組みも、練習中です」

 今季はフォームの見直しから始まり、とにかくゾーンで勝負することを貫いてきた。アバウトだとしても打ち取った打球をフェアゾーンに打たせ、野手に守ってもらう。自分だけのスタイルを信じ続けてきた。「今シーズンはずっと同じですね。取り組んでいることも変わらないし、課題も1つずつ潰せている。そんなに、ファームに落ちてもう一回作り直した感じではないです」と、ここまでの取り組みは疑っていない。だからこそ大事なのが自分の投球だ。

「力を入れて強いボールを投げることも大事ですけど、しっかりとストライクを取って、カウントを整えて、自分が抑えたい形を整えること。例えば2軍で3ボールとかにしていたら、1軍ではその次の球で勝負できるかと言ったら微妙だし。1ボール2ストライク、2ボール2ストライクのうちに勝負がしたいというのはあります」

 今いる場所がファームだとしても、常に想定しているのは1軍のマウンドだけ。「気にしすぎるとイメージが出てしまうし、イメージから外れた瞬間に腕が振れなくなる。答えが1つではない。抑えればOKなので」。自分で自分を苦しくするのは、もうやめた。すでに半数を消化したペナントレース。高橋礼が1軍の力になる時が、必ずもう1度くる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)